2009年10月8日木曜日

【頭痛の原因】帯状疱疹ウイルスの頭痛、早期の服薬で効果

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早期の服薬がカギ
帯状疱疹ウイルスの頭痛

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/saisin/20091008-OYT8T00805.htm

 東京都の音楽教師、浜田奈緒美さん(40)は、小学生のころから、何日も寝込んでしまうほど激しい片頭痛に悩まされてきた。昨年11月、東京女子医大頭痛外来非常勤講師の医師清水俊彦さん(50)に「小さいころかかった水ぼうそうのせいかもしれません」と言われ、半信半疑で血液検査を受けた。水ぼうそうを引き起こす帯状疱疹(ほうしん)ウイルスが体内で増えていることがわかり、抗ウイルス薬を5日間飲んだところ、症状が劇的に軽くなった。(岩永直子)


 頭痛には、脳腫瘍(しゅよう)や脳梗塞(こうそく)など、命にかかわる病気が原因で痛む「二次性頭痛」と、片頭痛、群発頭痛など病気は関係ない「慢性頭痛(一次性頭痛)」とがある。

 日本人の5人に1人が悩まされている「慢性頭痛」の一部は、帯状疱疹ウイルスが原因で起きる――浜田さんが受けたのは、こうした考えに基づく治療法だ。

 仕組みはこうだ。ほとんどの人は10歳までに水ぼうそうにかかり、原因となる帯状疱疹ウイルスは、大人になっても神経の根元に潜み続ける。健康な時にはおとなしくしているこのウイルスは、ストレスや過労、病気によって免疫力が落ちると息を吹き返し、神経や神経を取り巻く細胞で増殖し、炎症を引き起こす。

 こうして起きる病気の代表的なものは、皮膚に帯状の水ぶくれができ、激痛を伴う「帯状疱疹」だ。近年、これに加え、「三叉(さんさ)神経痛」や「後頭神経痛」など、皮膚症状は出ず、痛みや感覚のまひなどの神経症状だけが出る病気が起きることも明らかになってきた。

 清水さんは「片頭痛」の患者の6割が感じる症状(頭皮の違和感など)に着目。帯状疱疹ウイルスとの関係を調べたところ、ウイルスが増えている患者は、増えていない患者の4・3倍、症状を強く感じていた。そうした症状を伴う片頭痛はウイルスが原因の可能性が高いと示すこの研究は、国際頭痛学会でも注目を浴びた。

 清水さんの診察経験の中では、緊張型頭痛を除く慢性頭痛の半分、めまいや耳鳴り、突発性難聴の3割は、帯状疱疹ウイルスがかかわる可能性が高い。

 診断は、問診や精密検査で深刻な病気が隠れていないかチェックした後、血液検査でウイルスが体内で増えているかどうかを確認するという流れで行われる。

 頭痛の発作が起きてから1、2週間以内の早期治療が鍵を握るため、ウイルスが原因の可能性が高ければ、血液検査の結果が出る前から、見切り発車で抗ウイルス薬の「バラシクロビル塩酸塩(商品名・バルトレックス)」を処方。5~7日間飲んでウイルスをたたいたら、数か月中断することを繰り返し、徐々にウイルスの勢力を弱めていく。検査も薬も保険がきき、初診で約6000円。副作用もほとんどない。

 浜田さんも、4、5か月おきに抗ウイルス薬を5日間飲む治療を続けた結果、痛みの頻度や時間が減ったうえ、寝込むような重い頭痛もなくなった。

 現在、清水さんは、遺伝子レベルでウイルスと頭痛の因果関係を解析中。「痛みは何らかのメッセージ。我慢せず、ウイルスが頭痛の原因という可能性も考えて対処してほしい」と話している。
(2009年10月8日 読売新聞)

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