2007年7月26日木曜日

「プラセボ効果」のメカニズムが明らかに

「プラセボ効果」のメカニズムが明らかに

http://health.nikkei.co.jp/hsn/hl.cfm?i=20070726hk000hk

 「プラセボ(偽薬)効果」を引き起こす脳の領域が米ミシガン大学(ミシガン州アナーバー)のDavid J. Scott,氏らの研究によって明らかにされ、医学誌「Neuron」7月19日号で報告された。プラセボ効果とは、患者自身効果があると思い込むことにより、偽薬を投与しても実際に効果が認められる現象。

 研究グループは、報酬予測に役割を果たすことが知られている脳領域である側座核(NAC)に着目。被験者には、試験のため新しい鎮痛薬またはプラセボのいずれかを投与すると伝え、全員にプラセボ(生理食塩水)を注射した。被験者はこの「薬」の鎮痛効果に対する自身の期待度を評価し、その後、「あごの筋肉に生理食塩水を注射する」という中程度の痛み課題を与えられ、「薬」の有無による痛みの緩和のレベルについても評価した。

 第一の実験では、PET(ポジトロンCT)を用いてNACからのドパミン(脳の報酬反応を誘発する物質)の分泌量を測定。その結果、薬剤の鎮痛効果に対する期待が大きいほどドパミン分泌も多いことが判明。さらに、「薬」による痛みの緩和を高く評価した人ほど、プラセボ投与時のNACの活性が大きかった。

 第二の実験では、機能的磁気共鳴画像(fMRI)による脳スキャンの間に、被験者にさまざまな額の金銭的報酬を期待させた。このときのNAC活性が大きかった人ほど、プラセボ薬の有効性についても高い期待を示していたことがわかった。

 この知見は、プラセボ効果が生じるにはNAC系が活性化される必要があることを裏付けるものだと著者らは述べている。将来、さまざまな疾患の治療法開発にこの情報が役立つとも考えられるという。

[2007年7月19日/HealthDayNews]

2006年11月29日水曜日

3週間で効果「舌下減感作療法」スギ花粉症の最新治療

この病気にこの名医 >> 健康連載一覧へ >> 【第31回】

3週間で効果「舌下減感作療法」
スギ花粉症の最新治療

http://www.nikkansports.com/ns/general/health/40/he40_31.html

 スギ花粉症にも根治療法はある。その代表が免疫療法の一種である減感作療法(抗原特異的免疫療法)。「体質改善のために2年以上という時間がかかります。根気よく取り組む必要がありますが、実際には、なかなか通い切れないという人もいらっしゃいます」と日本医科大学付属病院(東京・文京区)耳鼻咽喉科の大久保公裕助教授(45)は言う。

 減感作療法の弱点は、長期間の通院を必要とする点だが、それを改善した「舌下減感作療法」を、大久保助教授は行っている。“舌下”とあることでも分かるように、スギ花粉(抗体)エキスを舌下から吸収する治療。頻繁な通院の必要がないという。「舌下から抗原エキスを吸収させると、あごの下の左右にあるリンパ節にエキスが届きやすいのです。リンパ節はアレルギー反応に関係の深い免疫機能を持っています。さらに症状の出るのが目と鼻というように顔に集中しています。その点でも近くに位置する〝舌下〟という方法が有効なのです」。

 その療法を紹介しよう。1日1回、パン片を舌下に置いて、そこにスギ花粉エキスを目薬を点眼するように垂らし、2分間待った後にのみ込んでしまうだけでいい。少しずつスギ花粉エキスの濃度を上げていき、3週間連続で治療を行った後、それからは週に1~2回にする。さらに2~3週間に1回と間隔を広げて行き、やはり2年間続ける。通院は1カ月に1回で大丈夫。

 「週に1回は通院しなければならない減感作療法と比べると、ずっと取り組みやすい療法です。2年間続けますが、3週間程度で効果が表れてきます」。現在、大久保助教授の下で臨床試験が行われているが、有効率は減感作療法とほぼ同じ80%。患者の身体的負担が少ないので一般普及が待ち望まれている。

 ▼舌下減感作療法の受診条件 花粉症の人はハウスダストのアレルギーを併発している人が多い。この治療を受けられるのはスギ花粉単独アレルギーの人に限定される。治療を開始するのは5~6月、もしくは9~10月ごろである。

【ジャーナリスト 松井宏夫】

◆花粉症の名医◆
 ▽日本赤十字社和歌山医療センター(和歌山市)耳鼻咽喉科・榎本雅夫部長
 ▽岡山大学医学部付属病院(岡山市)耳鼻咽喉科・岡野光博講師
 ▽独立行政法人国立病院機構福岡病院(福岡市南区)耳鼻咽喉科・宗信夫非常勤医師
 ▽鹿児島大学医学部付属病院(鹿児島市)耳鼻咽喉科・黒野祐一教授

2006年8月22日火曜日

睡眠時無呼吸症候群を自宅で検査できる簡易キット

『体重を5キロ落とせば気道が1ミリ広がる』と聞いて、5kgでたった1mmしか広がらないなんてと思う


自宅で睡眠時無呼吸症候群を検査できる簡易キット
http://www.excite.co.jp/News/bit/00091155803735.html

2006年8月22日 エキサイト
(写真上から)簡易キット一式。
取り扱い説明「装着の仕方」。
装着後のアヤしい姿。
判定結果は5段階での判定だけでなく、呼吸の状態がわかる呼吸波形も送られてきます

かつては1日平均4、5時間の睡眠、完徹2日でも大丈夫だった健康のかたまりのような私だが、ここ数年、たくさん寝ているにも関わらず日中にものすごく眠くなることがある。そして、体重も確実に増加……。そんな私が気になっているのが睡眠時無呼吸症候群だ。

睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome: SAS)は睡眠障害の一種で睡眠(7時間以上)中、無意識のうちに10秒以上呼吸が止まる無呼吸が30回以上生じる、または睡眠一時間に平均5回以上生じる状態をさす。睡眠中に上気道が狭窄(きょうさく。狭くすぼまっているさま)したり、閉塞(へいそく。閉じてふさいでいる状態)することによって起こるが、その原因には肥満、過度の飲酒、喫煙などがあげられている。
この睡眠時の無呼吸のために夜間熟睡しきれず日中に強い眠気を感じるのだ。SASになると、眠気による注意力の低下で交通事故のリスクが高くなったり、血中の酸素濃度が低下するため血液が固まりやすくなり、高血圧や心筋梗塞、脳卒中のリスクが高くなる。

あいにく一人寂しく寝ている私には「寝ている時、呼吸とまっているよ」とか「いびきかいてるよ」なんて言ってくれる人はいない。
そんな時、自宅で簡単に睡眠時無呼吸症候群を検査できる簡易キットがあることを知った。この簡易キットによる検査を行なってくれるのは茨城県つくば市にあるNPO法人睡眠健康研究所。
これは試してみるしかない! とさっそく申し込むことにした。

検査費用の5000円を振り込むとすぐに検査キットが送られてきた。
検査は問診票と一般医療機器に該当する睡眠時無呼吸スクリーナ「ソムニー」という検査機器を用いて、鼻の真下に鼻と口からの呼気を感知するフローセンサを粘着テープで貼り付け一晩の睡眠状態を記録するという簡単なもの。センサをつけた姿は何とも怪しいが、たった一晩のことなので我慢することに。
事前に「多少寝相が悪くても大丈夫かと思います」という話を聞いていたのでいつものように就寝。翌朝もセンサはちゃんとついていた。

そして待つこと2週間、判定結果が送られてきた。
検査結果は「A=正常」から「E=要医療機関受診」までの5段階で判定される。
私の判定結果は「C=軽度の睡眠呼吸障害」! 1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数は8・9回。眠気の問診結果は24点中11点だった。少し不安があったせいか、Eの要医療機関受診でなくてちょっとホッとした。

さらに、判定結果について電話でお話を伺った。
「C=軽度の睡眠呼吸障害」というのは5つの判定の中でも最もレンジが広いんです。1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数で言えば5~20回未満となっているので、8・9回というとかなりBに近いCですね。検査を受けられた人の結果でもこのCが一番多いようです。SASは無呼吸が10秒以上の場合をいいますが、あなたの場合は無呼吸の平均持続時間は13.6秒とさほど長くありませんし、11秒という短いものも多いので現段階ではあまり気にされなくても大丈夫だと思いますよ。ただ、問診による眠気の11点は高いですね。SAS以外に原因があるかもしれませんから、まずは寝不足を解消したり、生活習慣を見直して、それでも眠気があるようだったら専門医療機関を受診することをおすすめします」

現時点ではあまり気にしなくてもよい、という専門家の判定に改めて安心した。でも、日中の眠気が強いことには変わりない。
昔からの不規則な生活を若干引きずっているところもあるので、この辺りも見直しの必要がありそうだ。

睡眠時無呼吸症候群の治療は就寝時CPAP(continuous positive airway pressure/経鼻持続陽圧呼吸療法)という鼻から空気を送り込んで気道がふさがらないようにする専用の医療機器を取り付けたり、比較的軽症であればマウスピースを装着する。一般的には根本治療は痩せること。気道周辺の脂肪を減らして気道が狭くならにようにすることだという。

「体重を5キロ落とせば気道が1ミリ広がるといわれています。5キロ体重を減らせばかなりの効果がでると思います」とのことなので、まずは減量がんばらせていただきます!

睡眠時無呼吸症候群は日中の強い眠気に襲われるだけでなく、生活習慣病の原因にもなりうる。不安があっても忙しくて医療機関に足を運べない人も多いはず。そんな方々に自宅でできる簡易キットによる検査はオススメです。
(こや)

2006年7月2日日曜日

CT、MRI、PET、の違いと特徴

CT、MRI、PET、の得意なこと、不得意なこと
http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/PET/to.html

■2006.07.02 日経ビジネス特別版「がんの診断と治療」より
CT、MRI、PETといった画像診断の急速な進歩と臨床現場への浸透によって、画像診断を専門に扱う放射線科の役割も大きくなってきた。放射線科の現場で長いキャリアを持ち、日本における放射線医療の権威でもある日本医科大学放射線科教授の汲田伸一郎氏に、放射線科の現状と、CT、MRI、PET検査それぞれの利点と欠点、その展望を聞いた。

-CT、MRI、さらにPETといった画像診断が広く注目されています。救急医療や脳外科、心臓外科、がん治療における放射線科の役割が拡大し、治療のイニシアチブを取るようになっていますね。

汲田 放射線画像診断の精度が向上したのはもちろん、検査時間も大幅に短縮されました。そのため脳、心臓疾患をはじめとする急性期疾患に対する緊急検査にも柔軟に対応できるようになったわけです。今後も、放射線科の医師は、各疾患の診断、治療方針決定あるいは治療効果判定に際して、大きな役割を果たしていくと考えられます。ちなみに、欧米では、放射線科専門医の地位は従来から非常に高く、ドクターズ・ドクター(医者の医者)と呼ばれるほどです。放射線科の医師のアドバイスを基本にして、診療方針が決まるという認識ですね。日本でも、画像診断の急速な進歩によって、こうした欧米並みの認識が浸透しつつあると言えるのかも知れません。

CTはX線、MRIは電磁波、
PETは体内からの放射線を画像化

-患者や一般の人向けに、CT、MRI、PETそれぞれについて、画像診断の仕組みと、得意なこと、不得意なことを解説していただけますか。

汲田 CTはComputed Tomography(コンピューター断層撮影)の略称で、レントゲン写真と同じように体を通過したX線を検出器で捉えて、組織のX線吸収率の違いを画像化します。普通のレントゲン写真と違うのは、検出器が体の周りを回転し、あらゆる方向から撮ったデータをコンピューターで計算するため、三次元的な吸収分布画像が得られることです。
 その利点としては、まず優れた空間分解能が挙げられます。最新鋭機では0.5mm程度の腫瘍も見分けることができます。また検査効率も高く、検査時間も短縮されています。最新の多列式CT装置(64列)ならば、心臓の筋肉に栄養を与える血管である冠動脈も、10秒足らずの息止めで撮影できます。逆に欠点としては、少なからず被曝を受けてしまうところです。腫瘍の性状把握や血管の詳細な描出のためには造影剤を使用しなくてはならないため、わずかながら、造影剤による副作用の可能性もあります。

 MRIはMagnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)の略称です。人間の体の水分や脂肪に多く含まれる水素原子核は、強い磁場の中に入ると一定の方向に揃う特徴があります。この状態で特定の周波数の電磁波を受けると「共鳴」という現象を起こし、電磁波の照射が終わると、今度は逆にエネルギーを電磁波として放出して元の状態に戻ります。この時に、人体の水素原子核から放出される電磁波を捉え、コンピューターで解析し、画像化したものがMRI画像です。

 MRIは、CTと違って検査被曝はありませんし、部位によっては、造影剤を使用しなくても血管像が得られます。ただ、CTより検査効率が低く、20~30分以上の検査時間が必要です。さらに分解能はCTよりもやや劣り、CTが0.5mm程度の分解能を持つとすると、MRIでは0.8mm程度の腫瘍しか見分けられません。

 PETはPositron Emission Tomography(ポジトロン断層撮影)の略称で、酸素、水、糖分、アミノ酸などにポジトロン核種を組み込んだ化合物(PET薬剤)を人体に注射することによって、生理・生化学的な画像情報を得ます。ポジトロンとは正の電荷を持った電子のことで、通常の負の電荷を持つ電子とすぐに結合します。この時、2本の消滅放射線を正反対の方向に放出するため、これを収集装置で捉えて画像化したものがPET画像です。日本では、2002年4月に糖代謝を反映するPET薬剤である2-deoxy-18F-fluoro-D-glucose (FDG)が保険適用となりました。がんなどの悪性細胞は、正常細胞の3倍から8倍の糖代謝を行っているため、悪性腫瘍にはFDGが多く取り込まれ、その集積度によって、腫瘍の活性を推定することができます。

 PET検査による被曝は、年間の自然被曝とほぼ同等で、問題視されるものではありません。ただ欠点としては、CTやMRIに比べると、空間分解能がやや劣ることが挙げられます。機種によって異なりますが、およそ5mm程度の腫瘍しか見分けられません。

-ここ数年で、全国のPETセンターでは、PET/CTが標準装備されるようになってきました。PET/CTの利点について教えてください。

汲田 PET/CTは、空間分解能がやや劣るというPETの欠点を補う装置だと考えられます。PETとCTとの融合画像が得られるため、形態・機能の両面から病変について詳細に検討を加えることができます。解剖学的に複雑な構造を持つ頭頚部領域の診断などには特に有効でしょう。

 PET/CTを有効に使いこなすためには、PET画像とCT画像の両者を的確に読影し、診断ができる放射線科医が必要です。ところが現状では、両者のスキルを持つ専門医は、まだまだ少ない。そこで当院では、放射線科に入局した研修医をCT、MRI、PETなどあらゆる分野で研修させています。また、すべての科の研修医を対象に、放射線医学セミナーを毎月実施しています。放射線科以外の臨床科の医師にとっても、放射線医学の基礎を若いうちにしっかり学んでおくことは、将来、必ず役に立つと考えるからです。

2005年12月20日火曜日

放送やディスクの出力全面禁止へ(D端子含む)

デジタル家電

「2014年以降はD端子への出力を全面禁止」,次世代光ディスクの著作権保護方式が固まる【訂正あり】

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20051220/111766/

光ディスク HDTV アナログ テレビ デジタル放送 コンテンツ 家電製品 著作権 AV機器 光記録 デジタル家電 放送 企業・市場動向
2005/12/20 11:34

 次世代光ディスクが採用する著作権保護方式「AACS」で,コンテンツ事業者や機器メーカーが遵守するCompliance Rules(運用規定)がついに固まった。最大の争点だった「アナログ端子の解像度制限」(ブログ参照)については,日本など特定の地域では2010年まで制限を行わないことで決着をみた。

 ただし,日本の機器メーカーにとって厳しい条項も盛り込まれた。2011年以降は,AACSに対応する機器は,アナログ端子にHDTV映像を出力できなくなる。さらに2014年には,アナログ端子への映像出力そのものが禁止される。

*ここでのアナログ端子とは,D端子,コンポジット端子,S端子などを指す。


 このCompliance Rulesは,DVD ForumやBDA(Blu-ray Disc Association)に所属する各企業による2週間の評価期間を経て,2006年1月には正式に確定する見通し。その直後からAACSのライセンス供与が始まる予定だ。年末から年始にかけての2週間の間に,機器メーカーはこのCompliance Rulesを認めるか,あるいは異議を唱えるか,判断を迫られることになる。

大幅に遅れたAACSのライセンス発効

 本来であれば,2005年夏頃にはComliance Rulesが確定し,AACSのライセンス供与が始まる予定だった。しかし,実際には予定を大幅に超過する結果となった。この結果,東芝は2005年末に予定していたHD DVDプレーヤの発売を延期せざるを得なかった(Tech-On!関連記事)。

 ここまでCompliance Rulesをめぐる議論が長引いたのは,冒頭に挙げたアナログ出力制限機能の導入をめぐって議論が紛糾したためである。有効なコピー防止技術を持たないD端子によるHDTV映像の出力に,最も厳しい見方を示したのが米Warner Bros. Studios社である。同社が主張したのは,ディスクに書き込んだ解像度制限ビット「Image_Constraint_Token(ICT)」の値に応じて,D端子をはじめとするアナログ端子に出力する映像の解像度を制限できる機能(以下,ICT機能)を機器に義務付けること。このWarner社の主張に対して,松下電器産業やソニーは強行に反対した。背景には,デジタル端子を持たなハイビジョン・テレビが広く普及してしまった日本市場の特殊性がある。ICT機能を義務づけると,今まで販売してきたハイビジョン・テレビを利用しても,次世代光ディスクによるコンテンツをHDTV表示できなくなってしまう。

* 「Image_Constraint_Token(ICT)」は,元々はDTCP(digital transmission content protection)で規定されたフラグである。ICTの値を0に設定したコンテンツは,D端子などのアナログ端子にHDTV映像を出力することが禁止され,SDTV映像にダウン・コンバートした信号のみ出力できる。ICTの値を0とするか1とするかは,原則としてはコンテンツ事業者の自由裁量に委ねられる。

 そして12月上旬,双方が一歩ずつ妥協することで,ようやくこの問題に決着がついた。

アナログ停波に続く新たな「2011年問題」が浮上

 AACSの動向に詳しい複数の技術者によれば,今回まとまったCompliance Rulesのポイントは3つある。

1 AACSに準拠するすべての機器は,ICT機能に対応しなければならない
2 日本で販売するパッケージ・メディアについては,コンテンツ事業者は2010年までICT機能を有効にしない。
3 2011年以降に製造する機器は,アナログ端子にはSDTV映像のみ出力でき,HDTV映像の出力はできない。2014年以降に製造する機器は,HDTV,SDTVを問わず,アナログ端子に映像を出力してはならない。

 機器メーカーは2の条項を勝ち取り,そのかわりハリウッドは3の条項を勝ち取るという「痛み分け」の形になった。

 条項1と2によって,機器へのICT機能の搭載を認める代わりに,日本に限ってコンテンツ事業者の自由裁量を制限させる事に成功した。ただし,Compliance Rulesの中で日本だけ名指しした優遇措置をもうけることはできない。そのためにAACS LAが考え出したのが,「次世代光ディスクにおけるICTの運用は,各国のデジタル放送の運用に準拠する」という規定である。日本では,放送事業者がICT機能を使うことは許されていない。これにあわせ,日本で販売する次世代光ディスクについても,これに準ずる形でICT=1(アナログ出力を制限せず)に固定にすることが義務づけられる。ただし2011年1月1日以降は,日本でもコンテンツ事業者がICTの値を自由に制御できるようになる。

 *ARIB(電波産業会)が定めるデジタル放送の運用規定(TR-B14およびTR-B15)には「解像度制限ビット(Image_Constraint_Token)の運用は行ってはならない。必ずImage_Constraint_Token=1と設定すること」との記述がある。

 一方,欧米ではICT機能の使用を制限する法律や運用規定はないとみられることから,同地域で発売するコンテンツについてはICTの値を自由に設定できる。

 とはいえ実際には,ICT機能を使う米映画会社は一部にとどまりそうだ。米The Walt Disney Companyや米Twentieth Century Fox社,米Sony Pictures Entertainment社といった映画会社は,ICT機能を使わないことを明言している。国内の技術者も「客に返品される可能性がある光ディスクの販売を米Wal-Mart Stores,Inc.のような量販店が認めるとは思えない。ICTの運用は無理だろう」と楽観的な見方を示す。

 条項3は,ハリウッドが以前が主張していた「アナログ端子がある限り,不正コピーはなくならない」との主張に基づくものである。D端子やコンポジット端子をこの世からなくしてしまうための行程表として示したものといえる。具体的には,2011年1月1日以降に製造する機器については,ICTの値に関わらず,アナログ端子にHDTV映像を出力できなくなる。さらに2014年1月1日には,SDTV映像を含めてアナログ端子への映像出力が一切認められなくなる。次世代光ディスクの出力は,すべてHDMI端子などのデジタル出力に集約されることになるわけだ。

 もし本当にこの条項が忠実に履行されれば,HDMI端子を持たないテレビが広く普及してしまった日本では,その影響は計り知れない。日本だけではない。HDMI端子の普及が進んだ米国でも,D端子付きテレビがすでに一部で出回っている。何より,そもそもコンポジット端子やS端子でしか映像を視聴できないテレビも数多い。

 ある家電メーカーの技術者は「ハリウッドは本当に3の条項の履行を本気で求めているのか。ICT機能の導入以上にハードルは高く,消費者や大手小売店が許すとは思えない」と,この条項の有効性には懐疑的な見方を示した。誰もが,ハリウッドの真意,本気度を測りかねている。

【訂正】記事タイトルの掲載当初,D端子への映像出力が全面禁止となる時期を「2013年」としていましたが,2014年の誤りです。お詫びして訂正します。

浅川 直輝=日経エレクトロニクス

2005年4月18日月曜日

花粉症やアトピー“体質”も変える乳酸菌効果

花粉症対策は「乳酸菌で腸内環境改善」がポイント 2009年12月9日水曜日

花粉症やアトピー“体質”も変える乳酸菌効果

http://www.nikkeibp.co.jp/archives/370/370685.html

2005年04月18日

 乳酸菌には、腸内の善玉菌を増やして便通を改善する効果があるのはよく知られていること(ピックアップ1参照)。ところが最近、これに続く効果として注目を集めているのが、乳酸菌の抗アレルギー作用だ。

 実際これまでに、乳酸菌には、花粉症や通年性鼻アレルギーの症状緩和、アトピー性皮膚炎の発症予防などに効果があったことが報告されている。しかも特長的なのは、乳酸菌は一時的にアレルギー状態を改善するのではなく、アレルギーになりにくい体質作りに役立つと考えられていることだ。

 アレルギーは、体にとっての異物に対する過剰な免疫反応と考えられる。花粉症の人が花粉を吸い込むと、くしゃみや鼻水などの症状が起きるのは、体内に侵入した異物である花粉(アレルゲン)が引き金となって、免疫細胞から粘膜の炎症を引き起こす物質が分泌されるためだ。

 こうしたアレルギー症状が起きるのは、免疫細胞の一種である「ヘルパーT細胞」のバランスが崩れることが原因とする説が有力だ。ヘルパーT細胞には、ウイルス感染細胞やがん細胞などを攻撃するタイプ1(Th1)と、アレルギーの原因になるタイプ2(Th2)があり、両者が連動して免疫機能をコントロールしている。しかし、アレルギーを起こしやすい人はこのバランスが崩れて、Th2がTh1に比べて過剰になってしまっているのだ(ファクトシート参照)。

 アレルギー体質をアレルギーを起こしにくい体質に改善するには、Th1の数を増やすか、Th2の数を減らして、そのバランスを保つようにすればよい。乳酸菌には、Th1を増加させる作用があるという。

 たとえば、ヤクルト本社の報告では、食品アレルギーの動物モデル(マウス)の腹腔内に熱殺菌した乳酸菌を投与すると、Th1の産生を促進する“インターロイキン-12”が増加したことが確認されている。

 さらに、アトピーなどのアレルギー症状の改善には、乳酸菌を食べるだけで効果があることも分かってきた。キリンビールは、アトピー性皮膚炎と類似の症状を発症するマウスに乳酸菌の「KW3110株」を投与すると、皮膚のただれや出血の出現が抑制されると共に、アレルギーの指標となる血中IgE濃度が3分の1に低下することを2004年3月の日本農芸化学会大会で発表している。

 さらに同じ大会では、カルピスや雪印乳業、明治乳業、ヤクルト本社も同様に、「ヨーグルト(乳酸菌)を食べることでアレルギーの対策ができる」という研究成果をこぞって発表した(MedWaveの記事参照)。

 乳酸菌を食べると、どうしてアレルギーの抑制効果があるのかはよく分かっていないが、乳酸菌は体の中の最大の免疫組織である腸に働きかけることで、腸管免疫の機能維持に影響を与えているのではないかと推測されている。乳酸菌を食べると、その乳酸菌は腸に運ばれるが、そこでTh1の力を高める一方で、Th2の働きを抑制しているらしい。つまり、乳酸菌で、お腹の中からアレルギー体質を改善できるわけだ。

 もっとも、乳酸菌と一口にいっても、全ての乳酸菌が一様にTh1を増やし、Th1とTh2のバランスを是正する力があるというわけではなさそうだ。100種類近い乳酸菌をテストに使ったキリンビールの実験では、Th1とTh2のバランスを改善する能力の高さは菌株によって様々だったという。

(田村 嘉麿=健康サイト編集)

〔参考文献〕
日経ドラッグインフォメーション2004(2):76;65.
日経バイオビジネス2002(7):14;70.

2005年4月14日木曜日

花粉症の根治治療に“注射しない”減感作療法

花粉症の根治治療に“注射しない”減感作療法 (05/04/14)

http://www.nikkeibp.co.jp/archives/368/368856.html

2005年04月07日

 花粉症の根治治療、つまり薬を飲まなくても済む程度に症状の軽減が期待できる治療法が、日本でも普及しようとしている。その治療法は「舌下減感作療法」。一足先に普及した欧米では、「サブリンガル・イムノセラピー(SubLingual ImmunoTherapy)」、略してスリット(SLIT)と呼ばれている。日本で決まった呼び名はまだないので、ここでは「スリット減感作療法」としておこう。

 「なんだ、減感作療法なんて前からあるじゃないか。友達から聞いたことがあるけど、注射を何度も受けるのが痛くていやなんだって。その友達も途中でやめちゃったよ」――。

 いやごもっとも。確かに減感作療法そのものは、花粉症の治療手段として歴史のある治療法だ。花粉症の治療薬である抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬などには、副作用として大なり小なり眠気があることから、薬を飲まなくて済むようになることを期待して、例えば受験生などに対して勧められることが多かった。
医療機関の受信も月1回程度に
 ところが、今までの減感作療法には大きな弱点があった。抗原となるエキスを注射しなければならないのだ。そのために多いときは、週に2?3回も病医院に通う必要がある。そのうえ注射だから、当然痛い。治療終了までに100回以上も注射するそうで、自分を針山に例える患者さんもいるほどだという。

 また頻度はきわめて少ないが、アレルギー性の反応が起こって、重い場合はショック状態になる場合もある。これでは、薬をやめたいとは思っても、減感作療法にもなかなか踏み切れないことも事実。実際、日本では減感作療法を受ける人は少なかった。

 このような問題点が解決されたのが、スリット減感作療法だ。本治療法では、スギ花粉などの抗原エキスを2分間程度口に含むだけでいい。ちなみに、この方法が「舌下(ぜっか)投与」と呼ばれるため、「舌下減感作療法」と言われるようになった。当然、注射の痛みはないうえ、処方された抗原エキスの服用は患者さんが自宅で行えるので、病医院への受診も月1回程度で済む。

 口に含んだだけで注射と同じ効き目があるのかという疑問が生じるが、口の粘膜には免疫機能を担う「樹状細胞」という細胞が多くあり、その細胞の働きなどで同様な効果が期待できるとされている。実際、治療効果は注射による減感作療法とほぼ同等とのことだ。しかも、アレルギー性の反応も注射より軽度で、ショックにまで至ったとの報告は今まで1例もなく、現時点で一番重いものも、じんましんにとどまる。
WHOも花粉症も治療法の1つとして推奨
 これならば、もし減感作療法を受けるなら、誰でもスリット減感作療法の方がいいと思うだろう。欧米ではスリット減感作療法が急速に普及し、1998年には世界保健機関(WHO)が花粉症の治療法の1つとして本治療法を推奨したほか、2003年にはコクラン共同研究という、個々の治療法を厳格に評価することで知られる英国のプロジェクトがスリット減感作療法を取り上げ、ポジティブな評価を下した(英文のアブストラクトを、http://www.cochrane.org/cochrane/revabstr/ab002893.htmで閲読可能)。

 ここ数年は、スリット減感作療法について報告した論文数も急増している(図)。既に欧米では本治療法の評価は確立したといっていい。

 日本でも、日本医大や千葉大の耳鼻科などで検討が始まっているが、臨床研究の一環という位置づけなので、いつでも治療希望者を受け入れる状況にはなっていない。そのため国内での普及にはもう少し時間がかかりそうだが、今年4月から、米国においてスリット減感作療法のメッカともなっている施設(アレルギー・アソシエーツ、http://www.allergy-solutions.com/)で同治療法の研修を受けた斉藤正峰医師が、横浜市都筑区のクリニック(http://allergy-slit.webmedipr.jp/)でスリット減感作療法を始めた。

 まだ健康保険がきかず自由診療であることがネックだが、本格的な普及に向けた第一歩として注目されている。もちろん日本人の患者さんを対象とした治療成績と安全性の評価が必要であることは論を待たないが、先行する欧米における評価状況をみると、国内でも早期の普及を期待したいところだ。

(高志 昌宏=日経メディカル開発)

さらに詳しく知りたい方は、『花粉症・アレルギーを治す注射しない減感作療法の威力』(斉藤正峰=著、日経メディカル開発、933円+税)をお読みください。同書のお申し込みはこちらから。

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