自分の脳波で作った音楽が不眠症の特効薬に
http://wiredvision.jp/archives/200209/2002090403.html
Mark Baard 2002年09月04日
不眠症に悩んでいる人は、羊を数える代わりに、自分自身の脳波の響きを聴くことで安息を得られるかもしれない。
トロント大学の研究結果によると、「脳波音楽」――コンピューター処理で音楽に変換された脳波記録――が不眠症患者をより短い時間で夢の国に送り届けるという。
ある不眠症患者の脳波音楽の録音(MIDIファイル)は、どことなくブライアン・イーノの曲のように聞こえる。
もちろん、すべての脳が調和のとれた音楽を奏でるとは限らない。
トロント大学のリオニド・カユモフ教授は、「全くの不協和音に聞こえることもある」と語る。カユモフ教授はトロント・ウエスタン病院の『睡眠研究所』の所長も務める。
ある被験者は、プログラムが彼のために作り出した音楽のパターンは不快なものだったと不満を漏らした。
「しかし、彼は指示通りにCDを使い、いつもよりぐっすり眠っていた」とカユモフ教授。
被験者は、自分の脳波から作成した個別の脳波音楽CDを与えられた。一方、対照群の8人は、他人のためにプログラムされた脳波音楽を聴いた。
すべての被験者は30日間、毎晩就寝時にCDを聴いた。就寝中は身体の活動レベルを記録するため、手首に挙動記録装置を装着する。
自分の脳波音楽を聴いた被験者は、対照群より3分の1の時間で眠りに落ち、睡眠時間も長かった。夜中に目が醒める回数も研究開始時の5回から、平均して1回と大幅に減った。
カユモフ教授はまた、カスタマイズされた脳波音楽を聴くことで、被験者の脳がリラックスの度合いと眠りの深さに関係するデルタ波とシータ波をより多く放出することも突き止めた。
眠っているときの人間の脳は似通った活動を見せるが、個々の脳波が描くパターンは独特だ。
さらに、「それらは何年たってもほぼ一定だ」とカユモフ教授。つまり、患者の脳波音楽CDは、効果が長期間持続すると考えられる。だとすると、依存性が生じることのある抗不安薬や睡眠薬の望ましい代替品となり得る。
睡眠科学者は、カユモフ教授の脳波音楽が認知行動療法の補助手段としても有効かもしれないと考えている。
ブラウン大学のJ・トッド・アーネット教授は、「音楽は、就寝前の緊張を解きほぐすひとときに最適だ」と語る。臨床心理学者でもあるアーネット教授は、患者に厳格な睡眠スケジュールを守らせ、ベッドでの活動を制限している。
単なる気晴らしで音楽を聴くだけでも、患者の悩み事を取り除くには十分かもしれない。
ケース・ウエスタン・リザーブ大学のマリオン・グッド教授は、「音楽が体と心をリラックスさせ、気をそらしてくれるため、苦痛が軽減することがわかった」と語る。
グッド教授が米国立衛生研究所(NIH)の支援を受け行なっている研究は、外科手術を受けた患者が回復期に音楽を聴くことにより、術後の痛みが最大30%軽減されたと報告している。
カユモフ教授は、脳波音楽がさらに広範囲で適用できるかどうかを調べる新たな研究をすでに開始している。
「多くの人々に効果を発揮する、より普遍的な音楽パターンを作り出すことができたら、どんなに素晴らしいだろう」とカユモフ教授は語った。
[日本語版:石川あけみ/高森郁哉]
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