2006年11月29日水曜日

3週間で効果「舌下減感作療法」スギ花粉症の最新治療

この病気にこの名医 >> 健康連載一覧へ >> 【第31回】

3週間で効果「舌下減感作療法」
スギ花粉症の最新治療

http://www.nikkansports.com/ns/general/health/40/he40_31.html

 スギ花粉症にも根治療法はある。その代表が免疫療法の一種である減感作療法(抗原特異的免疫療法)。「体質改善のために2年以上という時間がかかります。根気よく取り組む必要がありますが、実際には、なかなか通い切れないという人もいらっしゃいます」と日本医科大学付属病院(東京・文京区)耳鼻咽喉科の大久保公裕助教授(45)は言う。

 減感作療法の弱点は、長期間の通院を必要とする点だが、それを改善した「舌下減感作療法」を、大久保助教授は行っている。“舌下”とあることでも分かるように、スギ花粉(抗体)エキスを舌下から吸収する治療。頻繁な通院の必要がないという。「舌下から抗原エキスを吸収させると、あごの下の左右にあるリンパ節にエキスが届きやすいのです。リンパ節はアレルギー反応に関係の深い免疫機能を持っています。さらに症状の出るのが目と鼻というように顔に集中しています。その点でも近くに位置する〝舌下〟という方法が有効なのです」。

 その療法を紹介しよう。1日1回、パン片を舌下に置いて、そこにスギ花粉エキスを目薬を点眼するように垂らし、2分間待った後にのみ込んでしまうだけでいい。少しずつスギ花粉エキスの濃度を上げていき、3週間連続で治療を行った後、それからは週に1~2回にする。さらに2~3週間に1回と間隔を広げて行き、やはり2年間続ける。通院は1カ月に1回で大丈夫。

 「週に1回は通院しなければならない減感作療法と比べると、ずっと取り組みやすい療法です。2年間続けますが、3週間程度で効果が表れてきます」。現在、大久保助教授の下で臨床試験が行われているが、有効率は減感作療法とほぼ同じ80%。患者の身体的負担が少ないので一般普及が待ち望まれている。

 ▼舌下減感作療法の受診条件 花粉症の人はハウスダストのアレルギーを併発している人が多い。この治療を受けられるのはスギ花粉単独アレルギーの人に限定される。治療を開始するのは5~6月、もしくは9~10月ごろである。

【ジャーナリスト 松井宏夫】

◆花粉症の名医◆
 ▽日本赤十字社和歌山医療センター(和歌山市)耳鼻咽喉科・榎本雅夫部長
 ▽岡山大学医学部付属病院(岡山市)耳鼻咽喉科・岡野光博講師
 ▽独立行政法人国立病院機構福岡病院(福岡市南区)耳鼻咽喉科・宗信夫非常勤医師
 ▽鹿児島大学医学部付属病院(鹿児島市)耳鼻咽喉科・黒野祐一教授

2006年8月22日火曜日

睡眠時無呼吸症候群を自宅で検査できる簡易キット

『体重を5キロ落とせば気道が1ミリ広がる』と聞いて、5kgでたった1mmしか広がらないなんてと思う


自宅で睡眠時無呼吸症候群を検査できる簡易キット
http://www.excite.co.jp/News/bit/00091155803735.html

2006年8月22日 エキサイト
(写真上から)簡易キット一式。
取り扱い説明「装着の仕方」。
装着後のアヤしい姿。
判定結果は5段階での判定だけでなく、呼吸の状態がわかる呼吸波形も送られてきます

かつては1日平均4、5時間の睡眠、完徹2日でも大丈夫だった健康のかたまりのような私だが、ここ数年、たくさん寝ているにも関わらず日中にものすごく眠くなることがある。そして、体重も確実に増加……。そんな私が気になっているのが睡眠時無呼吸症候群だ。

睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome: SAS)は睡眠障害の一種で睡眠(7時間以上)中、無意識のうちに10秒以上呼吸が止まる無呼吸が30回以上生じる、または睡眠一時間に平均5回以上生じる状態をさす。睡眠中に上気道が狭窄(きょうさく。狭くすぼまっているさま)したり、閉塞(へいそく。閉じてふさいでいる状態)することによって起こるが、その原因には肥満、過度の飲酒、喫煙などがあげられている。
この睡眠時の無呼吸のために夜間熟睡しきれず日中に強い眠気を感じるのだ。SASになると、眠気による注意力の低下で交通事故のリスクが高くなったり、血中の酸素濃度が低下するため血液が固まりやすくなり、高血圧や心筋梗塞、脳卒中のリスクが高くなる。

あいにく一人寂しく寝ている私には「寝ている時、呼吸とまっているよ」とか「いびきかいてるよ」なんて言ってくれる人はいない。
そんな時、自宅で簡単に睡眠時無呼吸症候群を検査できる簡易キットがあることを知った。この簡易キットによる検査を行なってくれるのは茨城県つくば市にあるNPO法人睡眠健康研究所。
これは試してみるしかない! とさっそく申し込むことにした。

検査費用の5000円を振り込むとすぐに検査キットが送られてきた。
検査は問診票と一般医療機器に該当する睡眠時無呼吸スクリーナ「ソムニー」という検査機器を用いて、鼻の真下に鼻と口からの呼気を感知するフローセンサを粘着テープで貼り付け一晩の睡眠状態を記録するという簡単なもの。センサをつけた姿は何とも怪しいが、たった一晩のことなので我慢することに。
事前に「多少寝相が悪くても大丈夫かと思います」という話を聞いていたのでいつものように就寝。翌朝もセンサはちゃんとついていた。

そして待つこと2週間、判定結果が送られてきた。
検査結果は「A=正常」から「E=要医療機関受診」までの5段階で判定される。
私の判定結果は「C=軽度の睡眠呼吸障害」! 1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数は8・9回。眠気の問診結果は24点中11点だった。少し不安があったせいか、Eの要医療機関受診でなくてちょっとホッとした。

さらに、判定結果について電話でお話を伺った。
「C=軽度の睡眠呼吸障害」というのは5つの判定の中でも最もレンジが広いんです。1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数で言えば5~20回未満となっているので、8・9回というとかなりBに近いCですね。検査を受けられた人の結果でもこのCが一番多いようです。SASは無呼吸が10秒以上の場合をいいますが、あなたの場合は無呼吸の平均持続時間は13.6秒とさほど長くありませんし、11秒という短いものも多いので現段階ではあまり気にされなくても大丈夫だと思いますよ。ただ、問診による眠気の11点は高いですね。SAS以外に原因があるかもしれませんから、まずは寝不足を解消したり、生活習慣を見直して、それでも眠気があるようだったら専門医療機関を受診することをおすすめします」

現時点ではあまり気にしなくてもよい、という専門家の判定に改めて安心した。でも、日中の眠気が強いことには変わりない。
昔からの不規則な生活を若干引きずっているところもあるので、この辺りも見直しの必要がありそうだ。

睡眠時無呼吸症候群の治療は就寝時CPAP(continuous positive airway pressure/経鼻持続陽圧呼吸療法)という鼻から空気を送り込んで気道がふさがらないようにする専用の医療機器を取り付けたり、比較的軽症であればマウスピースを装着する。一般的には根本治療は痩せること。気道周辺の脂肪を減らして気道が狭くならにようにすることだという。

「体重を5キロ落とせば気道が1ミリ広がるといわれています。5キロ体重を減らせばかなりの効果がでると思います」とのことなので、まずは減量がんばらせていただきます!

睡眠時無呼吸症候群は日中の強い眠気に襲われるだけでなく、生活習慣病の原因にもなりうる。不安があっても忙しくて医療機関に足を運べない人も多いはず。そんな方々に自宅でできる簡易キットによる検査はオススメです。
(こや)

2006年7月2日日曜日

CT、MRI、PET、の違いと特徴

CT、MRI、PET、の得意なこと、不得意なこと
http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/PET/to.html

■2006.07.02 日経ビジネス特別版「がんの診断と治療」より
CT、MRI、PETといった画像診断の急速な進歩と臨床現場への浸透によって、画像診断を専門に扱う放射線科の役割も大きくなってきた。放射線科の現場で長いキャリアを持ち、日本における放射線医療の権威でもある日本医科大学放射線科教授の汲田伸一郎氏に、放射線科の現状と、CT、MRI、PET検査それぞれの利点と欠点、その展望を聞いた。

-CT、MRI、さらにPETといった画像診断が広く注目されています。救急医療や脳外科、心臓外科、がん治療における放射線科の役割が拡大し、治療のイニシアチブを取るようになっていますね。

汲田 放射線画像診断の精度が向上したのはもちろん、検査時間も大幅に短縮されました。そのため脳、心臓疾患をはじめとする急性期疾患に対する緊急検査にも柔軟に対応できるようになったわけです。今後も、放射線科の医師は、各疾患の診断、治療方針決定あるいは治療効果判定に際して、大きな役割を果たしていくと考えられます。ちなみに、欧米では、放射線科専門医の地位は従来から非常に高く、ドクターズ・ドクター(医者の医者)と呼ばれるほどです。放射線科の医師のアドバイスを基本にして、診療方針が決まるという認識ですね。日本でも、画像診断の急速な進歩によって、こうした欧米並みの認識が浸透しつつあると言えるのかも知れません。

CTはX線、MRIは電磁波、
PETは体内からの放射線を画像化

-患者や一般の人向けに、CT、MRI、PETそれぞれについて、画像診断の仕組みと、得意なこと、不得意なことを解説していただけますか。

汲田 CTはComputed Tomography(コンピューター断層撮影)の略称で、レントゲン写真と同じように体を通過したX線を検出器で捉えて、組織のX線吸収率の違いを画像化します。普通のレントゲン写真と違うのは、検出器が体の周りを回転し、あらゆる方向から撮ったデータをコンピューターで計算するため、三次元的な吸収分布画像が得られることです。
 その利点としては、まず優れた空間分解能が挙げられます。最新鋭機では0.5mm程度の腫瘍も見分けることができます。また検査効率も高く、検査時間も短縮されています。最新の多列式CT装置(64列)ならば、心臓の筋肉に栄養を与える血管である冠動脈も、10秒足らずの息止めで撮影できます。逆に欠点としては、少なからず被曝を受けてしまうところです。腫瘍の性状把握や血管の詳細な描出のためには造影剤を使用しなくてはならないため、わずかながら、造影剤による副作用の可能性もあります。

 MRIはMagnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)の略称です。人間の体の水分や脂肪に多く含まれる水素原子核は、強い磁場の中に入ると一定の方向に揃う特徴があります。この状態で特定の周波数の電磁波を受けると「共鳴」という現象を起こし、電磁波の照射が終わると、今度は逆にエネルギーを電磁波として放出して元の状態に戻ります。この時に、人体の水素原子核から放出される電磁波を捉え、コンピューターで解析し、画像化したものがMRI画像です。

 MRIは、CTと違って検査被曝はありませんし、部位によっては、造影剤を使用しなくても血管像が得られます。ただ、CTより検査効率が低く、20~30分以上の検査時間が必要です。さらに分解能はCTよりもやや劣り、CTが0.5mm程度の分解能を持つとすると、MRIでは0.8mm程度の腫瘍しか見分けられません。

 PETはPositron Emission Tomography(ポジトロン断層撮影)の略称で、酸素、水、糖分、アミノ酸などにポジトロン核種を組み込んだ化合物(PET薬剤)を人体に注射することによって、生理・生化学的な画像情報を得ます。ポジトロンとは正の電荷を持った電子のことで、通常の負の電荷を持つ電子とすぐに結合します。この時、2本の消滅放射線を正反対の方向に放出するため、これを収集装置で捉えて画像化したものがPET画像です。日本では、2002年4月に糖代謝を反映するPET薬剤である2-deoxy-18F-fluoro-D-glucose (FDG)が保険適用となりました。がんなどの悪性細胞は、正常細胞の3倍から8倍の糖代謝を行っているため、悪性腫瘍にはFDGが多く取り込まれ、その集積度によって、腫瘍の活性を推定することができます。

 PET検査による被曝は、年間の自然被曝とほぼ同等で、問題視されるものではありません。ただ欠点としては、CTやMRIに比べると、空間分解能がやや劣ることが挙げられます。機種によって異なりますが、およそ5mm程度の腫瘍しか見分けられません。

-ここ数年で、全国のPETセンターでは、PET/CTが標準装備されるようになってきました。PET/CTの利点について教えてください。

汲田 PET/CTは、空間分解能がやや劣るというPETの欠点を補う装置だと考えられます。PETとCTとの融合画像が得られるため、形態・機能の両面から病変について詳細に検討を加えることができます。解剖学的に複雑な構造を持つ頭頚部領域の診断などには特に有効でしょう。

 PET/CTを有効に使いこなすためには、PET画像とCT画像の両者を的確に読影し、診断ができる放射線科医が必要です。ところが現状では、両者のスキルを持つ専門医は、まだまだ少ない。そこで当院では、放射線科に入局した研修医をCT、MRI、PETなどあらゆる分野で研修させています。また、すべての科の研修医を対象に、放射線医学セミナーを毎月実施しています。放射線科以外の臨床科の医師にとっても、放射線医学の基礎を若いうちにしっかり学んでおくことは、将来、必ず役に立つと考えるからです。