2007年10月29日
来春の著作権法改正で、違法動画のダウンロードも禁止に
議論は大詰め、権利者とユーザーで意見は対立
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20071018/284868/
金子 寛人=日経パソコン
【2年にわたり激論】
音楽CDをパソコンの音楽管理ソフトに読み込み、携帯音楽プレーヤーに転送して聴く。テレビ番組をHDDレコーダーで録画し、DVDに保存してコレクションにする。こうした家庭内の私的録音録画を巡る著作権法の改正論議が山場を迎えている。文化審議会 著作権分科会私的録音録画小委員会で9月26日に中間取りまとめが作成された。一部の課題は早ければ2008年の通常国会で著作権法に追加される見通しだ。だが小委員会で紛糾している課題もあり、通常国会まで残り数カ月の動向にも目が離せない。
大きなところでは、違法サイトからの私的録音録画の取り締まり強化がほぼ確実な情勢だ。従来は、権利者に無断で音楽や動画をアップロードする行為は違法だったが、そうした違法コンテンツのダウンロードは規制されていなかった。今後は、例えば違法コンテンツであることを知りながら違法着うたサイトから音楽をダウンロードしたり、コピー制御信号を外して録画されたテレビ番組のデータをファイル交換ソフトでダウンロードしたりする行為は違法となる。罰則規定がないため懲役や罰金は科せられないが、権利者や権利者団体から損害賠償を請求される可能性はある。ただし小委員会では、ユーザー側の委員から「インターネット上では合法サイトと違法サイトの区別が不明確で、ユーザーのインターネット利用を萎縮させる」との反対意見が出た。
なお、動画投稿サイトの「YouTube」に代表されるストリーミング配信サービスは、ダウンロードと異なり複製物をユーザーのパソコンに保存しないため規制強化の対象外とされている。だがこれも、YouTubeのコンテンツをファイルに保存できるソフトが存在しており、法による規制がどこまで及ぶのか不透明だ。
権利者とユーザーの両論併記
私的録音録画の対価としてMDや音楽用CD、ビデオ用DVDなどの機器・媒体に課され、対象機器・媒体の購入時にユーザーが数円~数百円を支払っている「私的録音録画補償金」。これについて、権利者側は対象機器・媒体の拡充を主張。メーカー側とユーザー側は制度自体を廃止し、代わりにコンテンツ配信1回ごとに複製の対価を支払うことを主張し、全面的に対立した。結局意見はまとまらず、中間取りまとめは両論併記とした。ただし、一部は権利者側の主張に沿う形でまとめが進んでいる。例えば中間取りまとめでは、対象機器・媒体を選定する「評価機関」を新設する方針が掲げられた。詳細はこれから詰めるが、メーカー側やユーザー側は「評価機関の委員の選定方法次第で、対象機器・媒体の追加が権利者側の思い通りに進むのでは」と警戒する。
補償金の法律上の支払義務者を現行のユーザーからメーカーに変更するという案も、権利者側の主張に沿ったものだ。現行制度では「ユーザーが私的録音録画しない場合は、補償金の返還を請求できる」と定めているが、返還額が手間に見合わぬほど少額である上、そもそもユーザーの大多数は補償金を支払っていることを知らないため、これが実質的に機能していない。こうした矛盾を解消するのが狙い。ただし、学識経験者の委員からは「支払義務者を変更すると返還制度は廃止になるが、実態としてユーザーが支払う費用から補償金がまかなわれるのは変わらない。結果としてユーザーから抗弁権を奪う形となり、憲法違反に当たるのではないか」との指摘も出ている。
中間取りまとめの全文は公表されており、国民からの意見募集が行われている(意見・情報受付締切日は2007年11月15日)。
【著作権法の改正が検討されている主な課題】
電子政府総合窓口での意見募集ページ(2007年11月15日締め切り)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=185000284&OBJCD=&GROUP=
(金子 寛人=日経パソコン 出典:日経パソコン 2007年10月22日号)
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
日経BP記事検索サービスから記事のPDFをご購入いただけます。(一部例外あり)