2015年3月21日土曜日

猫全然元気だった

全然元気だったのに
いつもとそれほど変わらなかったのに
何時間も前じゃなくて
トイレ、水、カリカリのローテーションをいつも夕方くらいから夜、真夜中、早朝、大体同じくらいの時刻に繰り返すネコだった。
深夜0時にトイレに行かせて、夜の2時くらいも
それほどいつもと変わらず

「また夜、トイレに付いて来てー」と言ってるなとうつらうつらしながら声を聞いたと思う。寝ていたのでよくわからない。聞いたのが事実なら、「いつもは起きるまでしつこいのに今日はずいぶん早く諦めたな。ご主人様達が疲れていることを察したんだなあ、頭が良い。いい子、いい子」と思ってそのまま眠りに戻っていった。
まだ太陽が昇らないうちに一度トイレに起きて、変なところで寝てるな、まっ、変な所で変な寝方をするのはネコの特徴だしな」と思って起こさないようによけて通っていった。
部屋の明かりを点ける気が珍しくせず、そのままトイレに行った。私を含め二人とも疲れていたので、電気を点けて起こしたくなかった。
トイレの電気だけ点けて何となく見てみると、目が開いていて光っていた。
「またタヌキ寝入りかー。また撫でろって言うんだろうなー」と思いながら用を足していた。動かないのでちょっと不思議だな、いつもと違うかなー、でもまあよくあることだし、ネコはその時その時、気分によってすることが違うしと思っていた。
目が光っているのが不自然に感じたが、その時は目が開いているから光っているのでむしろ安心、と思っていた。起こすとかわいそうだし、下手に首をなでたり遊んであげたりすると興奮して眠れなくなるのでこのまま無視して寝かせてあげようと思った。
「プーマのロゴみたいな寝方してーぇ。ほんとにもう」とか思っていた。

朝になっても同じところに同じ姿勢で居た。
ほんとに熟睡しているときはそういうこともあるので、なんか変だなと思いつつそのままトイレに行った。
なんとなく変だったのでトイレのドアを開けたままネコを見ていた。
「フッ(口で息を吸う)、?」ん~~?
何だか変な感じ。
目が開いてるけどこっち見ないし(絶対こっち見るので。なんとか撫でてもらおうとか遊んでもらおうとか)。どこ見てるとも言えない。
確かにネコはどこかじーっと凝視したり、ボーっと見てたりすることも多いけれど、
床のほうを見ている、すぐ近くの下側を見ていることはとても少ない。
何となく体の毛の状態もおかしい。
パサついているというか、撫でてないというか。ネコはしょっちゅう自分でグルーミングするので人間がクシかけてないような状態でいる時間は少ない。

死んでる、死んでるのでは。(たぶん間違いなく死んでる)
と心の中というか、感覚があってあわててトイレから出た。
自分の中では絶対の確信が脳に発生していたので(言葉とか理屈で考えて当然導き出される結論とかではななく、なんか感覚というか、言葉に存在しない何か、仕方ないのでとりあえず感覚)トイレから出たままの汚い手ではなく手を洗ってから触って確認したかった。
でも、頭ではそう考えても、もうどうしてもすぐに、手を洗って拭いている時間を作りたくなかった。短い時間でもそんな時間作りたくなかった。
名前を読んで触ってあげたが動かなかった。
いつもはよほど熟睡してないと近づくだけで『撫でるの♥』、『構ってくれる?♥』と頭を持ち上げるか、『撫でるの!?クビやって♥」と頭をひっくり返して喉を出すのに、身体が動かないどころか眼をこちらに動かさない。
「そんな」と思って全身を触ったがあまり温かくない。
ネコは体温が高く身体がフニャフニャで柔らかいのでいつも冬になると抱っこしたり、ヌクヌクあったまっていた。
でも冷たい。
氷のように冷たくはなかったが半分くらいの感じ。
人間の体温より冷たかった。この時点でダメだなと思った。それでもあちこち触らずにいられなかった。嫌でも確認したいし、可能性が全くないわけじゃないと言う考えが片隅に合った。
あちこち触ったが足先とか尻尾は胴体より明らかに冷たかった。でもまだぬくもりが。肉球も触ってみたが、いつもの肉まんのようなさわり心地と温かさがなく、プラスチックを触ったようなひんやりした感じがした。でもまだ室温と同じではなかった。
いつも撫でられるのが大好きな頭から胴体、尻尾、脚と触っていくと、場所によって温度のムラがあった。
あれほど柔らかくさわり心地のいいネコの毛が、もう無くなっていた。ほんの少しの違いだが水分なのか温度なのか、気持ちいい触り心地だけなくなっていた。
名前を呼んだ
「○○ー……」「○ったん」「ねこたん」「ねこ」「ねーこちゃん、あそぼ♪」「ねこちゃん」

やっと呼吸を確認した。
お腹に手を当てて息してるか注意深く感覚を鋭くした。
もう全然してない。
ネコのお腹は呼吸に合わせて上下にかなり動くが見ても全く動いてない。
まだ温かいから息してるかと思ったけどまったくなんにもしてない。まったく動いてない。顔のあたりに手を当てて注意して感覚を研ぎ澄ましてしばらく待ってみたけど息を吐いてない。

ついさっきまで元気だったのに

言葉にしたか思ったのかわからない。

何度も「そんな、さっきまで元気だったのに。具合も悪くなかったし。いつもと同じだったのに。なんで」と

実際、深夜2時までいつも通りのパターンだった。
そのあとがなかったが、自分が起きないと別の人を起こしに行くので変なことではなかった。
多分、21日土曜深夜2~5時の間に逝ってしまったんだと思う。
血も吐いてないし、なにか吐いたかと探しまわったが何もなかった。暴れた様子もないし、餌とかトイレとか水もいつもの様子。
突然死んでしまった。
もしかしたら自分自身では具合悪いと思っていたかもしれないが、恐らく自分でも死ぬとは思ってなかったと思う。
だって全くいつも通り。普通。絶好調とかでもなくいつもと同じ。

老猫は突然死ぬという書き込みを見たことが何度もあるが、「そうか」とは思っても家の末娘は関係ないと思っていた。
明らかに不調で、非常に長く体調不良だった母ネコと違い、元気、というかわがまま放題、うるっさいなあっ、もうっというのが私たちが良く口から出る言葉だった。
歩くこともできず、動物を一切飼ったことがない誰が見ても『おかしいね、ボケてるね』と最後の最後の頃は言われる状態の母ネコと違い、元気いっぱいだった。
母ネコの死亡年齢を超え、しかも母ネコの中年期より若々しい見た目、特に毛並みはすごかった。必ず若猫と間違えられた。私たちも、「なんでこの子はこんななんだろうね!?すごい(毛並みが)きれいだしね。あといつまでもうるさい。元気。もう母ネコはとっくの前からヨタヨタだったのに。子猫のままなのかね!?」とよく言い合っていた。

すごい怖がりで、若いころは私たちのところで生まれ育ったのにもかかわらず逃げてばかり、狂乱状態で仕方ないのでご飯を食べさせるときは用意して、人間が皆、遠く、長い時間近づかないと思わせ安心させるように毎回苦労していた。
中年か中高年になってからは遠慮がち?あるいはビクビクしながら頭をなでてもらったり身体をなでてもらったりするようになった。しかし明らかに緊張していて筋肉がすごい硬く微動だにしない、顔も緊張して顔の表情も硬く全く動かず変化しなかった。
すごく時間がかかったけれど(1年とかの単位ではなく3、4、5~7、8年)緊張しながらも甘えてくるようになった。
この猫は他のネコと違い、ゴロゴロ音を出さないネコだとずっと思っていたら、何年も経ってからゴロゴロを出していることに気付いた。やっとかなり慣れてきて頭をネコに付けても一応大丈夫になって、耳をお腹に付けてみたら「ゴロゴロ」と音が出ていた。これはもう全員ビックリ。『ホント!?』と聞かれ、信じてもらえなかった。
耳が胴体にくっついてないと聞こえないくらい小さなゴロゴロを出していたのだ。

どれくらい経った頃か、そのうちすごい甘えん坊になった。人間(や他のネコ)を怖がるのは残っていたが、ちょっと動くと、首、アゴ、背中、そして特に頭をなでてもらいたがった。さらに特に大好きだった耳の内側を掻(か)いてもらうのが大好きで、一日中人の指を見ると耳を突っ込んできて撫でさせた。さすがに疲れてやめると、自分で頭を動かして耳の気持ちいいところをずっとやっていた。

甘えまくり

怖がりつつも甘えまくりで、特に私のことをじーっと観察(?)していることが多かった。ネコが寝ているとき以外はほとんど監視という感じ?
風呂に入ってもパソコンやってても食事してても離れた所からじーっと見ている、視線がくるのよ。ナンか。
ドアとか柱の陰に半分隠れて、半分出た状態で、片目で観察しているネコの好きな監視もしょっちゅうしていた。
歳がかなりいった最近は歩く時もすーっと足にまとわりついて蹴ってしまうこともあった。「だーから言ったでしょ、バカネコだね。ほら、もう少し離れてなさい」が皆の口ぐせだった。
よそのネコと違い、箱とか買い物袋、おもちゃには全く興味がなく、ためしに楽しみに用意してみてたら一切興味がなく一度も遊ばなかった。ちょっとがっかりしたがそれぞれだから特に気にしない。
家の他のネコと違い布団に入ってくることもなかった。人が寝ていなければ潜って寝てたり、タオルとか敷物の下に頭を突っ込んでいって潜ったりして冬寝ていた。
歳とってから、年に何度か、特別に寒い冬の夜に布団に入ってくることが起きるようになった。この猫が布団に入ってくることはないと思っていたので寝返りを打つときとかにすごくびっくりさせられた。何があるのか、最初わからなくて。布団に絶対入ってこないネコだったからネコだと思わなくて。
去年から今年は入ってこなかった。

介護で泊まらせているときに死ぬなんて。
帰ってきたらなんて説明しよう。
もう母ネコと娘の区別もつかないというか娘というのがいるのを忘れているというか。
まあ母ネコが死んだ時も何も感じてなかったので大丈夫だと思う。

あんなに元気だったのに。
直前までいつもと同じだったのに。
心臓発作とか脳梗塞とかだろうか。

もう夕方4時くらいには完全に冷たくなって、硬くなっちゃって。
あんなに柔らかかった耳が、あんなに硬くなるなんて。全然動かない。
抱くと重いし。
抱き上げるとしっぽまでそのままの形。尻尾も死後硬直するんだ、って。悲しくって
あんなにシッポで人にいたずらするネコだったのに、しなやかなシッポがまさか死ぬと針金みたいに固まるとは思わなかった。知らなかった。悲しい。

悲しくてしょうがないけど、ショックのほうがでかくて混乱している。
悲しさにすべて向かいたいけどその後のネコちゃんの対処や処理も準備していかなくっちゃならないので浸れない。そのほうがいいのかもしれないけれど。
母ネコは死ぬのがわかっていた。
しかも、誰もが口にしなかったが安楽死も考えていたほど長く、苦しんでいた。
この猫は歩けるしヨタヨタじゃないし、食事もトイレも普通、声は張り上げるし毛並みはふさふさ、つやつやで若猫と間違われる元気いっぱいだった。
病気のネコはつらいと思っていたけど、死ぬような兆候が全くなく突然死なれると、想像していなかったつらさと強烈なショック(多分それは悲しみも含まれているがあわただしさと驚き、ショックでよくわからない。混乱)がある。打ちのめされているのかもわからない。


老猫