マイクロソフト、液晶方式に代わる画期的な次世代ディスプレイの開発に成功
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200807252109
【Technobahn 2008/7/25 21:09】マイクロソフトの研究グループが液晶ディスプレイよりもエネルギー効率が高く、一つの画素で無段階のグレイスケース表現が可能な新方式のディスプレイの開発に成功していたことが21日、学術専門誌「Nature Photonics」に掲載された論文によって明らかとなった。
この研究発表を行ったのは米ワシントン大学のアンナ・ピヤイト(Anna Pyayt)さん(博士課程在学中)を中心とするマイクロソフトの基礎研究グループ。
既存の液晶ディスプレイの場合、液晶素子の向きを変えることで光源の光りに変化を加えて、画像を表示する。そのため、液晶素子を通過できる光りの総量は全体の10%程しかなく、残りの90%のエネルギーは無駄に消費されてしまっていた。
ピヤイトさんはエネルギー効率を高める方法として反射望遠鏡の原理を使うことを思いついた上で、マイクロソフトの研究者と共同でディスプレイの1ピクセルごとに微細な反射鏡をディスプレイ面に配置した特殊な半導体素子を開発することに成功。この新方式のディスプレイを「テレスコーピック・ピクセル(telescopic pixel)」方式と命名した。
テレスコーピック・ピクセルは中央に穴の開いたプライマリーミラーと、プライマリーミラーの後ろ側に隠れたプライマリーミラーの穴と同じ大きさを持つセカンダリーミラーで構成。テレスコーピック・ピクセルは電荷がかけられていない状態ではフラットで、バックライトの光りは遮られて黒として表現。しかし、電荷がかかるとプライマリーミラーは凹面レンズ状に変形。プライマリーミラーとセカンダリーミラーはちょうど、カセグレン式反射望遠鏡の構造のようになり光を反射することで、ディスプレイとしての構造を果たすようになるというもの。
研究グループではこの方式の場合、試作品の段階で既にバックライトの光りの36%を使用することに成功。更に技術開発を進めた場合にはバックライトの光りの使用率を75%にまで高める画期的なディスプレイの開発も可能だと述べている。
テレスコーピック・ピクセル方式の応答速度は1.5ミリセカンドで、液晶ディスプレイの6倍もの速度を得ることができるといった特徴も併せ持つ。
反射鏡を使うことではテキサス・インスツルメンツ社が開発を行ったDLP方式と似ているが、DLPは反射鏡の向きを変えることで、光りのオン、オフの制御しかできないといった欠点を持つ。テレスコーピック・ピクセル方式の場合、電圧を制御することでプライマリーミラーの反射角度に変化を付けて無段階でグレイスケール表現を行うことも可能となるなどの既存のディスプレイにはない大きな利点も持つことになり、既にこの研究発表は次世代ディスプレイの基本技術になるのではないかと、業界関係者から大きな関心を集めている。
テレスコーピック・ピクセルは既にマイクロソフトによって特許出願済み。