2008年7月11日金曜日

著作権団体TV録画不可を主張『こじれたのはJEITAの態度が頑なだから。もはや我慢の限界に来た』

産業動向オブザーバ
「パンドラの箱を開けてしまったようだ」,大荒れの私的録音録画小委員会
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080710/154659/

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2008/07/10 22:16

 文化審議会 著作権分科会傘下の私的録音録画小委員会の今期第3回会合が2008年7月10日に開催された。最後に「今日はパンドラの箱を開けてしまったようだ」と主査の中山信弘氏が振り返った今回の会合は,各委員がそれぞれの立場からの主張を繰り返し,合意に至る道筋は見えないままだった。

 当初は2008年5月末に開催される予定だった第3回会合は,同年5月8日の第2回会合で文化庁が提示した私的録音録画補償金制度の改定案(Tech-On!の関連記事1)で合意する見通しが立たなかったため延期されていた。事務局は今回の会合に新たな改定案を提出することはせず,改定案に対して寄せられていた質問に回答するかたちで意図を詳しく説明した。

 併せて,2008年6月17日に明らかになった,Blu-ray Discレコーダーを私的録音録画補償金制度の対象機器に加えることで経済産業省と文化庁が合意したこと(Tech-On!の関連記事2)についても説明した。「Blu-ray Discのレコーダーと媒体は,現行法の対象となっている分離型の機器である。補償金制度の対象に加えることを,この小委員会での抜本的な見直しの議論とは切り離して考えていた。政令指定の時期は見直しの議論と合わせようとしていたが,(合意できない状況が続いているため)現在はBlu-rayを政令指定で加える作業を先行して進めている」(文化庁 著作物流通室長の川瀬真氏)という。

 かねて「権利者団体からの公開質問状にはこの小委員会の場所で回答したい」と説明してきた電子情報技術産業協会(JEITA)は,今回の会合で文化庁案に対する見解を説明した。JEITAは2008年5月30日に,HDDレコーダーや携帯型音楽プレーヤーを新たに補償金の対象に追加する文化庁案を受け入れられないとする声明を発表していたが(Tech-On!の関連記事3),改めてその根拠を説明した。

 主査の中山信弘氏が「これで関係者の意見が出そろった」として始まった委員による議論は大いに荒れた。途中,情報通信審議会傘下の委員会での過去の議論に話が及び,中山氏が「他の委員会での議論をここで蒸し返すのではなく,もっとこの小委員会らしい議論をしよう」とたしなめる場面もあった。

消費者の委員が文化庁案に反対


 消費者の立場で参加する委員は,文化庁案での合意に難色を示した。IT・音楽ジャーナリストの津田大介氏は「消費者の立場からすれば,『DRMがかかっているなら補償金なし,DRMがかかっていないなら補償金あり』という2択だろう。今回の文化庁案に消費者の意見は何も通っていない。ダビング10だってそれほど便利になるわけじゃない。それならば『どうぞコピー0回にしてください。それで本当に困るのはあなた達です』と言いたい。映画が『コピー・ネバー』だと主張するならテレビ放送に流さなければいいし,音楽CDのコピーが問題ならコピーができない媒体に移行すればいい」とした。また主婦連合会の河村真紀子氏は「今回の提案で評価できるのは,補償金を将来は縮小・廃止する方向で,音楽CDと地上テレビ放送に限ると示したこと。しかし,個人がすることの自由を奪わないことが必要。ダビング10で運用している地上デジタル放送の録画は補償金が不要だろう。本当に問題になっているのは『友達から借りたCDをiPodにコピーする』といった利用なのだから,それについて考えるべきではないか」とした。

「議論が振り出しに戻ってしまった」

 権利者団体の委員らは「JEITAの主張が議論を始めた2年前と何も変わっていない」と主張した。例えば日本音楽作家団体協議会の野方英樹氏は「議論がこじれたのはJEITAの態度が頑なだからだ。JEITA内部には理解がある人もいると漏れ聞こえてきたので期待していたが,もはや我慢の限界に来た。なぜ権利者だけが我慢を重ねなければならないのか」とし,実演家著作権隣接センターの椎名和夫氏は「我々は議論を先に進めるために,なるべく静観してきたつもりだ。そして,インターネットでの有料配信や,(パソコンなどの)汎用機器には補償金をかけないという極めて大きな譲歩もした。今日のJEITAの主張は2年前と同じであり,まったく進歩していないことを自ら開陳したことになる」と批判した。加えて椎名氏は,「もう補償金の支払義務者をメーカーとする方向で検討するべきではないか」という抜本的な見直し案も提示した。

 小委員会に参加する識者からは,「議論を前進させるために妥協が必要ではないか」といった意見があった。弁護士で中央大学法科大学院の松田政行氏は「両極端な意見を主張し続けていても議論はまとまらない。JEITAの資料は昔と同じで,議論の最初に戻ってしまった。すべてを『コピー・ネバー』にする状況にはならないのだから,何とかこの小委員会でまとまるような意見を出すべきではないか」と苦言を呈した。また駒澤大学の苗村憲司氏は,「もう決定すべき時期に来た。原点に戻るのはやめよう。双方に不満があることは分かり切ったことなのだから,今回はこのあたりで手を打って,新しい技術や手段の開発に目を向けるべきではないか」とした。

 次回会合の開催日は決まっていない。
竹居 智久=日経エレクトロニクス