女性は記憶障害に強い? ホルモンが脳血流改善
http://www.47news.jp/CN/200904/CN2009041001000070.html脳梗塞や老化などによって生じる記憶障害に対し、女性ホルモンのエストロゲンが脳の血のめぐりを良くして記憶を改善するように働くことを、理化学研究所の山田真久ユニットリーダーらが解明し10日、米科学誌に発表した。
女性の脳は男性より記憶障害に強い可能性を示す成果。脳機能障害の改善薬開発につながる可能性があるという。
チームは、脳の血管を拡張するように働く遺伝子を持たない雄、雌両方のマウスをつくり観察したところ、雄では血管が収縮して血流が減少し、記憶や学習を調べる実験でも正解率が低下した。
一方、雌ではこうした異常がなかったことから、チームはエストロゲンに着目。雄にエストロゲンを投与すると、血管が広がり血流が増え、正解率も改善したという。
この遺伝子を持たない雄では、脳の神経細胞のすき間を埋める細胞「アストロサイト」が膨張した結果、逆に神経細胞の突起が萎縮してしまい、記憶障害を起こすことも判明。チームは、エストロゲンの投与で血流が増えるとアストロサイトが戻り、記憶が改善したとみている。
山田さんは「人でもさまざまなストレスで神経細胞が縮む可能性があり、エストロゲンが多い女性の方がストレスに強いのかもしれない」と話している。
2009/04/10 09:02【共同通信】
アレルギー増に関連か PCBなどの環境ホルモン[2007年5月]
ホルモンが動脈硬化を抑制 酵素が関係と名大チーム[2006年6月]
サプリで摂取は30mg目安 大豆イソフラボン[2005年12月]
飲酒で乳がんの危険3倍 女性ホルモン増え[2004年9月]
卵巣がんの発症率2倍に エストロゲンの単独投与[2002年7月]
もっと知りたい ニュースの「言葉」
エストロゲン(1997年1月4日)主に卵巣から分泌され、妊娠時に母体の変化を引き起こしたり、月経周期の成立を媒介するほか、子宮筋の発育などにも作用するため「女性をつくるホルモン」といわれる。 経口避妊薬に含まれており、こうした薬の使用や、エストロゲンを含む乳製品の消費の増加、エストロゲン化合物の製造の増加などにより、胎児がエストロゲンにさらされる機会が増えた、と英国とデンマークの共同研究チームは指摘している。 しかし、エストロゲンが実際に精子形成能力に、どのような影響を与えるのかについては未解明な点が多い。(共同)
女性は記憶障害に強い?=ホルモンが脳血流改善-理研
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009041000140女性ホルモンのエストロゲンが脳血管を拡張し、記憶障害を改善する機能を持つことが、理化学研究所の研究チームによるマウスを使った実験で明らかになった。老化や動脈硬化による記憶障害を予防したり、改善したりする薬の開発に役立つことが期待される。10日付の米科学誌「PLoS ONE」に論文が掲載された。
理研脳科学総合研究センターの山田真久ユニットリーダーらは、遺伝子の欠損により脳の血管を拡張させるたんぱく質を持たないマウスのうち、オスだけが脳の血流が減少し、記憶障害を起こすことに着目。同じ遺伝子を欠損していても、メスの脳ではエストロゲンが代替機能を果たしていることが分かった。
さらに、脳血流の減少で記憶障害を起こしたマウスの脳は、神経細胞の数が減るわけではなく、神経細胞同士のつながり(シナプス)が減少するだけだったことも判明。オスでもエストロゲンの投与によりシナプスが増え、記憶障害が改善した。(2009/04/10-09:34)
サイエンスニュース
オスの記憶障害が女性ホルモンで改善 - 理研がメカニズムの一部を解明
http://journal.mycom.co.jp/news/2009/04/10/053/2009/04/10
理化学研究所は4月10日、女性ホルモン「エストロゲン」がオスの記憶障害を改善する分子メカニズムの一部を解明したと発表した。同研究所の脳科学総合研究センター山田研究ユニットの山田真久ユニットリーダーおよび北村尚士テクニカルスタッフを中心とするグループによる研究成果。
研究には特定の遺伝子を持たないマウス(遺伝子組み換えマウス)を利用した。遺伝子が欠けているために、このマウス(遺伝子欠損マウス)は特定の神経伝達物質(アセチルコリン)を取り込めずに脳の血液循環が悪化し、神経細胞が委縮し、記憶学習能力が低下する現象が生じる。ただし、この異常は遺伝子欠損マウスでもオスだけに起こり、メスだと、脳血液循環が悪化しない。
山田研究ユニットは、オスとメスで生じたこの差異が、女性ホルモンであるエストロゲンの作用によるものと考えた。すなわちエストロゲンが特定の神経伝達物質と同じ働きをすると仮定した。
そこで遺伝子欠損によって脳の血液循環が低下しているオスのマウスに、エストロゲンを投与。具体的には、エストロゲンのタブレットを外科手術によって皮下に埋め込んだ。タブレットからは一定量のエストロゲンが持続的に放出され、脳神経に到達する。エストロゲンを投与したマウスを3週間後に調べたところ、脳血管が拡張して循環機能が改善され、神経細胞の委縮が正常に戻るとともに、記憶学習能力が回復することを確認できたという。
実験の手順とマウスの脳のMRA(磁気共鳴血管造影)像。脳底動脈がエストロゲンによって拡張していることを確認した
なおエストロゲンが動脈硬化の改善に効くことは、以前から知られている。ただし男性の女性化や乳癌リスクなどの副作用があり、動脈硬化の治療にはエストロゲンは使われていない。今回の研究研究は、副作用の少ない脳機能改善薬の実現につながると期待される。
エストロゲン:記憶力改善の効果--理研が発見
http://mainichi.jp/select/science/news/20090408k0000m040141000c.html女性ホルモンのエストロゲンに、脳の血管を広げて血流を増やし、記憶や学習の能力を改善させる効果があることを、理化学研究所(理研)がマウス実験で発見した。老化に伴い、血流が減って起こる記憶障害の予防や治療薬の開発につながる成果で、10日付の米科学誌プロス・ワンに発表した。
研究チームは、遺伝子操作で慢性的に脳の血流量が減少するマウスを作った。すると、エストロゲンを分泌する卵巣を切除した雌と雄だけ、神経細胞の周囲にあるアストロサイトという細胞が膨張して、神経細胞同士のつながりを邪魔し、記憶障害が起きた。
また、遺伝子操作で血流が減った雄に、正常な雌の分泌量と同程度のエストロゲンを投与すると、脳の血管が拡張して血流が回復した。
理研の山田真久ユニットリーダー(神経生物学)は「アストロサイトの膨張を防ぐ薬を開発できれば、脳機能の改善に役立つのではないか」と話す。
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脳の血行障害、女性ホルモンが予防 理研が発見
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090410AT1G1000P10042009.html動物のメスの体には脳の血行障害を予防する仕組みが備わっていることを、理化学研究所のチームがマウスで見つけた。老化などで脳の血管が縮む異常に見舞われても、女性ホルモンが血管を広げて血流量が減らないようにしていた。脳の血行を促し、記憶障害の治療薬につながる可能性があるという。米科学誌の電子版「プロスワン」に10日、掲載される。
神経伝達物質にかかわる遺伝子が壊れ、脳の血管が縮みやすくなったマウスのオスでは血流量が2―3割も減るのに、メスは正常だった。研究チームは卵巣が出す女性ホルモン「エストロゲン」に注目。血行障害のオスに女性ホルモンを埋め込むと、血管が広がり、血流の減少を食い止めるという。(12:51)
「メスはオスより記憶障害に強い」 理研、マウス実験
http://www.asahi.com/science/update/0410/TKY200904100134.html2009年4月10日11時57分
メスはオスよりも記憶障害に強い――。こんな研究成果を、理化学研究所脳科学総合研究センターのチームがマウスの実験で示した。女性ホルモンの「エストロゲン」が脳の血液循環をよくして、短期記憶能力を改善する働きをしているという。9日付の米科学誌プロスワンに発表した。
チームは、神経の情報伝達にかかわるアセチルコリンという物質を働かなくさせ、血液循環の悪いマウスをつくって、脳への影響を電子顕微鏡などで解析した。
すると、オスは血流の低下とともに、脳の神経細胞の間を埋めている細胞が膨張して、神経細胞の突起が萎縮(いしゅく)。迷路を使った短期記憶のテストをしたら、学習能力が落ちていた。ところが、メスには異常が現れなかった。
チームは、メスの卵巣から出るエストロゲンがかかわっているのではないかと推測。脳の血流の低下で記憶力が落ちたオスにエストロゲンを投与したところ、血流が戻り、神経細胞の突起の萎縮も回復。迷路のテストの結果も、通常のレベルに戻った。
同研究センターの山田真久ユニットリーダーは「女性の脳は生まれながらにして環境変化に強いことを示している。神経の突起の萎縮が起こるしくみなどを解明して、脳機能を改善させる薬の開発に役立てたい」と話す。(佐藤久恵)
理化学研究所、女性ホルモン「エストロゲン」の記憶改善効果の機能を解明
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=217591&lindID=4女性ホルモン「エストロゲン」の記憶改善効果の一端を解明
-慢性脳循環障害の遺伝子改変で性差、女性の脳は男性より記憶障害に強い-
◇ポイント
・脳循環障害モデルマウスは、脳血管の破壊や梗塞なしに脳アストロサイトが膨張
・アストロサイトが膨張した脳組織は、神経突起が萎縮しシナプスが減少
・エストロゲンはアストロサイトの膨張を抑制し、記憶学習機能を回復
独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、女性ホルモンであるエストロゲン(※1)が、脳血管を拡張し脳循環を回復することで、記憶を改善する機能を発揮するという、分子メカニズムの一端を解明しました。理研脳科学総合研究センター(利根川進センター長)山田研究ユニットの山田真久ユニットリーダーと北村尚士テクニカルスタッフらによる研究成果です。
慢性脳循環障害を引き起こすアセチルコリン(※2)受容体遺伝子欠損マウスを、電子顕微鏡画像などで解析したところ、脳循環(脳の血液循環など)が低下すると、脳血管の破壊や梗塞(こうそく)が起きていなくても、脳アストロサイト(※3)の膨張や神経突起萎縮(いしゅく)を引き起こすことが分かりました。ところが、このような異常は、オスの遺伝子欠損マウスだけで観察され、メスの遺伝子欠損マウスでは、野生型マウスと違いがありませんでした。この性差に着目し、卵巣から放出されるエストロゲンの作用を調べたところ、エストロゲンがアセチルコリンと同様に脳血管拡張効果を持ち、脳血管拡張機能を代償していることが分かりました。そこで、オスの脳循環障害マウスにエストロゲンを投与したところ、脳アストロサイトの膨張や神経突起萎縮の症状が回復し、記憶学習能力も改善していることが判明しました。
本研究の成果は、アセチルコリンとエストロゲンが共に脳血管の拡張効果を持ち、共通のメカニズムで記憶改善に働くことを示しました。特に、神経突起の萎縮が可逆的に改善できたことは、脳血管の拡張メカニズムが、予防的な薬だけではなく、発症後の機能改善に役立つ薬の開発のターゲットとなりうると期待できます。
本研究成果は、米国のオンライン科学雑誌『PLoS ONE』(4月10日付け:日本時間4月10日)に掲載されます。
1.背景
アセチルコリンの受容体には、ニコチン性(※4)とムスカリン性(※5)の受容体があり、それぞれ発現する組織や受容体機能が異なることが知られています。中枢神経系のムスカリン性アセチルコリン受容体を介した神経伝達経路は、脳高次機能発現に対して主要な役割を担っていると考えられています。ムスカリン性アセチルコリン受容体には5種類(M1-M5)のサブタイプがありますが、完全なサブタイプ特異的なリガンドがなく、種々の神経組織で各受容体が共発現していることから、サブタイプ特異的な生理機能は不明のままでした。この問題に取り組むために、研究ユニットは各ムスカリン性受容体(M1-M5)遺伝子欠損マウスを作製し、個体解析を行ってきました。
脳内のM5受容体タンパク質発現量は、全ムスカリン発現量の2%にしかすぎないことが知られており、脳血管内皮細胞に顕著に発現しています。山田ユニットリーダーは、これまでに、アセチルコリンによる動脈の拡張能力が、M5受容体の遺伝子欠損マウスの脳底動脈で完全に消失していることを見いだし、アセチルコリンの血管拡張作用がM5受容体に依存していることを明らかにしています(PNAS 98:14096-14101,2001)。また、オスのM5受容体遺伝子欠損マウスは、この恒常的な脳血管の収縮により、脳底動脈や中大動脈などの動脈で、脳血流量が野生型マウスに比べて約20~30%減少していました(Neurobiol Dis.24:334-344.,2006)。このマウスでは、脳血管の破壊や梗塞(こうそく)による細胞死や、血液成分の脳組織内への侵入がない状態で生じる脳内変化を観察することができます。このマウスは、血管の結紮(けっさつ:糸結び)などといった手術を用いない、新規の脳循環障害モデルマウスといえます。
*詳細は、関連資料を参照してください。