(4/20)LEDや有機ELはエコ照明失格?――素子は開発途上
http://eco.nikkei.co.jp/news/today/article.aspx?id=MMECn2000019042009住友化学が開発したLEDパネル(120センチ×30センチ)
(クリックすると拡大します)
有力な次世代照明器具の省エネ効果は疑わしい――。15~17日に東京ビッグサイトで開催された第1回次世代照明技術展(ライティングジャパン)で、白色発光ダイオード(LED)と有機エレクトロルミネッセンス(EL)の発光効率が、それぞれ蛍光灯と白熱電球並みにとどまりそうなことがわかった(※)。価格面で現行の照明に比べて不利なため、普及にブレーキがかかる恐れもある。
パネルの縮小サンプルを手にする飴川睦英さん
(クリックすると拡大します)
■LED、携帯用カイロのように暖かく
LED照明の試作品を出展したのは住友化学。120センチ×30センチのパネルには200個の白色LEDを組み込んだ。消費電力は40ワット。いかにも目に優しそうな柔らかな光が出ているが、明るさは40ワットの蛍光灯とほぼ同じ。パネルの背面を触ると、携帯用カイロのように暖かい。投入した電力が光にならず、熱として逃げている証拠だ。
説明員の飴川睦英さんは「パネル部材の改良で効率を2割ほど改善する余地はあるが、根本的にはLED自体の発光効率が上がらないと、蛍光灯を超えるものにはならない」と言う。40ワットの蛍光灯の価格は1000円程度。LED製品(発売時期未定)はその50倍にあたる5万円程度の予定だ。寿命は蛍光灯の約5倍はあるものの、割高感は否めない。
■有機EL、明るさの割りに多い消費電力
ルミオテックが開発した有機ELパネル(15センチ×15センチ)
(クリックすると拡大します)
一方の有機EL。山形大学大学院の城戸淳二教授らの研究成果をもとに、三菱重工業やロームなどが設立したルミオテック(山形県米沢市、重永久夫社長)が、15センチ×15センチのパネルを展示した。10月からサンプル出荷を始める製品と同じ仕様だ。価格は5万円。3年後には量産効果により、10分の1に引き下げる計画だが、割高感はLED以上といえる。
パネルを手に説明する刎本昌文さん
(クリックすると拡大します)
有機ELはLEDよりは暗いが、暖かみのある光が持ち味だ。しかし、パネルの背面はLEDに負けず劣らず熱を帯びている。自然な色を出したり、寿命を延ばしたりするために素子が厚めになっている分、明るさの割りに消費電力は多いからだ。説明員の刎本昌文さんは「現時点での発光効率は白熱電球とそう変わらないので、材料や製法を改良して効率を上げたい」と言う。
■「エコ照明」にはブレークスルー必要
これら次世代照明はパネルが薄くて軽く、デザインの自由度が高いという長所があり、店舗や住居で多彩な用途が期待されている。企業に省エネ対策を促す改正省エネ法が4月から施行され、次世代照明市場には追い風が吹いている。しかし、使われている素子はまだ開発途上だ。地球に優しい「エコ照明」として定着を目指すならば、技術面で一層のブレークスルーが必要となるだろう。
※投入した電力に対する明るさは、ワット当たりのルーメン(lm/W)という単位で表される。蛍光灯はこの数字が約100で、白熱電球は約20。
[2009年4月20日/電子報道部解説委員・池辺 豊]