仕様面での優位性
DisplayPortにはいくつもの特徴がある。高いデータ伝送容量を備える、外部インターフェースとしてだけでなく
機器内部のインターフェースとしても利用できる、
コネクタが小さいといったことだ。
また、HDMIの利用に当たっては知的財産権の使用料が発生するが、DisplayPortにはそれがない。
色深度はRGB(赤、緑、青)の各チャンネルごとに最大16ビットである。ディスプレイ画面の最高解像度はWQXGA(Wide Quad Extended Graphics Array)、すなわち2560×1600画素をサポートする。リフレッシュ速度は最大120Hzである。
TMDSでは、例えば18ビットのカラーディスプレイの場合、データの伝送に6対の差動線、クロックの伝送に2対の差動線を使うので、ワイヤーの本数は16本になる。24ビットのカラーディスプレイでは、ワイヤーの数は20本に増える。
それに対し、DisplayPortでは、1レーンだと補助チャンネルを含めてもワイヤーの数は4本しかない。
今後、インターフェースがインテリジェントになっていくといいと思う
たとえばキャリブレーションで色合わせや輝度など調整している業界や個人もいるが、ディスプレイ側で輝度や色の鮮やかさが最大、ガンマも調整していながら、グラフィックカード側ではsRGBやAdobeRGBに合わせてガンマカーブや輝度、彩度を2重にかけている
副作用が大きい
2重にかけるよりディスプレイの表現域をPCが把握できるようにし、ディスプレイの機能そのものをコントロールして、それで制御しきれない分をグラフィックカードのドライバーで補完して修正するほうがトーンジャンプなど色化けが減る
それにたとえばゲームを開始したときはPCが自動で倍速表示をオフにして遅延を遅くしたり、DVDやBDなど映画を見始めれば倍速表示でなめらかに、そしてバックライトを明るくするなど直接制御できるようになればそのディスプレイの一番いいところを引き出せるようになる
こうなればいいと思う
DisplayPort活用の肝は「ブリッジ機能」の実現
http://www.ednjapan.com/issue/2008/11/u0o686000000ygz9.htmlHDMI/DVIへの変換の仕組みはどうあるべきなのか
[2008年11月号]
高速デジタル映像信号規格であるDisplayPortが普及しようとしている。同種の既存規格であるHDMIやDVIなどとの共存は避けられない状況だ。これらの規格を効率良く共存させる設計技術が必要となる。
By Abdullah Raouf 米Pericom Semiconductor社
共存する複数の規格
パソコン用ディスプレイ関連の共通技術規格を策定している業界団体VESA(Video Electronics Standards Association)は、デジタルディスプレイ用の映像信号規格であるDisplayPortを策定した。これは、既存のデジタルディスプレイインターフェースであるHDMI(High-Definition Multimedia Interface)とDVI(Digital Video Interface)を置き換えることを狙ったものだ。
実際、DisplayPortはHDMIやDVIの改良版として策定された。ただし、それだけではすでに利用されているHDMIやDVIなどを置き換えられるものとはならない。もちろん、一部の用途においては、DisplayPortは技術的にもコスト競争力の面でも優れたものだと言える。例えば、パソコンのモニターディスプレイでは、急速にDisplay Portへの移行が進むだろう。
それに対し、デジタル家電分野では、HDMIが広範な採用実績を有する。従って、DisplayPortを採用する機器を設計するとしたら、HDMIを搭載した民生機器との接続性も確保しなければならないため、複数のディスプレイインターフェースをサポートしなければならないことになる。そうした機器では、システムを複雑にせず、コストをあまり上乗せしなくて済むように、ディスプレイインターフェースの変換機能、すなわちブリッジ機能を持たせることが重要である。
では、具体的にはそのブリッジ機能はどのように実現するのがよいのだろうか。本稿では、この問いに対する1つの解を提示したいが、まずはそもそもDisplayPortを採用することで得られるメリットについて論じることにする。
仕様面での優位性
DisplayPortにはいくつもの特徴がある。高いデータ伝送容量を備える、外部インターフェースとしてだけでなく機器内部のインターフェースとしても利用できる、コネクタが小さいといったことだ。また、HDMIの利用に当たっては知的財産権の使用料が発生するが、DisplayPortにはそれがない。コストの負担がディスプレイ側ではなく、ビデオ/グラフィックスのソース側に生じるところにも特徴がある。
DisplayPortの物理的な仕様は、次のようなものになる。まず、1対の差動信号により、信号伝送の1レーンが構成される。1レーン当たりの伝送速度は最大2.7ギガビット/秒である。4レーンを1本のケーブルにまとめるので、ケーブル当たりの伝送速度は最大10.8ギガビット/秒となる。なお、クロックは信号に埋め込んで伝送される。
色深度はRGB(赤、緑、青)の各チャンネルごとに最大16ビットである。ディスプレイ画面の最高解像度はWQXGA(Wide Quad Extended Graphics Array)、すなわち2560×1600画素をサポートする。リフレッシュ速度は最大120Hzである。
DisplayPortの特徴の1つに、補助チャンネルのサポートがある。補助チャンネルは双方向の信号伝送チャンネルであり、伝送速度は最大1メガビット/秒。VESAのEDID(Extended Display Identification Data)規格およびMCCS(Monitor Control Command Set)規格に準拠したリンク管理とデバイス制御に利用する。この双方向信号チャンネルにより、ディスプレイ側は受信した信号のジッターや符号(シンボル)間干渉(ISI:Intersymbol Interference)が大きい場合に、ホストに対してより高い品質の信号出力を要求することができる。ディスプレイと信号源の間で直接フィードバックをかけるという、この独特な技術により、信号源側でプリエンファシスのかけ方を自動的に調整できる。また解像度、リフレッシュ速度、色深度に対して、システムが自動的に微調整を行うことが可能である。ビデオアプリケーションやゲームアプリケーションは絶えず進化しているが、DisplayPortはその進化に対応する余地を備えていると言える。
DisplayPortは、ノート型パソコン内部のディスプレイインターフェースにも利用できる。従来のノート型パソコンでは、ディスプレイの物理インターフェースにTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)を使っていることが少なくない。TMDSでは、例えば18ビットのカラーディスプレイの場合、データの伝送に6対の差動線、クロックの伝送に2対の差動線を使うので、ワイヤーの本数は16本になる。24ビットのカラーディスプレイでは、ワイヤーの数は20本に増える。それに対し、DisplayPortでは、1レーンだと補助チャンネルを含めてもワイヤーの数は4本しかない。4レーンでも補助チャンネルを含めて10本のワイヤーで済む。
コスト面での優位性
DisplayPortにはコスト面の特徴もある。ディスプレイコストの低減を主眼に置き、VGA(Video Graphics Array)ディスプレイで利用されたのと同様の直接駆動方式を採用しているのである。ビデオ信号源回路にディスプレイの駆動回路を集積するので、ディスプレイ側にスケーリング回路を載せる必要がない。このことは、5~10米ドルのコスト削減につながる。またスケーリング回路が存在しないということは、液晶モニターの薄型化に寄与できることを意味する。モニターの厚みを12.7mmにまで薄くできるのである。
企業向けパソコンシステムではモニターよりもパソコン本体に予算を多く投じる。そのため、モニターのコスト削減には意味がある。パソコン市場では、グラフィックスICのベンダーがDisplayPortの採用に積極的だ。具体的には、米Intel社、米AMD(Advanced Micro Devices)社、米NVIDIA社などがDisplayPort対応のICを開発している。それに対し、家電製品では価格の高い液晶ディスプレイに需要が集まるので、HDMIのようなインターフェースを組み込みやすい。パソコンの場合とは逆に、本体側であるDVDレコーダやデジタルスチルカメラなどは、価格が抑えられる傾向にある。
ディスプレイインターフェース対応ICを開発する立場で微細化との関係を見ると、DisplayPortにはもう1つの優位性がある。それは、微細化によって電源電圧の低下がもたらされることだ。
例えば、45nmプロセスでは、I/O部の電源電圧は2.5V以下であることが望ましい。しかし、HDMIとDVIはTMDS技術を採用しているので、高速信号の伝送には3.6V、低速のサイドバンド信号の伝送には5.25Vの電源電圧を必要とする。すなわち、45nmプロセスのICにTMDS技術のインターフェースを搭載するには、独自の回路設計と製造プロセスを組み合わせねばならず、製造コストが増大してしまうのだ。
それに対し、DisplayPortであれば、標準的な45nmプロセスを採用してICを開発することが可能である。DisplayPortでは、電源電圧が2Vを超えないからである。
ブリッジ機能の実現方法
図1 効率的なブリッジ機能の実現方法
ほぼ同じ用途に向けた複数の技術規格が存在する場合、その中のどれが市場で標準的な地位を占めることになるかをあらかじめ見極めるのは難しい。DisplayPortが優位性を発揮する用途は確かに存在するが、それでもHDMIとDVIの普及状況を考慮しながら導入を検討する必要がある。
かつて、グラフィックス分野では、AGP(Accelerated Graphics Port)が標準的なグラフィックスインターフェースとして用いられていた。高速入出力インターフェース規格のPCI(Peripheral Component Interconnect) Expressが登場した当初は、AGPのインターフェースをPCI Expressのインターフェースに変換するブリッジICを使ってPCI ExpressボードとAGPグラフィックスICを接続していた。その後、PCI Expressが普及すると、今度はPCI ExpressをAGPに変換するブリッジICが市販されるようになった。これと同様のことが、DisplayPortとHDMI/DVIに関しても起こり得る。
45nmプロセスのグラフィックスICでDisplayPortの利用が広まると、DisplayPortをHDMIおよびDVIに変換するブリッジ機能が必要になる。このブリッジ機能は、グラフィックスICとは別のブリッジICとして実現するという考え方が妥当だと言える。デジタルインターフェースは物理層と論理層で構成され、両層を分離することで効率的なインターフェース変換を実現できる。HDMIおよびDVIの物理層は比較的高い電源電圧を要するので、0.25μm程度のプロセスのトランジスタ回路で製造する。一方、論理層では電源電圧は問題にはならないので、DisplayPortとHDMI、DVIの論理層を1チップに集積することも難しくはない。
そこでグラフィックス用途向けのチップセット(グラフィックスICとブリッジIC)では、DisplayPortの論理層および物理層、HDMIの論理層、DVIの論理層を1個のグラフィックスICに集積する(図1)。そして、グラフィックスICからの出力を受け取って、HDMIとDVIの論理層の仕様に準拠した信号に変換するブリッジICを用意する。グラフィックスICでは、内部のマルチプレクサによって所望のインターフェースの論理プロトコルを選択し、DisplayPortの物理層を介して外部に信号を送信する。外付けのブリッジICは、その出力をHDMIまたはDVIの物理層の規格に準拠した信号に変換する。論理プロトコルへの対応はすでに施されているので、変換後にはHDMI/DVIの各規格に準拠した信号が得られることになる。この構成において、DisplayPortを備えたモニターディスプレイに対しては、グラフィックスICの出力をそのまま直結する。一方、HDMIまたはDVIを備えたモニターディスプレイに対しては、ブリッジICの出力を接続する。この手法は、信号品質、回路の複雑さ、製造コストの面でバランスが良い。
パソコン本体とモニターとの間に論理層と物理層の両方を変換するブリッジICを配置する方法も考えられる。しかし、この方法では、信号の遅延の増大、コストの増加といった問題が生じる。繰り返しになるが、45nmプロセスの集積度の高さを生かして論理層を低コストでまとめておき、45nmプロセスと整合しないHDMIおよびDVIの物理層だけを別チップ(すなわち、ブリッジIC)にするというのが最良の方法だろう。
なお、ブリッジICが必要となるのは、モニターがDisplayPortのインターフェースを備えていない場合だけである。DisplayPortを装備したモニターが普及すれば、ブリッジICは不要になる。
ブリッジICを実装する場所としては、システムボード、ドッキングステーション、ケーブルアダプタ、モニターディスプレイなどが考えられる。これらのうち、どれに実装するかによって、信号品質に及ぶ影響や、コストその他の面で差が生まれる。
システムボードにブリッジICを実装する手法であれば、コネクタを省けるので信頼性が高まる。ただし、サポートできるインターフェースが1種類に限定されてしまう。必要となるすべてのインターフェースのポートを用意する方法も考えられるが、それではシステムが複雑になり、コストの増加が無視できない。
ケーブルアダプタにブリッジICを実装する手法であれば、高い柔軟性が得られる。ドッキングステーションは最近ではノート型パソコンでもあまり用いられないので、適切とは言い難い。ドッキングステーション用に、ブリッジICを内蔵したDisplayPort対応のドングルを提供するベンダーが現れるというのが妥当なシナリオだろう。なお、モニターディスプレイの内部にブリッジICを実装する手法は、コスト増となるので現実的ではない。
信号品質の改善
図2 ブリッジICにおける信号整形の効果
ブリッジICに入力する信号は、アイが閉じてしまっている(上)。ブリッジICのジッター除去回路によって、出力信号の品質が改善され、アイが開く(下)。Pericom社のブリッジIC「PI3VDP411LS」を使った場合の例である。
ESDからの保護
ディスプレイインターフェース回路を静電気放電(ESD)から保護するのは重要なことである。例えば、HDMI規格のRev.1.3では、コネクタに対して、8kV(接触モード)のESDに対する保護を求めている。
45nmプロセスにおいて、製造コストをそれほど増やさずに、8kVに対応可能なESD保護回路を実装できるか否かは不明である。いずれにしても、グラフィックスIC(チップセット)の内部にESD保護回路を搭載するのは現実的ではない。ESD保護回路が壊れてしまうと、グラフィックスICがESD耐性を失うことになり、パソコンシステム全体の故障につながりかねないからだ。故障したICを交換するのがコストの面から合理的でない場合には、システム全体を廃棄することになってしまう。そのため、ESD保護回路は、独立した1個のデバイスとして実装することが多い。これであれば、故障したESD保護デバイスだけを交換すれば済むので経済的である。
ただし、電子回路においてESD保護回路のような受動部品を付加することは、システムコストを増やすだけでなく、不要な容量を回路に付加したり、望ましくない歪(ひずみ)を信号に与えたりすることにもつながる。この問題は、ESD保護デバイスとブリッジ回路を1チップに集積することで回避できる。ESD保護回路は0.25μmプロセスであれば実績がある。
また、ESD保護回路とブリッジ回路を1チップに集積した場合の最大のメリットは、信号品質の劣化を防げる点にある。ESD保護回路を個別に実装すると、信号に対するプリエンファシスの効果を薄めてしまうからだ。ESD保護回路とブリッジ回路を1チップに集積すれば、この問題を回避できる。また損失やジッターなどを減らすことも可能だ。
この方法をとった場合、ESD保護回路が故障したときには、システム全体ではなく、ブリッジICだけが故障したことになる。もし将来的にブリッジ機能が不要になったなら、ブリッジICをほかのESD保護デバイスに交換してシステムコストを低減することもできる。
DisplayPortの可能性
DisplayPortがHDMIやDVIなどを置き換えるかどうかは、まだ不明である。それでもDisplayPortは着実に、パソコン市場に浸透しつつある。新しいアプリケーションをサポートできる拡張性を有する、そして内部バスとしてチップ間通信を担えるという特徴が、パソコン以外の市場を切り開くだろう。例えばデジタルテレビ受像機、メディアゲートウエイ、DVDプレーヤ、家庭用ネットワーク機器、投射型ディスプレイ、薄型ディスプレイなどが候補として考えられる。
DisplayPortは多くの企業からの支持を得ている。Analogix Semiconductor社、Dell社、Genesis Microchip社、HP社、Lenovo社、Luxtera社、Molex社、Parade Technologies社、Pericom社、Quantum Data社、Tyco Electronics社の各米国企業、ホシデン、オランダRoyal Philips Electronics社、韓国Samsung Electronics社らがDisplayPortを支持している。
今後しばらくは、DisplayPortとHDMI、DVIが共存していくだろう。この状況はしばらく続くかもしれないし、どれか1つが他者を置き換えていくかもしれない。それぞれの規格の背景にある技術と制約を理解することにより、効率の良いブリッジ機能を開発するとともに、最大の柔軟性を最小のコストでユーザーに提供できるようになる。