http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20080207-OYT8T00136.htm
医療ルネサンス
肝炎の最新治療
ウイルス増殖抑える新薬
「B型慢性肝炎もがんの定期検査が欠かせない」と話す荒瀬さん(虎の門病院で)
千葉市の会社員男性(56)は13年前に、東京・港区の虎の門病院で胆石の手術をした際、血液検査でB型慢性肝炎と診断された。
それまでも会社の健診で何度か肝機能の数値が高かったが、自覚症状がないこともあり、詳しい検査を受けたことはなかった。
B型肝炎は、大人が感染すると1%程度の人が重症化して命にかかわるものの、多くは一過性で治る。しかし、出産や幼少時に感染するとウイルスが体に残り、保有者の9割では症状が出ないものの、ウイルスの増殖が盛んだと、慢性肝炎を引き起こす。
血液検査で男性のウイルス量は、「高ウイルス」の基準よりさらに100倍も多いとわかった。1年間のインターフェロン治療で、100分の1に減ったが、依然として高ウイルスだ。慢性肝炎が続けば肝硬変に進み、肝臓がんの危険も高まる。
治療に転機が訪れたのは2000年、「ラミブジン」という新薬が日本で承認された時だ。エイズ治療薬の研究からできた薬で、ウイルスの遺伝子に作用して増殖を抑える。1年以内に80~90%の患者で、肝機能が正常化しウイルスも検出できなくなる。
もとのウイルス量が多かったこの男性の場合、時間がかかり、検査で陰性になったのは飲み始めて7年目。肝機能も正常値に落ち着いた。
しかし、同病院肝臓科医長の荒瀬康司さんは、「B型肝炎のウイルスはC型のように完全に消えることはまれで、薬をやめると再燃の恐れが高い」と話し、男性は今も薬を続けている。
また、ラミブジンは長期に使うと効かなくなる「耐性」ができやすい。幸い耐性のできにくい「アデフォビル」、「エンテカビル」という同種の薬もその後認可され、今は、エンテカビルが最初に使われる薬となった。ただ、薬代が保険の3割負担でも月1万円と高額なのが難点だ。
C型肝炎では、慢性肝炎が肝硬変へと進み、肝がんへと至る道筋が比較的はっきりしているのに対し、B型肝炎では症状のないウイルス保有者や軽い慢性肝炎患者でも突然肝がんを発症することがしばしばある。症状のないウイルス保有者でも、肝がんを早期に発見するための定期的な検査が欠かせない。
近年では、ワクチンの導入によって母子感染はほぼなくなった反面、「新たな海外種による新規患者が増えている」と、同病院分院長(肝臓科部長)の熊田博光さんは話す。B型肝炎のなかでもタイプAと呼ばれる、これまで日本にはなかったウイルスで、成人での感染でも慢性化しやすいというのが、やっかいな特徴だ。
B型肝炎 わが国のウイルス保有者は130万~150万人とされ、慢性肝炎へと進行するのは約1割。1986年に予防接種が制度化された。35歳未満では、自然治癒の可能性があることや抗ウイルス薬服用が長期になることから、まずインターフェロン治療が行われる。一方、インターフェロンでは効果が期待できない35歳以上では、最初から抗ウイルス薬が用いられる。
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(2008年2月7日 読売新聞)