2008年2月5日火曜日

失明治療を可能に 理化学研究所

http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2008/080204/
ヒトES細胞から視細胞へ:既知の因子のみを用いた分化誘導に世界で初めて成功 | 独立行政法人 理化学研究所プレスリリース

ヒトES細胞から視細胞へ:既知の因子のみを用いた分化誘導に世界で初めて成功
- 胎児網膜を使わずに20~30%の高効率の分化を達成 -


 ES細胞(胚性幹細胞)は、生体のすべての組織を生み出すことができることから「万能細胞」とも呼ばれ、再生医療や薬品開発への応用が期待されています。また、2007年11月には、ヒトの皮膚細胞からES細胞と同じような能力を持つ「iPS細胞」を生み出すことに京都大学の山中伸弥教授らが成功して世界を驚かせるなど、世界中で万能細胞の研究が急速に進められています。
 理研発生・再生科学総合研究センターの網膜再生医療研究チームらは、光を感じる神経細胞である「視細胞」をヒトES細胞から20~30%という高効率で分化させることに、世界で初めて成功しました。
 網膜疾患や失明の原因の多くは視細胞や網膜色素上皮細胞の変性にあるため、変性した網膜に視細胞を移植する再生医療の実現が期待されています。研究チームは、以前からES細胞から視細胞や網膜色素上皮細胞を生み出す分化誘導法の確立に挑戦してきました。すでにマウスのES細胞から網膜の前駆細胞に分化する方法は明らかにしていますが、網膜前駆細胞を視細胞へ分化するには、胎児の網膜と共培養する必要がありました。今回、胎児網膜を使わず、成分が明らかな条件で視細胞を得る新たな手法を確立しました。
 今後、この方法から得られる視細胞を、ヒトの疾患治療に活かすためには、モデル動物を使ってその視機能を的確に評価する方法の開発や、有効性や安全性などを詳細に調べることが不可欠となり、さらなる研究の積み重ねが必要です。研究チームでは、引き続きこれらの問題の解決に取り組んでいきます。


http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008020401000010.html
視細胞を高効率で培養 理研、網膜再生に一歩
2008年2月4日 06時22分

 網膜の奥にあって光を感じる視細胞を、胚性幹細胞(ES細胞)から高効率で培養する技術を、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)や京都大のチームが開発し、4日付の米科学誌ネイチャーバイオテクノロジー電子版に発表した。

 網膜色素変性症などの患者の目に移植できれば、失われた視力や視野の回復につながる。京大が開発した人工多能性幹細胞(iPS細胞)でも応用できそうで、理研の高橋政代チームリーダーは「網膜の再生医療実現に一歩近づいた。iPS細胞でも試してみる」と話している。

 チームは、人のES細胞にタウリンなど4種類の物質を混ぜて数段階で培養し、20-30%を視細胞に分化させることに成功。これまで1%未満だった培養効率を大幅に引き上げた。また従来必要だった胎児網膜やウシ血清など、倫理性・安全性に問題が残る材料も不要とした。
(共同)


http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0000824672.shtml
ヒトES細胞、高確率で網膜細胞に 神戸の理研

眼球と網膜の構造

 あらゆる組織に分化できるヒト胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から、網膜の視細胞を高い確率で培養する技術を、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)が開発し、四日付の米科学誌ネイチャーバイオテクノロジー電子版に発表した。光を感じる視細胞の病変は失明の一因にもなり、培養した視細胞を移植できれば、失われた視力や視野を回復させる「再生医療」への応用が期待できる。(田中伸明)

 同センターの高橋政代チームリーダーと小坂田文隆研究員らが、京大と共同開発した。二〇〇五年にマウスES細胞から網膜になる前段階の細胞作製に成功、今回ヒトへの応用にこぎ着けた。

 研究チームは、マウスやサルの実験から視細胞の発生に必要な物質として、タウリンなどを特定。万能細胞とされるヒトES細胞に加えて培養し、20-30%の確率で視細胞を出現させた。血清などを必要としない純粋培養は世界初で、移植しても感染などの恐れが少ないという。実験過程で、網膜へ栄養を送る網膜色素上皮細胞の作製にも成功した。

 視細胞や網膜色素上皮細胞の病変では「加齢黄斑変性」や「網膜色素変性」が知られるが、治療法が確立されていない。

 近年、胎児の視細胞を移植する方法が報告されているが、ES細胞から大量培養した細胞を使えれば、入手の難しさが解消できる。

 万能細胞では、山中伸弥・京大教授らがヒトの皮膚細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製に成功。受精卵を使うES細胞に比べ、倫理面などの問題が少ないため研究の主流になっている。理研の笹井芳樹グループディレクターは「ES細胞で確立した技術はiPS細胞にも応用できる。他機関とも連携を強め、治療への実用化を目指したい」と話している。
(2/4 09:19)


http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080204/acd0802040302001-n1.htm
ヒトES細胞から網膜 理化学研チーム失明治療に期待
2008.2.4 03:01

 あらゆる細胞に分化する万能性を持つヒト胚性幹細胞(ES細胞)から、網膜の細胞を効率よく作ることに理化学研究所と京都大の共同研究チームが成功した。細胞移植によって網膜を再生できれば、失明の恐れがある網膜疾患の根本的な治療法につながると期待される。米科学誌「ネイチャー・バイオテクノロジー」(電子版)に3日、掲載された。

 視野が著しく狭くなる網膜色素変性や、視力が低下する加齢黄斑変性などの網膜変性疾患は、高齢者の失明原因の上位を占める。網膜はいったん損なわれると修復が極めて困難なため、有効な治療法はほとんど確立されていない。

 理研発生・再生科学総合研究センターの高橋政代チームリーダーは「安全性の検証などまだ多くの課題があるが、10年以内に臨床応用の試験を開始したい」としている。

 研究チームはマウスやサルのES細胞を使った実験から、網膜細胞を誘導するための2種類の物質を特定。これをヒトのES細胞に使って培養した結果、網膜に栄養を供給する網膜色素上皮細胞や、光を電気信号に変えて脳に伝える視細胞を作り出すことに成功した。

 ヒトES細胞由来の視細胞は従来、作製効率が0・01%以下と極めて低かった。今回の手法は効率が20~30%と飛躍的に高まったほか、感染症の恐れがある動物由来の組織を培養過程で使わない利点もあるという。

 研究チームは今回の成果を応用して、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から網膜細胞を作る研究にも着手しており、拒絶反応のない網膜再生医療の実現を目指す。


http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200802030038.html
ES細胞での網膜づくり効率化に成功 理化学研究所など
2008年02月04日

 万能細胞の一つ、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から人の目の網膜細胞を効率よく作り出すことに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)などのグループが成功した。これまで0.01%程度だった効率が一挙に30%近くまで引き上げられ、網膜の病気にからむ再生医療の実現性が高まった。3日付の米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー電子版に掲載される。

 作製に成功したのは、小坂田文隆研究員ら。網膜の主要な細胞である光を感知する視細胞と、網膜に栄養を供給する網膜色素上皮細胞を作った。

 グループは05年、マウスでES細胞から視細胞をつくった。ただ、成分が不明な牛の血清を使うなど人に応用するには安全面の問題があった。今回使ったのは、人のES細胞。培養時間を工夫して問題の成分を使わずに視細胞の前段階まで分化させた。さらに、視細胞への誘導には、レチノイン酸とタウリンが必要なことを突き止め、誘導された細胞のうち30%近くが視細胞になった。

 体のあらゆる細胞になる能力を持った万能細胞では、京都大の山中伸弥教授らが作り出した人工多能性幹細胞(iPS細胞)が注目を集めているが、ES細胞とでは倫理問題や安全性などで長所短所が違う。比較研究をすることで、利点が明確になる上に、両者の万能性に違いがあるのかも確認できる。理研グループは、京大から提供を受けたiPS細胞でも網膜細胞の分化に成功し、すでに機能を比べる段階に入っている。

 網膜は傷むと修復が難しい。今回の成果は、国内に約3万人の患者がいるとされる網膜色素変性や、高齢者の失明原因となっている加齢黄斑変性などの治療法の開発に役立つ見込みだ。

《ES細胞とiPS細胞の特徴》
ES細胞は、受精卵からつくるので「生命の始まり」を壊すことへの抵抗がある。他人の細胞であるため移植時には拒絶反応の心配もある。一方、iPS細胞は、皮膚などの体細胞に遺伝子を入れてつくるので、自分の細胞ならば拒絶反応は抑えられるが、遺伝する病気を持つ人の場合、治療には使いにくい。がんを引き起こすウイルスを作製時に活用するので、安全性の課題も残っている。


http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080204-OYT1T00215.htm
人のES細胞から視細胞、再生医療へ一歩…理研チーム

 網膜で光を感じる視細胞を、人間の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から効率よく作り出すことに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の高橋政代チームリーダーらのチームが成功した。


 病原体に感染する恐れのある動物の細胞を作製に使う必要がなく、新型万能細胞(iPS細胞)にも応用できる可能性が高い。再生医療の実現に近づく成果で、米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー電子版で発表した。

 目に入った光は視細胞で感知され電気信号に変えられ、視覚情報として視神経を通じて脳に伝えられる。研究チームは、マウスやサルのES細胞と同じ方法で人間の網膜の大元となる前駆細胞を作製。タウリンなど2種類の化学物質を加え、培養期間を延ばしたところ、20~30%が視細胞になった。培養法を変えることで、視細胞に栄養を供給する網膜色素上皮細胞も高い効率で作ることができた。

 研究チームは、マウスなどのES細胞から視細胞を作り出していたが、マウスの胎児の網膜細胞と一緒に培養するため、未知の病原体に感染する危険性があるうえ、作製効率も数%と悪かった。視細胞や色素上皮細胞が徐々に損傷し、失明の恐れがある網膜色素変性症や加齢黄斑変性は、今のところ完治の方法はない。
(2008年2月4日10時31分 読売新聞)

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