2009年10月15日木曜日

チョコレートが痛みを取る仕組みが解明される

2009年10月15日 14時55分00秒

チョコレートを食べると痛みが紛れる、その仕組みが明らかに

http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20091015_chocolate_reduce_pain/

嫌なことがあってもおいしいものを食べると気分が良くなるという人も多いかもしれませんが、実際にチョコレートを食べたり水を飲んだりしたときに熱刺激への反応が鈍くなる、つまり痛みを感じにくくなるということがラットを使った実験において確認されました。

この自然の「痛み止め」効果は、野生生物にとっては摂食中に餌から気をそらさせないという生存に重要な働きかもしれませんが、豊富な食べ物を容易に入手できる現代人にとっては肥満につながるファクターとなっているかもしれません。

詳細は以下から。

Comfort Food: Chocolate, Water Reduce Pain Response To Heat

The Journal of Neuroscience誌に発表されたシカゴ大学の神経生物学専攻のPeggy Mason教授とHayley Foo准教授による研究では、動物が食物や液体を摂取する際の強力な鎮痛作用が、食欲がない時にものを食べても起きるということが初めて示されました。

「これは非常に強力な作用ですが、空腹や食欲とは関係がないのです」とMason教授。「目の前に簡単に手が届く大量の食べ物があれば、基本的にほぼどんなことも食べるのをやめる理由にはならないのです」

実験ではラットにチョコレートの小片を与えたり水や砂糖水を口に直接注入し、ラットがチョコレートや液体をのみ込むと同時にケージの下のランプのスイッチを入れました。このランプの熱刺激はラットが前脚を床から離す反応を引き起こします。その結果、食べたり飲んだりしている最中は、ラットが目覚めているが食餌中でない時に行われた実験時とくらべ、熱刺激を与えてから脚を持ち上げるまでの時間がかなり長かったそうです。

また、意外なことにただの水を飲んでいる時でもチョコレートを食べている時と同様に熱刺激に対する反応が遅くなることが確認され、糖分を含む物質にのみ鎮痛作用があるというこれまでの見方を覆す結果となっています。

「これは、(鎮痛効果が)カロリーとは全く関係ないということをよく示しています。水にはカロリーがなく、サッカリンは糖を含みませんが、チョコレートチップと同じ効果があるのです。驚くべきことです」とMason教授は語っています。

次に、ラットにキニーネ(子どもがまずい物を食べた時の「ウエッ」というような反応をラットにひきおこす苦い液体)を与え、チョコレートや水の時と同様にランプを点灯する実験を行ったところ、何も食べていないときと同じ速さで熱刺激に反応したとのことで、不快な食べ物や飲み物では痛みを鈍らせる効果は得られないことが示唆されています。

チョコレートや液体を与える前のラットの状態も、飲食によって鎮痛作用が得られるか否かに大きくかかわることが判明しました。薬物投与によって食あたりのような状態にされたラットではチョコレートを食べている間の熱刺激への反応の遅れは見られませんでしたが、水を飲んでいる間は痛みを感じにくくなることが確認され、これは具合が悪い時に水を飲むことは有益だと脳が見なしていることを示唆しています。

Mason教授らはラットの脳幹の大縫線核(だいほうせんかく、nucleus raphe magnus:NRM)という睡眠中や排尿時に痛みを鈍らせる働きで知られる部分を選択的に不活化することにより、水を飲むことによる鎮痛効果を取り除くことに成功しました。脳幹は運動中の発汗や呼吸など潜在意識下の反応をつかさどる部分です。

「基本的に人間は脳幹のなすがままで、NRMはその脳幹の一部です。走っている時は好むと好まざるにかかわらず汗をかくのと同じように、『好むと好まざるにかかわらずこれを完食するのだ』とあなたに命令します」とMason 教授。「野生ではラットやほかの動物は食べ物や飲み物にありついた貴重な機会には、食事を邪魔されたくないはずです。そのため飲食中はNRMが活性化し、食事が完了するまで(痛みなど)気をそらすものを無視できるようにします。この自然の鎮痛作用が心地よい物を食べたり飲んだりしている際に働き、毒があったり有害である可能性の高い不快な味に遭遇した場合には働かないのは自明です」

ブランダイス大学で味覚を研究する心理学と神経科学の准教授Don Katz氏は、Mason教授とFoo准教授の論文は味覚系と痛覚系という通常は別々に研究されている2つのシステムを統合するものだと述べています。「つまり、味覚系の目的は、どの刺激を無視しどの刺激に注意すべきかという判断を助ける指示を動物に与えることにある、と言っているのです」とKatz氏。「動物が食べ続けることを可能にするという目的で、領域全体が働いているのです」

飲食中は痛みを感じにくくなるというこの反応は人間にもある(ほかの研究者による過去の研究では、予防接種を受ける際に砂糖水を与えられた乳児で同様の効果が見られました)が、舌に心地よく太りやすい食べ物が大量に簡単に手に入る現代社会では有害な作用を持つだろうとMason教授は考えています。体に悪いとわかっていてもポテトチップを1袋一気に食べきってしまうのは、袋を開けた時に脳幹がそのように活性化しているからかもしれません。

「過去100年から150年の間に随分肥満が進んでいます。昔よりおなかが減っているわけではありません。食べる量が増えたのは食べ物が簡単に手に入るようになったからで、手に入る食べ物はすべて食べるようにわたしたちは生物学的に運命づけられているのです」とMason教授。しかし、今回証明された飲食による鎮痛作用は有効利用することもできるだろうとしています。「例えば、診療中に子どもをおとなしくさせるために医師がキャンディーを与える場合がありますが、食べたり飲んだりすることで鎮痛作用を得るために砂糖は必要ないことがわかったので、これからはキャンディーのかわりにコップ一杯の水を与えるとよいでしょう」

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2009年10月15日 14時55分00秒 in サイエンス Posted by darkhorse_logg