2009年10月8日木曜日

ガン治療に新抗体医薬

医療と介護 > 医療ニュース 介護・老後ニュース 共生ニュース

がん治療に新抗体医薬

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20091008-OYT8T00814.htm

 「総額2700億円」とうたわれた最先端研究開発支援プログラムが、鳩山政権によって大幅に変更される公算となった。

 1人あたりの研究費が激減する見通しで、9月に採択済みだった30人の研究課題への打撃が懸念される。いずれも、科学技術立国の先導役として選ばれただけに、担う期待は大きいものばかり。

 免疫の仕組みを利用した「抗体医薬」も、このプログラムに採択された。がん治療の飛躍的な発展に、東京大の児玉龍彦教授らが取り組む。

 抗体は、体にとっての異物(抗原)を攻撃する免疫物質。体内でがん細胞だけを見分けて攻撃し、正常な細胞を傷つけにくいので、副作用が少ないと期待される。

 しかし、従来の抗体医薬には、標的のがん細胞を見逃しやすいという問題がある。人工的に作った抗体が、がん細胞の表面に結合し、それを目印にして患者の免疫が攻撃する仕組みだが、抗体の結合量が少ないがん細胞は攻撃を免れてしまう。治療で一度はがんが消えたように見えても、生き残ったがん細胞が再び増え、手遅れになる。世界で250種類もの抗体医薬の治験が行われているが、成功例は少ない。

 児玉教授が目指す新世代の抗体医薬は、この欠点の克服を目指す。ポイントは、抗体はがん細胞を見つけ出す役割に徹してもらい、がん細胞を殺す役割は別の薬に分担させることだ。

 治療では、まず抗体医薬を注射する。続いて、この抗体だけに強く結びつく性質の放射性物質を注射する。放射性物質は、くっついた細胞を殺す力が強いので、少しでも抗体が結合したがん細胞は確実に退治される。体中に転移したがんも、細胞1個ごとにたたける。

 抗体は、がん細胞に結合しやすい形を、コンピューターで設計する。また、がん細胞に結合せず余った分は、速やかに体外へ排出されるような物質にしておく。
市場規模4兆円

 こうした新世代の抗体医薬を開発するには「スーパーコンピューターを使った薬の設計と、研究領域ごとに分業化した研究体制が必須だ」と、児玉教授は力説する。抗体の作製、候補薬の設計、効果の評価など12領域から成る研究グループを組織し、産学の一流研究者が各領域を率いる。

 抗体医薬の市場規模は、世界で約4兆円。一方、医薬品を一から開発して世に出すための費用は、500億円が相場と言われる。資金力では米国に勝てない。

 「我々は頭脳を結集して薬の候補分子を絞り込み、限られた資金で効率的に薬を生み出す」と、児玉教授は意気込む。(宮崎敦)

 最先端研究開発支援プログラム 当初は「30人に30億~150億円ずつ」という空前の巨額研究費として、国の2009年度補正予算に2700億円が盛り込まれた。鳩山政権は、総額を2000億円に減らし、配分先は大幅に増やす方針。期間は3~5年。基金にしてあり、年度をまたいで使える。
(2009年10月8日 読売新聞)

関連記事・情報
共生 障害者サービス無料化…厚労省方針(10月14日)
共生 きつい運動にはサプリメントで栄養補給を(10月12日)
医療 副作用、万能細胞で把握…心臓細胞作り分析(10月11日)
医療 要介護度 軽い人を救済…厚労省、自治体に通知(10月10日)