2009年10月19日月曜日

冬眠の謎を解明、眠らない人工冬眠で寿命200歳、ガンも克服

「人工冬眠」が実現すれば
寿命200歳の“究極の体”になる?

http://r25.jp/b/report/a/report_details/id/110000007765/part/2

冬眠ホルモンをクスリのように処方すれば、人間は宇宙でも快適に生きていけるかも? いつかは宇宙の外に出てもって…ムリか! イラスト/鈴木麻子

宇宙開発が進んだ遠い未来。数百年かかるような遠く離れた星を目指すとすれば、宇宙飛行士の健康維持や食事の問題、寿命の限界など、解決すべき問題は山積みです。となると、人間を冷凍保存して、後に蘇生させる「コールドスリープ」の技術が役に立つのかもしれません。 しかし、今のところ、細胞レベルでの冷凍保存はできるけど、蘇生の方法は確立されていないみたい。うーん、なんとか他に方法はないものかしらん。

そこで、世界で初めてシマリスの冬眠に必要な物質を特定・抽出することに成功し、人工的な冬眠状態を作り出す研究をしている玉川大学学術研究所の近藤宣昭先生に話を聞いてきました。そもそも人工冬眠ってどういうこと?

「冬眠とは、体温を下げ、運動や食べることをやめて、代謝を低くすることで、食料が少ない冬を乗り越える状態。体温が低くなっても凍死しないということは、それだけ冬眠中は低い体温に耐えられるよう、体を調整する能力が高まっていることになります。理由はまだわかっていませんが、冬眠中の動物は致死量の放射線にさらされても平気で、ウイルスやガンへの抵抗力も極端に強くなるんです。これを人間に応用しようというのが人工冬眠なんです」

つまり、極端に病気に強い体になって、宇宙放射線にさらされる宇宙空間でも安心ってこと!? 冬眠スゲー! 人工冬眠の研究ってどこまで進んでるの?

「これまで行われてきた人工冬眠の研究には、根本的な間違いがありました。『冬眠=低体温』という発想で、体温が下がるとどんな変化が起こるかを調べてきたからです。実は、冬眠で体温が下がるのは結果でしかなく、原因ではありません。シマリスの場合、毎年秋ごろになると『冬眠ホルモン』という物質が活発化し、冬眠できる体に変化します。そうなって初めて、低体温でも凍死せずに眠ることができるんです。つまり、冬眠するには先に“冬眠できる体”になる必要があるんです。このメカニズムを解明しているうちに、“眠らない冬眠”があることが分かりました」

えーと…眠らない冬眠ということは、つまり冬のあいだも起きてるってことですね。
…それ普通でしょ!

「そうじゃなくて、シマリスを暖かい部屋でずっと飼育していると、冬になっても体温を下げて眠る(一般的な冬眠)ことがなかったんです。そのシマリスは体温も37℃で、普通に活動することもできました。それでも体は冬眠している状態と同じように変化していて、強い体になっていた。つまり、冬眠は必ずしも、体温を下げて眠る必要はないんです

まさかの新事実! 冬眠の呼び名を改めないといけませんな。えーと…“眠”を取って…“冬”とか!? …ダメか!

「これまで冬眠中に体が強くなる原因は、体温を下げて眠ることで、代謝を落としたからだと思われてきました。しかし体温を下げて眠るのは、冬場は食べ物が少ないので、体温を下げることで代謝を下げて、食べる量を減らすためだということがわかりました。冬眠できる体になったシマリスは、暖かい部屋で飼育したものも含めて、すべてが抵抗力の強い体になっていたんです。同じげっ歯目で、体の大きさも同じぐらいで、冬眠をしないラットの寿命は3年程度なのに対し、シマリスの寿命は11年以上。冬眠することよって、4倍近く長生きするんです

ん? 冬眠中に必ずしも眠る必要がないなら、動物は一年中冬眠状態で過ごせばいいじゃないですか。健康で長生きできるし、冬眠サイコーでしょ。

「冬眠状態の体で活動しているシマリスは、多少動きがおとなしくなります。これは推測ですが、少し頭がぼ~っとしている状態かもしれません。また、夏場に運動することは体を活発化させる意味もあるので、必ずしも年中冬眠している状態がベストとはいえないんです」

なるほど、バランスをとった方が効果的ってことね。ところで、その冬眠ホルモンを使った人工冬眠を人間に適用することができれば…。

「究極の健康体になるかもしれません。病気に対する抵抗力が極端に強くなるから、インフルエンザなどにもかからず、ガンに対する免疫力もあがると思います。その体で宇宙に行けば、筋肉が萎縮しないし、骨粗鬆症にもならない、宇宙放射線にも強くなる可能性があります。もしかしたら、寿命も200歳以上になる
かもしれませんね」

この冬眠研究、まだまだこれからの分野みたいだけど、研究が進めば、宇宙旅行の実現化を大きく前進させるきっかけにもなりそう。

いつかそんな日が来るまで、コールドスリープしときますか! …違うか!


若山研究室
理化学研究所に所属する若山照彦先生の最新の研究結果がわかる