糖尿病とうつ病は互いに影響し合う(2010.12.2掲載)
http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=2812&Itemid=39糖尿病とうつ病は互いに増幅し合うことが新しい研究で示され、医学誌「Archives of Internal Medicine(内科学)」11月22日号に掲載された。うつ病患者では糖尿病の発症リスクが高く、糖尿病患者ではうつ病リスクが有意に高いことが示されという。
研究著者の1人、米ハーバード大学(ボストン)公衆衛生学部教授のFrank Hu博士は、「この研究では、2つの疾患が互いに影響し合い、悪循環となることが示された。このことは、糖尿病の一次予防がうつ病予防に重要であり、その逆も同じであることを意味する」と述べている。
今回の研究は、女性看護師5万5,000人を対象として、質問票を通じてデータを収集し、10年間追跡したもの。うつ病となった7,400人強では糖尿病発症リスクが17%高く、抗うつ薬を服用している場合にはリスクは25%高かった。一方、糖尿病を発症した2,800人強は、うつ病になるリスクが29%高く、治療薬を用いている場合にはさらにリスクが高かった。
米ノースウェスタン大学(イリノイ州)心理学部門非常勤教授のTony Z. Tang氏は、「薬物療法中の患者は、疾患がより重篤であることから負担が重くなっている。しかし、これらの疾患の治療は感染症に対する抗生物質とは異なり、治癒につながらない。そのため抗うつ薬を用いるうつ病患者、およびインスリン治療を受ける糖尿病患者は、ほかの患者よりはるかに悪い状況にある」と説明している。
ただしTang氏は、この研究から過剰な結論を導き出さないようにとも警告している。今回の研究では、過剰な体重と非活動性を調整した場合、糖尿病とうつ病の相関が顕著に減少しており、「これは両者間で観察された相関の多くが交絡変数(confounding variable)によるものであることを示している。わかりやすく言うと、太っていて不健康な生活習慣をしている人は、よりうつ病になりやすく、またより糖尿病になりやすいということである」と説明。しかし、この2つの疾患に強い関連があることが研究で確立されれば、治療の前進につながるとも述べている。
別の専門家は「多数の被験者を長期間追跡したことはこの知見を強めるもの」と賞賛しつつも、「自己報告は不正確になりやすく、質問票に基づいて因果関係を確立するのは難しい。大規模対照無作為試験が必要である」と述べている。
Hu氏によると、2つの疾患が同じ危険因子(リスクファクター)を共有している場合(肥満と運動不足)には、それらの疾患は、一方がもう一方の原因であり、また結果でもあるといえるという。うつ病はコルチゾール(ストレスホルモン)を通じて血糖値やインスリン代謝に影響し、不健康は食生活や体重増加、肥満に寄与する。一方、糖尿病管理は長期のストレスと緊張をもたらし、長期的にみてうつ病リスクを上昇させる。「この2つは、行動面だけでなく生物学的にも関連している」と述べている。(HealthDay News 11月22日)
http://consumer.healthday.com/Article.asp?AID=646371