2009年1月21日水曜日

JeffRowland Criterion Coherence Consummate Consonance

ジェフローランドデザイングループ久々のフラッグシッププリアンプ、クライテリオンと以前のフラッグシップ機コヒーレンス

クライテリオンは2008年12月に正式に発売になり278万円(税抜き)、291万9千円(税込み)
コヒーレンスは初期バージョンとマーク2バージョンのコヒーレンスIIがあり1994年から2001年くらいまで発売しており確か初期は230万円、マーク2が240万円くらいだったと思う

さらにそれ以前となるとコンスメイト(1990-1993)、コンソナンス(1989-1994)など他にもあった















クライテリオンの外観・デザインは特徴的なジェフローランドを踏襲しており波打ったように見える光り輝いたものとなっている
コヒーレンスと違いパネル部分だけでなく本体の筐体部分も波打って見える加工がされているが、黒っぱくアルマイト加工されている
しかしそれでもかなり艶っぽく輝いている
超高品質感が強くいかにも高級品といった風貌の筐体に、やたら大きく表示される数字の対比がかわいい
文字がやたらでかいので表示窓を見るとおもちゃ風、箱を見ると宝石箱みたいで茶目っ気があってかわいい
ジェフ・ローランド氏はシャレ気のきいたお茶目なデザインはなかったので何か大きく感性を変える出来事があったのかもしれない

コヒーレンスの天板は放熱用の溝が掘られており大きさはそれほど違わないにもかかわらずまったく印象が違う
コヒーレンスが発売されていたころのジェフローランドのアンプは放熱用のフィン、というか溝が共振を避けるため黄金分割比により太さが違っていた
各ヒダごとに違う太さに加工するのに大変なコストがかかっていたということだった

Jeff Rowland Design Groupはパワーアンプの201や501など他の機種もそうだが、本体ににフロントパネルをはめ込んだ筐体に見えるがアルミブロックの削りだしの一体成型がほとんどだ
だからフロントパネルが傷ついて交換するとしたらフロントだけ交換することはできず筐体を全取替え・交換になる

コヒーレンスに比べるとクライテリオンは奥行きは同じだが小型化されている

以前、オーディオフェアで試作機を見た時はもっと大幅に大きいか、あるいはかなり小さい印象で製品版と展示試作機とはサイズが違っていたかもしれない
大きく見えた時は威圧感のある風格がある感じで、小さく見えた時はお弁当箱サイズの宝石箱みたいで頬ずりしたくなるほど可愛かった

コヒーレンスはボリュームの表示をする小さな表示部があり本体部分には表示窓はない
全部で3ピース構成になっている


クライテリオンは電源/ボリューム/入力切替の電源・コントロール部と、アンプ部の2ピース構成となっている
コントロール部に表示用インターフェースがあり、前機種のボリューム表示だけ離れたヤボったい3部構成から、一体化されたことによる使い心地と見た目の安定感など明らかに洗練された
リモコン付きのアンプだが今のところ完成しておらず、今から3ヶ月後を目標に作りこんでいるそうだ
でもジェフローランド社のことだからもっと遅れると思う

もう販売されているがそのことについて聞いたところ、後でリモコンがくるそうだ
つまりリモコン付きだがリモコンは同封されてこない

『共振を避けるため』とCバージョンにモデルチェンジしたパワーアンプのモデル312Cやプリメインアンプ・コンティニュアムContinuumのようにパネルが緩く湾曲しておらず、直線的だった



肝心の音の比較だが正常進化といえると思う

Jeff Rowland D.G.のパワーアンプがアナログアンプからアイス・パワー・アンプに変化したときのように、別メーカーになったかと思うほどの変化はない
そのためICE Power後の音に心酔している人には期待した変化と違うだろうし、以前のフラッグシップを刷新しようとする人にとってはどうなっているのか心配なことだろうと思う

まずコヒーレンスのみを聴き比べた
AC電源駆動、そしてよりクオリティが高くなるDCバッテリー駆動を行った

他社の高品質なプリアンプ、
ゴールドムンドGoldmund社ではアナログプリと称するフラッグシップ・ミメイシス22シグネチャーMimesis 22 Signature(690万円税別)、デジタル入力搭載のユニバーサルプリアンプと称するフラッグシップ・ミメイシス24ME Mimesis 24 ME(580万円税別)、
エアーAyre社はリファレンスプリアンプ・KX-R(296万円税別)、K-1xe(145万円税別)
ハルクロHALCRO社はdm10(340万円税別)
など優れたプリアンプのことも考慮しながら試聴した

他にもマークレビンソンMark Levinson社のリファレンスプリアンプ・No32L(320万円税別)、No326S(140万円税別)やビオラViola社のスピリットSpirito(490万円税別)やカデンツァCadenza(195万円税別)
など人気のあるものも考慮した

これらの優れた現代のアンプと比べてもいささかも問題のないサウンドだった
AC駆動でも全く問題がなく、DCバッテリー駆動にするとさらに音場感といわれるものが良くなりS/Nが良くなる
現代のものに比べナローレンジとかダイナミックレンジが狭いとかS/Nが悪い、もっさりと遅いとかありそうなものだが全く問題なかった

クライテリオンに変えるとまず余韻の情報量が違う
余韻の長さと、その余韻の中で次に立ち上がってくる別の音の表現が違う
余韻やエコーが長いというと付帯音やS/Nが悪いと勘違いされることがあるが、エコーが消えつつ次の音がフッと立ち上がってくる
S/Nが悪くノイズが乗っているとモヤモヤして音も濁って汚いので全然違う
これだけ聴くとコヒーレンスのバッテリー駆動とクライテリオンのバッテリー駆動との対決で軍配が決まったように思えるがクライテリオンはこのときまだAC電源駆動だった
事前にAC駆動と確認してから試聴したのに1秒もたたずバッテリー駆動と勘違いしてしまった

次に充電しながらのバッテリー駆動に変えた
音量は変えていないのだが曲の途中で頭、頭蓋骨にポーンと響くことが起きるようになった
脳に響く感じとか、頭蓋骨に響く経験はだれでもあると思うがACではそれが起きずバッテリーだとそれが起きた
音質についてはすごく細かく書くと低域の頭、音の出だしの立ち上がりが速くスムーズになり、全域で音の純度が上がる
別の言い方をすると雑音が減ってまとわりつくモヤッとしたノイズが減って聞こえる
中音域の変化が一番大きいだろう
ボーカルの表現が変わってくる

バッテリー駆動と充電しながらのバッテリー駆動との違いは、ACと充電しながらのバッテリー駆動との変化より大きかった
頭に響く音も充電しながらのときは、たまに起きるという程度だったのが頻繁に起きる状態になった
鉄琴や、ワイングラスを濡らし口をこすったり叩いたりして音を出すクリスタルハープとかクリスタルガラスの演奏を聴くことが多い場合は、音質はいいものの頭に響きすぎるのでうるさく感じることがあるのではないかと思われる

低音の立ち上がりがかなりハッキリしスッキリと出てくる
そのうえ低音の存在感もかなり出てくる
低音の存在感は充電しながらのバッテリー駆動ではACとほとんど違いがない
ピュアバッテリー駆動は全域の純度も一番違う
特に、中音域の情報量と表現力が違ってくる
そのため、音楽の奥行きやボーカルがかなり変わってくる

正直、音に関してだけで言うなら充電しながらのバッテリー駆動は半端だ
ただ実際に使う実用上の機能としてはバッテリー不足になっても充電しながら聴けることにメリットがあると思う

楽音でも人の声でも一瞬音が大きくなる時があるが、そのときの伸びが全然違う
一瞬のニュアンスの違いも曲の中では何度も現れ蓄積されるので印象がかなり違ってくる

マークレビンソンのモノラルパワーアンプNo.53と、メーカーではデュアルモノーラルアンプと称しているステレオアンプNo.532との違いと似ている
No.53とNo.532は音色はよく似ているものの子音やパビプペポなどの発音の伸びに違いがよく感じられる


サウンドとしては別の会社の製品かと勘違いするような変化があったり、アナログパワーからICEパワーに変わったときのように激変しておらずジェフローランドのプリアンプの音を引き継いでいる

こういった感想を書くと『新しいほうがAC駆動でも良かったのだから古いほうは結局価値がないのではないか?音質が似ているならなおさら』とだれもが思うのではないだろうか?
自分もその答えがほしくて具体的にジャンルの異なる曲をかけ比較してみた

個々の曲やジャンルによっていいと思われる機種が変わった
オーディオや音楽芸術となると単に「いいほうがいい」とはいかない

余韻の表現の豊かさからクラシックはクライテリオンが圧勝かと思われたが1960年ごろの録音のオペラ的オラトリオ、ヘンデルのメサイアはコヒーレンスのほうが全然よかった
ハマったというものだろう

音色が似ているため大袈裟に表現すればクライテリオンに比べ、コヒーレンスは中低音に軸を置いたカマボコバランスで、低音と、特に中音はソフトで優しい表現だ
クライテリオンが現代的に余韻表現にたけスッキリしているのに対し、コヒーレンスは優しく、濃厚とか濃密、コクがある表現だ
そこが古い録音とうまくハマったようだ

それに気を良くして1970年ごろの録音のモーツァルトの魔笛をかけた
ボーカルの表現が良かったため会話部分があるオペラも良いかと思ったからだ
これはクライテリオンのほうが全然よかった
音場感や空間表現の差が大きいし、60年録音のものと70年の録音との録音技術の進化がはっきり感じられた

現代のポピュラー音楽も確かめてみた
クラシックを聴くと素晴らしいのに現代のポピュラー音楽になると打って変って眠く不得意になるハイエンド機も意外とあるので確認しておかないと安心できない
やはり現代の最新録音に対応できないとなると製品としては困る

マドンナのアルバム「レイ・オブ・ライト」からトラック7・スカイフィッツヘブン、「コンフェッションズ・オン・ア・ダンスフロア」からトラック1のハング・アップとトラック2のゲット・トゥゲザーの頭まで聴いてみた

これはちょっと難しくなった
このアルバムは長く多い残響が常に鳴っているようなサウンドでクライテリオンが圧勝するのでは?と思って聞き始めた
スカイフィッツヘブンは全体としてはクライテリオンのほうが全然いい
コヒーレンスはかなりカマボコサウンドになりナローレンジといっていいほどだった
しかしこの曲の霊魂が浮遊するような効果音がクライテリオンとコヒーレンスでまったく違って聴こえ、リマスター盤のように別のディスクのように聞こえた
高音のきらめきや高域への伸びがクライテリオンが比べるべくもない差があるが、コヒーレンスは中音域に軸がありクライテリオンで気付かなかった中音域のエフェクトに気づくこともあった
また、マドンナの声もあきらかに優しげで、人の肌は柔らかいものだと感じるサウンドだった
ただ、ボーカルはやや軟調気味ではあった
良くなかったのは低域で、ずっと鳴りっぱなしのこの曲の低音が立ち上がりが遅いせいで頭がでないし次の音と重なってボコボコいって出来の悪いバスレフスピーカーのようになってしまった
また、かなりナローレンジでコンパクトな表現になってしまった
中音域の魅力と全体の表現力と悩ましい引っ張り合いになった

ハング・アップは素直にクライテリオンに軍配が上がった
アルバム全体で攻撃的で突っ込んでくるマッシブで押し出しの強い低音と、ずっと鳴りっぱなしのシンセサイザーの三角波と方形波のジャリジャリいうサウンドがクライテリオンだと大迫力で再現される
コヒーレンスだと低音の押し出しがなくなっておとなしくなるし曲が終ってそのまま2曲目につながるときの時計のベルの音がコンプレッサーをかけたように制限され抑えられたようになった
どの家にもベル式の目覚ましが1台くらいはあるだろうが、本物っぽく聞こえたのはコヒーレンスのほうだ
しかし明らかにサンプリングで作った時計の音が、生の時計をマイクで録音したように聞こえるコヒーレンスより、サンプリングで作ったようにそのまま聞こえるクライテリオンのほうが正しいのだろう

最新録音のバイオリンは
「順当にいけばクライテリオンだろう。
中音域を中心に優しくコクのあるサウンドでカマボコ風のバランスがハマればコヒーレンスに一日の長があるか」と聴いてみたがこれは素直にクライテリオンが良かった
下手をすればこすれた音を強調したり、キツイ高音になることもあるかと頭の片隅に考えたがそれはなかった


ゴールドムンドばかり感想を書いてジェフローランドは書いてなかったがステラボックスは聞いてないことまで勝手に教えてくれるので書きやすかったからだ
大場商事は質問しても無視されたり、知らんぷりで情報を流さなかったりして書きようがなかった
私も人間なのでいろいろ話や情報をくれる会社や代理店のほうが好きになって印象が良くなる
そうすると自然と書きたくなる
その辺でメモの数が大きく差がついた

ジェフのプリも美音だが
たとえばゴールドムンドのとことん透明で見通しがいいが少し攻撃的で耳につくことも無きにしも非ずという製品と、やっぱり各社違う

実は歴代のジェフ(J.R.D.G.)のアンプは苦手だった
アバロンAVALON社やウィルソンオーディオWilson Audio社と組み合わせると繊細で鋭敏で大好きだったが、そのほかのスピーカーと組み合わせると途端にモサーっと寝ているような眠たいサウンドになり、澄み切ったサウンドだったのがいきなり付帯音まみれに聴こえる、組み合わせの気難しさが嫌だった
ジェフローランドがアンプを作ったのは巨大なコンデンサー型のサウンドラボSound lab社のスピーカーを駆動できるアンプを希望されたからなのにサウンドラボと組み合わせても眠く付帯音が聴こえる嫌な音だった
特にプリアンプは歴代のアンプ、全部が自分にとって一番嫌いなサウンドだった
ボリュームがボタンで階段状に上がっていくコンソナンスやコンスメイトは高音域の粒が大きく全体的にニュアンスは一切出さないようにしているようにしか聞こえず部分的にも好きになったことは一度もなかった
使い心地もあまりに独特すぎた

コヒーレンスも苦手でシナジーからは自分が好きな部分もあるサウンドになった
コヒーレンスが苦手だったのは、確かに音はいっぱい聞こえるがエアーやゴールドムンドのように見通しが良くすっきりとしておらず、トロっと濃厚で見通せる感じがないのが嫌だったからだ
また、ボリュームの粘りが大嫌いだった
水あめに箸を突っ込んでかき回しすように粘ってどうしても好きになれなかった
発売時期が遅くなるにつれ粘りが少なくなっていったが、他の人も嫌だったのだろう
ジェフローランドのアンプの高級感、ハイクオリティ感がありすぎビカビカ光り輝きまくって存在感がありすぎるデザインも苦手だ

ちょうどそのころのジェフローランドのアンプは入力だけでなく出力にもトランスを搭載して、自分にとってこのころが嫌いな音のピークだった
やたらと粘ってコクが濃い感じで、ココナッツジュースやココア以外なにも飲まないような感じで受け入れられなかった

今回、久々に聞いてみてコヒーレンスが嫌ということはなかった
くどいコクが感じられなかった

クライテリオンのボリュームはマークレビンソンのプリと同じく自分はかなり苦手な速度感応型で、きわめて軽いトルクだった
速度感応型でボリュームノブの回転に重さがまったくないタイプでよくあることだが、ボリュームを下げようとしたら逆方向にちょっとだけ回ったようであっという間に98を超えてまいった
ほんの少しだが逆方向にノブが速く動き、フルボリュームに近いところまで音量が上がってしまった
確か小数点以下を含む0から100までの調整範囲で1000段階くらい調整できるのでマークレビンソンのプリアンプと同じくステップ数が足りないことはない【追記:データを調べていたら、ゲインレンジ:99.5dB(199ステップ)という表記を見つけた】
マークレビンソンも速く回すとあまりに音量の上がり下がりが激しいのでゆっくり回すことになるが、ステップ数が多すぎ希望音量までボリュームを回し続けることになるのが面倒だ
ソフトウェア的にもう少し洗練して使いやすくなるといい

その点ジェフ ローランドのクライテリオンは、ボリュームノブを回す速度にピーキーすぎるのは同じだがマークレビンソンと違って使いやすい
ゆっくり回すと4回転くらい回さないと希望音量にならないマーク レビンソンはユーザーコントロールを調整すべきだ

調整ステップ数が多いので、ともに希望音量にならないことはない
ステップ式アナログボリュームとしては異例にステップ数が多いAyreのプリであっても、希望音量とちょっと違ってしまう(抜群に音がいいが。クオリティのためにアナログ式のステップ型ボリュームを使っている)
ゴールドムンドのアンプはゲインが高いのとプリのボリュームカーブが立ちすぎているのでちょっといじると音量が上がりすぎる
GOLDMUNDのプリのボリュームカーブはもっと寝かせるべきだ
ジェフもマークレビンソンも希望音量にできるのはいいことだ

今回のクライテリオンはぜひゴールドムンドのテロス5000や2500と組み合わせて聞いてみたい
惜しむらくは美音だが他社の製品と組み合わせると魅力が減じそうなこと
ジェフローランドはプレーヤーがないので美音といってもdCSの美音とは違うし頭が痛い
魅力的なクライテリオンをさらに活かすにはジェフローランドのCDプレーヤーが必要だと強く実感した
それくらい魅力的な音の製品となった
ただやっぱり他の会社の製品と方向が違うのでクライテリオンの音の美しさを完全に出すのは同一会社の製品がないと無理だと思う
ファンは作ってもらうことを願うばかりだと思う