2010年3月19日金曜日

“努力教”は人を苦しめる論理

言っていることがトンチンカンというより、何が言いたいのかよくわからない、これって記事として配信する意味があるのか!?、配信している『Business Media 誠』の家族か何か?といつも不思議に思っていた連載から、読んで面白い記事が初めて出た。

2010年03月19日 08時00分 UPDATE 連載
ちきりん×phaの「そんじゃーダラダラと」(8):

なぜ人はガンバリ続けるのか “努力教”は人を苦しめる論理 (1/4)

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1003/19/news006.html

決して正体を明かさない謎のブロガー・ちきりんさんと、日本一のニートを目指しているphaさんの対談8回目。「がんばれば夢はかなう」という人がいるが、本当にそうなのだろうか。がんばっても夢はかなわないから、人はがんばり続けているのかもしれない。
[土肥義則,Business Media 誠]

社会派ブロガー・ちきりんさんと、日本一のニートを目指しているphaさんの対談8回目。「がんばれば何でもできる!」「がんばれば君の夢はかなう!」といったことを聞いたことがある、という人も多いはず。しかしこの考え方に対し、ちきりんさんとphaさんの意見は逆だ。「がんばっても夢はかなわない」――。

ちきりん×phaの「そんじゃーダラダラと」:バックナンバー→5W1Hに忠実な新聞よりも、グチャグチャな「圧縮新聞」の方が面白い理由(1)

→このボクが、“日本一のニート”を目指すことができたワケ (2)

→そんじゃー“日本二のニート”になるっ! ちきりんのシナリオ(3)

→どういったタイプの人が、ニートに向いているのか(4)

→勝間和代さん的な生き方をどう思われますか? (5)

→オルタナティブな生き方が、社会の中で大きくならない理由(6)

→もっと気軽に出入りできたらいいのに、“働かない”という世界に(7)

pha(ふぁ)さんのプロフィール31歳。大阪府大阪市出身、現在は東京都内に在住。京都大学を24歳で卒業し、25歳で就職。できるだけ働きたくなくて社内ニートになるものの、28歳のときにインターネットとプログラミングに出会った衝撃で会社を辞める。今は毎日ふらふらしながら「日本一のニート」を目指している。

独学で覚えたプログラミングを用いてネットに数々のWebサービスを公開。また、プログラマなどが集まったシェアハウスである「ギークハウスプロジェクト」を運営している。

→phaのニート日記

いまの日本はがんばり過ぎの人が多い

ちきりんさん(右)とphaさん(左)

pha いまの日本はがんばり過ぎな気がしていています。「もっとダラダラしていいよ」「別に働かなくてもいいよ」「ニートでもいいよ」などと、気軽に言える世の中になればいいのになあと思いますね。

 もちろんがんばっている人はそれでいいのですが、がんばらなくちゃという気持ちが強すぎて、自分で自分を追いつめてしまってしんどくなっている人も多いのではないでしょうか。

ちきりん 日本の自殺者数が年間3万人を超えたり、うつ病などに苦しんでいる人もたくさんいる。このことだけを考えても、やはりがんばりすぎるニホン人が多すぎるような気がしますね。

 例えば先進国の中でもラテンの国は自殺率が低い。彼らは「なんとかなるさ」といったラテン気質があって、失業率が高くても自殺率は低い。例えば失業率が2割あれば「5人に1人は失業しているんだから、自分が失業しても仕方がない」と前向きに考えれば、追い詰められることもないと思う。

pha 働くのが苦手なせいで「お前はダメだ」と家族や友達などから責められて苦しんだり、「自分はダメだ」と自分を追いつめてしまったりする人も多い。そういう人に対して「ニートでも別にいいと思いますよ」と言っていきたい。しんどい思いをして働き続けたり、その結果自殺してしまうことに比べたら、ニートになることなんて何の問題もないと思う。死んだら意味ないですから。

「がんばれば何でもできる」はウソ

ちきりん いまの日本は「失業したらアウト!」といった雰囲気ですよね。「失業してはいけない」といった雰囲気が漂っている。

pha 失業率が0%になんかそもそもならないし、そんな社会は嫌だと思いますね。失業者に対して「がんばれば仕事は見つかる、実際がんばっている人は仕事を手にしている、仕事が見つからないのはがんばりが足らないからだ」という人もいますが、それは結局がんばってる人ががんばれない人を、能力のある人が能力のない人を蹴落としているだけですよね。がんばれない人や適正のない人を無理に労働市場に引き出しても意味がないし、普通にがんばれない人でも別にそれで生きていていいと僕は思います。
(出典:総務省「労働力調査」)

 僕自身、まともな会社で働くことはもう絶対にできない体。そんな僕に対して「若いのに働かないのは社会の損失だ、働け!」とか言う人がときどきいます。しかし会社で働くことが向いていないし、また働きたいとも思っていない。そして働かなくてもなんとかなっているので、会社に就職する意味は全くないと思う。結局、誰も得しないですし。

 僕がいやいや会社に勤めてしんどい思いをしながら仕事をやるくらいだったら、その仕事を僕なんかよりもっと働きたいって思ってる人に譲った方が、僕も働きたい人も雇用する企業も、三者全員がハッピーになれるでしょう。

ちきりん 努力すればできる、がんばればできる――というウソを子どもに教えるのは止めた方がいいですよね。

pha そう思います。

ちきりん がんばればできる……って本当なの? たまたまできた人がそういっているだけじゃないの? と思います。がんばることと結果がでることに、きちんとした関係があるのであれば、実は「がんばらなくていい」ってことになります。なぜなら本当に困ったときだけ、がんばればいいから。必ず結果がでるのであれば、お金に困ったときだけ働けばいいだけのことでしょ。

 でもみんなそうじゃないことが分かっているから、ずっとがんばり続けている。ずうっと一生懸命働いている。これじゃあ大変です。

ちきりん もう1つおかしいことは「最近、ニートや引きこもりが増えている」「失業者が増えている」「少子化が進んでいる」「晩婚化が進んでいる」といった世の中の事象に対し、「ニホン経済の将来はどうなる?」「将来、年金が破たんする」といった論調がある。でも若い人は「なんでお前の年金を払うために、私たちが子ども生まなくちゃいけないの?」と思っているでしょうね。

 社会のために個人の行動を変えるべきという考え方と、がんばればなんとかなるという“努力教”は人を苦しめる。だけど上の世代の人たちは「自分も我慢して先の世代を支えてきたので、当然俺たちも下の世代に支えてもらう権利がある」という意識が強い。

pha 自分のことを振り返ってみると、これまでの人生であまりがんばったという記憶がないんですよね。自分が何かを成し遂げたときは、いつも楽しかった記憶しかない。僕は高校3年生のときに受験勉強を始めて大学に入学したわけですが、それも受験勉強がゲーム感覚で楽しかっただけだし、「圧縮新聞」などのプログラムを作っているときもひたすら楽しかった。そこには「しんどい」とか「やりたくない」といった感覚は全くなかったですね。

phaさんが作った「圧縮新聞」

 僕は「しんどい思いをしてがんばって何かを成し遂げる」ということをたぶん信じてないんですね。何かをやりたいというときには「楽しくてしょうがない」という気持ちがあるからやっているだけ。逆に言うと、楽しくなければそれをやらないし、自分の体が楽しいと感じないことはそもそもやらなくていいことなんだと思っている。

pha でもこの考えは自分自身には当てはまるけど、万人に適用できるかどうかはよく分かりません。こんなにがんばることが大事だって価値観が浸透しているのは、しんどい思いをしてがんばることで世の中が支えられてる部分があるんでしょうね。逆にそういう人は「自分の楽しいことを好きなようにやりなさい」と言われても何をしていいか戸惑ったりする人なんだろうと思うので、そういう人はそのやり方で安定してるんだからそのままでいいし、僕は僕のやり方で生きるし、それも社会の多様性であり分業だと思います。

ちきりん もし面白くなれば、シェアハウスを大規模に経営するかもしれないということですか?

pha もし大規模な組織を動かすことやお金をたくさん稼ぐことに興味を覚えたならやるかもしれないですが、今のところはそんなに魅力を感じませんね。根本的に組織とかに興味がないですし。どこにも属さずに1人でフラフラしたり、仲の良い友達と会っておしゃべりしている方が楽しいですから。

 →第9回へ続く。

ちきりんさんのプロフィール関西出身。バブル最盛期に金融機関で働く。その後、米国の大学院への留学を経て現在は外資系企業に勤務。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。

 →Chikirinの日記

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