2010年3月1日月曜日

世界で1セットだけ、VIVID audio G2 GIYA発表会-実機はすぐに日本を離れ韓国に

ステラヴォックスが輸入代理店をしている南アジアのビビッドオーディオ社の新型スピーカー、G2 GIYAの発表会が開催された。
G2ギヤは現在、世界で一セットだけとのことで先日開催されたCES 2010のハルクロブースで使われたものを日本に持ってきたとのことだった。
開発者・販売責任者の二人が、会社とビビッドオーディオの製品解説をし、代理店が試聴を進行した。この試聴会は多数のオーディオメーカーや評論家、オーディオ系の報道各社が多数参加して開催された。かなりの盛況で部屋の熱気で扇(あお)いでいる人も多くみられた。

G1 GIYAは標準色が670万円税別、特注色が700万円税別ペアー、新作の
G2 GIYAは標準色が460万円税別、特注色が485万円税別ペアーが予定価格となっている。
標準色は以前は、
オイスターグレー、グラファイトブラック、サハラベージュ、パールホワイト、コッパーレッドとなっていた。
配られたカタログでもそうなっているが、G2ギヤが追加されたカタログのほうでは標準キャビネット色は、
アークティックシルバー、ボローロレッド、パールホワイト、ピアノブラック、オイスターグレー、サハラベージュ、アラゴナイズブルーとなっていてGシリーズの標準色なのか全ラインナップに適用されるカラーが若干の修正と、新たに青が追加されたのかいまひとつ分からない。

試聴に使われたのは新設したアラゴナイズブルーのG2ギヤだった。ハルクロブースで使われたものだ。
ビビットオーディオで初めてきれいな色が出たと個人的には思っている。
白や黒はオーソドックスと思う人が多いだろうが、すべての色が卵の白身を混ぜたような変わった色合いで好きではなかった。
ハイセンスなのかもしれないがあのすごい色のボローロレッドに代表される、色に関しては家に置きにくい(すごく浮いて目立つ)カラーから普通っぽいというかマトモな色合いというか…、とにかく青が出た。
すごくきれいだったが、真っ青がきれいだったのでちょっと残念だ。特注色でということになるだろう。

ネットの速報やメーカーで『サイズが半分』という話を見かけることがあったが写真をどう見ても『半分』のはずがないので間違って伝えたのか、写真が間違っているのか疑問に思っていた。
実機をどう見ても半分ではなかったがローレンス・ディッキーの解説でサイズは80%ということで疑問が解決した。
しかし、世界中からG1は素晴らしいけれど大きすぎるとの感想が多く寄せられ、特に日本のステラボックスの西川社長からもっと小さい、『半分』のサイズを希望されて半分にしたと言っていたので、容積が半分、外形寸法が8割ということなのだろうと思う。
並んでいれば小さいことに気づくが単体では気付かないと思う。
これくらいの金額のものを買う人は大金持ちだろうから大きさや価格が問題にならないと思っていただけに世界的に小さく、安くしてほしいと要望が殺到したというのは意外だった。日本や、部屋のサイズが日本と同じくらいという政府の白書を見たことがあるスペインではサイズの要望があるだろうと思うが驚いた。これくらいのものを買う人は金が余って家は大きく、使い道がないからオーディオなども買っていると想像していた。

G1もG2も4ウェイ・ダブルウーファーの5スピーカーユニット、クロスオーバーは220Hz、880Hz、3.5KHz、最大許容入力は800ワットで、
高さと奥行きがG1は170・80センチ、G2は138.3cm・63.8cmとなっている。横幅はG2のほうが比率としては太いとのことだったがG1は44センチ、G2は36センチで占有する幅はG2のほうが少ない。
重さはG1が70kg、G2が55キロとなっている。本国のサイトを見るとG1は75キロとなっているがなぜなのかよくわからない。

半分にするにあたって実際できるのか?とシミュレーションを行ったそうだ。そこでビビッドオーディオ特有のチューブアブゾーバー(消音用逆ホーン)と空気室を組み合わせた方式を採用すればクロスオーバーや再生帯域を変えることなく可能であるということが解明されたそうだ。
しかも振動板のサイズを変えるだけでよく、マグネットなどの変更も必要ない、との結果だったということだった。
普通に考えれば大型ウーファーのマグネットをそのまま流用すればオーバーダンピングユニットになってしまいウーファーが受け持つ中高音は能率が高くなり、低音部分は相対的に下がって低音不足のハイ上がりユニットになってしまう。この時点では半信半疑だった。

ウーファーの実際測定した周波数特性も見せてもらったが驚くほど特性が同じで新しく開発されたウーファーの周波数特性は能率が3dB低いだけだった。特性図が並べてあったのではなく同じ表に2つの特性が表示されていたがあまりにも同じなので元のC225の計測結果を3dB下げて作った表のように見えるほどだった。あまりにも似ているので信じられないと思っているほどだ。

実際に音を聴いてみて大変驚いた。
G1は展示してあったが一対比較はしていない。しかし音がそっくり。
音色がソックリというだけではなくて、再生帯域が全く同じように聞こえる。
G1は公称25センチウーファーが2発、G2はウーファーが20センチ2つなのに野太い低音と、どのような低音楽器が低い音階を弾こうとも薄くなったり聴こえなくなったりしない。

驚異的だ。

なぜかビビッドオーディオはユニットの公称サイズが他のメーカーよりかなり小さく表記することが多く25センチウーファーは他では控えめに言って28センチ、通常は30~32センチ前後と称するサイズで、G2の20センチウーファーは23センチから通常なら25、26センチ口径と呼ばれるサイズだろう。

男性の身長並みのG1より小さいとはいえ、大型と言っていいフロアー型のG2ギヤだがこれほど低い低音が出て、音量上げても全く割れたり危うくなったりしないスピーカーはもっと大きいフロア型でもほとんどない。低音が危なくならないよう量を少なくスリムにしているタイプではなく重厚。ブルックナーをドカンドカン鳴らしても大丈夫。

ユニット単体ではC225に比べ3dB低いC175ウーファーだがスピーカーシステム全体の比較では1.5dB低いだけと言っていた。
カタログではG1が91dB 2.83V、G2が88dB 2.83Vと3dB低くなっているのでどちらが正しいのか判断が付かないが設計者が言っていることが本当なのだろうと思っている。能率が3dB落ちて半分になっていることを気にする人がオーディオに詳しくない人の中にはいるだろうが人間の音の大きさの感じ方はかなり鈍いのであまり差がない。ミュートスイッチがある機器は-20dBになることが多いが音の大きさは100分の1になっている。トーンコントロールで低音や高音を10dBくらい上げてる人も多いと思うが音の差は10倍だ。12デシベル上げられるトーンコントロールもあるがそれだと16倍になっている。100分の1になった、10倍になった、16倍になったと思う人はいないのでそんなに気にしてもしょうがない。100ワットのアンプと200ワットのアンプは最大音量が3dBしか違わない。
実際の特性グラフを見ても1.5dBくらいの差だった。目を皿のようにして遠くの表を見たので確実なことは言えない。
エンクロージャーに入れたときの能率の低下が少ない理由を聞けなかったが、私の勝手な予想ではシミュレーションで新たに分かったことによる技術ではないかと思っている。ユニット裏の空間すべてが消音器になっているノーチラスと違い空気室とバスレフポートでのチューニングにより高域側の共振をなくしたまま低音を増やすことが可能であることや、ウーファーの振動板を小さくするだけ、エンクロージャーの容積を小さくするだけで設計変更が必要ないことが解明されたと言っていたことなどからだ。
なお、ウーファーの奥行きが2台を背面で向き合わせた配置だとG1の比率と同じでは入りきらないとのことで横幅の比率が太くなっている。

普通に考えれば、磁気回路がそのままで小型化すれば低音が減ってしまうこと、エンクロージャーが小さくなれば空気の容積が減ってfo(f0)が上がって低音が出なくなってしまうこと、そしてウーファーと内容積は密接に相関するのでただ入れ替えるだけでは無理でエンクロージャーもウーファーもすべて調整のしなおしが必要なはずだ。
しかしそのままで大丈夫と分かったと言っているのだからエンクロージャーの容積が減った分、たとえば空気バネの作用が強くなった分、低音を増強させるとかができるのかもしれない。
能率が半分になる3dB落ちのはずが1.5dB落ちで済んでいる理由を聞かなかったのは体力や気力などの限界がきていたからだ。
何せ山之内 正、貝山 知弘、傅 信幸など多数の評論家も来ていたが間が空いて休憩が取れる状態になったら一斉に逃げ出し、外の空気を吸いに行ったり、たばこやジュースを飲んだり吸ったり体力を何とか回復させようとしているほど大変だったからだ。評論家の人たちもイスにつかまってフラフラとやっと歩いているほどで、福田 雅光と石田 善之やそのほかの評論家たちは「いや、もうすごく詳細で。技術解説が技術者向けのセミナーだったね」「話すごく多くてわかんなくなった。わかった?」「耳から出てっちゃったよ。頭に残ってないよ」「若い人なら残るんじゃないか?」「う~ん、そうだねえー。われわれじゃ無理だね。若い人だ」「技術者や研究者向けだったね」と会話しているほどだった。
ほかの会社では『それは企業秘密です』と答える質問にもセールス責任者も設計者も丁寧に答え、一人で分からない数字については二人で討議し考え込んで答えるほど丁寧だったので時間もたいへん掛かった。帳簿上のデータなどは憶えておらず資料も持ってなければ『申し訳ないが分かりません』と答えるのが普通だが、超が付くほど生真面目だ。そういう人はストレスに気をつけてもらいたい。
3分の1ぐらいで体力の限界に近づき、まさかそれから3倍も時間をかけるとは自分も想像してなかった。
例えると菅野 沖彦の試聴会を1セット受けてからフルの試聴会も受ける二連続試聴会の参加を強行したようなものだ。疑問の解決はいい、質問いいですという状態だった。毎日20キロ走っている斎藤 宏嗣や松任谷 由美を見習わなければと痛切に感じた。

技術的な話に戻すと、ビビッドオーディオのカタログを見ると全製品、高調波ひずみ率・全周波数帯域で0.5%以下となっている。
G1とG2のクロスオーバーは数値上は同じだが、パラメーターなど細かいところは違っているということだ。
ミッドバスのC125Sは基本は同じだがG2用にボイスコイルを短くしユニットの奥行きを短くしたものだ。小さくなったウーファーとの、より良い音合わせと、エンクロージャーのサイズが小さくなり奥行きが減ったことによる、ユニットの奥行き・容積の縮小のための対策を兼ねている。
エンクロージャーの製造法はK1、B1、V1.5、V1は型で前側と後ろ側を作り貼り合わせている。Gシリーズは左右に分かれていて貼り合わせるのと中高音の3つのユニットの段差部分が別筐体になっていて入れ込む形になっていること。
G1のエンクロージャーは内側に強化グラスファイバーを張り付け、間に強化レジンを真空ポンプで吸わせて充填していることが説明された。G1のエンクロージャーの内側の加工法は形状が複雑なためグラスファイバーなどの内側の材料、特殊強化レジンをまんべんなく充填しそれぞれの材料を強固に密着させ一体化させるために、お皿にサランラップをかけるようにシートをかぶせ隙間を複数の真空ポンプで吸いわせて作っている。2台(か3台)の真空ポンプで吸っている間に液体レジンが吸われるようにする。空気を吸わせるだけで大変な時間がかかり、レジンが硬化するのにさらに時間がかかるので空気を吸うのに1~2日、乾燥に3日はかかり片側を作るのに数日かかるとのことだった。その間ずっと人が付いていなければならないとのことで、労力がかかりすぎている。
G2は製造方法を改良し左右分割や中高音ユニット部をはめ込むのは同じだが、全部削りだしでほとんどが手作業ではなく型枠を作ってグラスファイバーなど積層したものに、同じく真空ポンプで吸ってレジンも吸われるようにしたとのことだ。レジンを吸わせるのが数時間に減ったのと、用意すればあとはスイッチ押すだけになったということだった。乾かすのは同じ時間だと思う。

B&Wのオリジナルのノーチラスはツイーターとスーパーツイーターは球体の一部を切り落としたような一般的な形状のドーム型ツイーターだった。ちなみにミッドバスはダイナミック型の平面型、ウーファーはアルミのコーン型だった。
ビビッドオーディオのドーム型は一般的な球体の一部を切り取ったものではなくムニュっと球を引っ張ったような伸ばされたような形状をしている。30%増しだか3倍だか強度が上がると言っていた気がする。ティアドロップ形状とか何か名称を付けていたような気がするが忘れた。変わった形状のドームはこのほうが丈夫で共振音が出なくなるということを過去に聞いた。今回はこの話やB&W、オリジナルのノーチラスのことは一言も出なかった。
ユニットの材料、磁石やアルミの振動板、ネットワークの材料などは世界中から適切なものを取り寄せているとのことだった。
組み立ては自社で行っているということだ。
また、ネットワークのコイルや配線はハードワイヤー(硬い線)を使っていることを強調していた。試聴してハードなものの方が聴感上良かったからだそうだ。
ネットワークはすべて正相接続タイプを選んでいる。そうでなければタイムアライメント(時間軸の整合)が取れず波形がおかしくなるから採用しているということだった。ユニットの高域共振周波数の2オクターブ下でクロスオーバーを切るようにしている。理由はクロスオーバーが共振周波数のところでで50デジベル切ることができるからということだった。実際、測定したf特も見せてもらった。

エンクロージャーに積層素材(複合素材)を使っている理由について、
単体材料では厚さ1としたときの強度を1とすると厚くした分だけしか強くならない。密度の低い厚い材料の裏表に、強度が高いが薄い素材を張り付けると2倍の厚さで強度は6倍、3倍で48倍になるから使っているということと、重さが軽く済むということから採用しているということだった。ただしG1、G2では板の厚さはが4倍のものを採用しているということだった。採用したエンクロージャー素材の強度については話さなかった。それでも2台ステレオペアでG1は140キロ(本国サイトでは超過)、G2で110kgで重い。これ以上重くては輸送も家の強度も問題だ。
特徴的なGシリーズのデザインではなく試作中の簡素化したエンクロージャー製の写真もあった。
長岡 鉄男の共鳴管タイプのスピーカーにも少し似た、上に逆ホーンのチューブアブゾーバーを伸ばした写真もあった。ちびまるこちゃんの永沢くんを上下に伸ばしたような、涙型の宝石をうんと伸ばしたような印象だった。数メートルの高さのほうきのようなあきれる大きさの試作品だった。


番外の話でステラボックスのビビッドオーディオのカタログが張り付いていた。確か昔貰ったものもそういうのがあったと思うので金がかかりまくってすごくきれいなカタログだがくっつきやすいインクか紙の素材なのだろう。
あと、カタログでのローレンス・ディッキーがほほ笑む写真がどうどうと印刷されていた。相変わらず怖いと思った。特に笑顔が怖さを激増させる。怖すぎてとても写真をお願いできる状態ではない。
シャイニングが思い出される。もしかしたらやさしい人かもしれないが評論家も記事でも顔の怖さに言及しないところをみるととっても怖い人かもしれない。顔は怖くてもかわいいペンギンスピーカーを作るおちゃめなところがあるとは思う。

全世界で1セットだけのプロトタイプでこの発表会の後は韓国行きになる予定で量産機ができるまで日本で聴けない状態だということだ。CESの後の最初に行われる視聴イベントということで、一般向けに開催されるのは世界初とのことだ(CESは本来は商談会なので業者向けのイベント)。参加した人は一般人で世界初の試聴体験をしたことになる。
4月下旬から量産開始、出荷は5月からが順調にいった場合のスケジュールになっているとのことだ。

試聴記は後日に。もう疲れた。これでも説明をかなり省いたが書ききれない。
ここまで詳細なら、資料配ってある程度の解説をして『自宅で見てください』でいいような気がする…