2010年3月5日金曜日

モンスター患者退治を演劇で

医療・健康 医療・病気

モンスター患者は劇で撃退 福岡の病院、一丸で対応

http://www.asahi.com/health/news/SEB201003050001.html

2010年3月5日8時25分

病院関係者が見守る中、モンスター患者をテーマにした創作劇が演じられた=4日午後、福岡市南区の福岡赤十字病院、森下東樹撮影

 病院スタッフに暴力を加えたり、理不尽な要求をしたりする、いわゆる「モンスターペイシェント(患者)」への対応を考えるお芝居が4日、福岡市南区の福岡赤十字病院で上演された。病院から依頼を受けた福岡県太宰府市の「劇団道化」が実話に基づいて作った創作劇。深刻な院内暴力に、病院全体で取り組もうというメッセージを込めた取り組みだ。

 病院4階の大会議室が即席の舞台。観客は同病院の看護師や医師ら約170人。病院の受付を模したセットに、金髪の派手な女性が登場してわめきちらす。

 「うっ、胃が…胃が痛い。ソセゴンを打って下さい」

 付き添いのチンピラ風の男性がすごむ。「おう、ソセゴンば打っちゃれ」

 ソセゴンは痛み止めの薬で、使いすぎると中毒になる。2人は薬ほしさに病気を装い、夜間の人が少ない時間帯を狙ったように現れる。

 さらに酔っぱらいが登場。搬送される急患に携帯電話を向けて写真を撮り、その急患は看護師の手が触れただけで「この病院は患者に暴力を振るうばい」と大騒ぎ――。

 昨年9月に依頼を受けた劇団道化では、看護師や医師、事務職員に話を聞いた。実情は悲惨なものだったという。 薬物依存者で、求める薬を「打つまで帰らん」と座り込む。看護師の名札をにらんで「名前覚えとくけん」とすごむ。急患優先で診察を後回しにされ、「ふざけるな」とイスをけり上げる。病院食がまずいと訴え、日本刀を振り回した患者もいたという。台本作りと演出を担当した篠崎省吾さん(51)は「本当に困っているとよくわかった」と話す。

 同病院によると、患者やその家族らによる院内暴力や理不尽な要求は年間30~40件に上る。今年度、院内暴力への取り組みを強化し、対応マニュアルを作成して各部署に配った。昨年暮れには「Vコール」を作った。Vはバイオレンス(暴力)の頭文字で、暴力事案が発生すると館内放送で「Vコール、○○までお集まり下さい」と招集をかけ、多数で対応する仕組みだ。

 医療安全推進室長の河野博之・心臓血管外科部長(57)は「モンスター患者にはみんなで対応するのが大事。看護師らを守って、病院の機能を維持することも医療の安全の一環」と話す。

 劇の結末では、医師と看護師らが力を合わせ、問題を起こしている「患者」を追い返し、「おれたちはチームだ」とガッツポーズを決めた。見終わった看護師や医師は「何度も怖い思いをした。みんなで暴力に立ち向かいたい」「医療に専念できる体制作りが大切」などと言い合った。(井上恵一朗)

キーワード:医療安全推進室 薬物依存 看護師 赤十字 ガッツポーズ