ビビッドオーディオは『どういうメーカーなのか?』『どういう存在か?』というのがまだ確定していないブランドと思っている。
ハイエンドスピーカーの絶対的存在というより新進気鋭のメーカーという印象だと思う。
映画『モンスターズ・インク』のような初期のラインナップ、K1、B1、V1.5、V1は見た目も未来的・先進的でサウンドも同様だった。
G1に続きG2を聴いて安心した。
ビビッドオーディオがどういうブランドになるのか心配だったが大丈夫だと思った。
先進的過ぎた以前のラインナップと比べG1 GIYAはニュートラル基調で、以後の製品がどうなるのか気になっていた。
ダリやウェストレイク、ルーメンホワイト、ATC、PMC、QUADのESL型のような全体的に同じ音で統一されたブランドなのか、クレルのアンプやアバロンのように製品ごとに音作りが違う方向なのか判断付きかねていた。
G2はまだ世界で一セットしかないプロトタイプなので厳密には製品版を聴かなければ判断がつかないが、一対比較しなければ違いを指摘できないほど似ている。ただしプロトタイプといってもこのまま販売できるほどの出来栄えで、とりあえず何とか動くレベルといったものではなかった。それは音を聴けばよくわかった。
G2とG1は音色だけではなく再生帯域の違いも記憶の中で比較するのは難しい。
G2はG1と比べ低音が太く感じられた。
しかし、同じ会場・同じ接続機器で聴き比べたわけではなく、記憶の中のG1との比較なのであまり当てにならない。
今回の試聴はゴールドムンドのテロス1000パワーアンプを使っていた。
G1を聴いたときはテロス2500(1,350万円税別ペアー、450W・最大2500W)やソウリューションsoulution 700(ペアーで1,200万円税別)の販売時のデフォルト設定のブリッジ接続1ch×430W(8Ωモノラルで使用)との組み合わせだった。
G1はテロス2500と相性が悪く、なぜかよそよそしく低音不足になる。以前評した時も大型スピーカーだがかなりタイトと言っていた。
各地のオーディオショウに来た人たちも複数同様の感想だったのでG1がエージング前というわけではなかったのだろう。
TELOS 2500はみずみずしいサウンドで、スタティックとか低音が少ないアンプではない。逆にドライブ力は猛烈でひ弱さとは正反対だ。
soulution 700 ブリッジ接続も相性が悪く、テロス2500と異なりG1の低音が出てくる。ソウリューションとの組み合わせだとG1(本来の?)の低音が多く太めになる。G1で少し太い帯域と、ソウリューションブリッジ接続時の中低音が太いところが重なって、悪いことに過剰となってモワッと音楽の足取りが重くスッキリ感がない。簡単に言うと野暮ったい。
さらに悪いことにソウリューションの音色は多少美音調で、その音色の系統がG1 + soulution 700の低音の量が多いことと低音の質感を過剰に目立たせ相性が悪い。
耳に圧迫感を感じる低音の割に最低域はあまり出ず相性が悪い。
soulution 700ならバイアンプ動作 2ch×110W(8Ωステレオ動作)のほうが活発でいい。くどく感じた美音調や低音の盛り上がりも少なくなりこちらのほうがお勧めだ。
ローレンス・ディッキーによれば『G2はアンプにとってドライブが楽なように設計してある』とのことだったがこれにはちょっと賛成しかねる。
確かに特性図を見ればインピーダンスカーブのうねりが少なく逆起電流が少ないと想像できるが、アンプから見てドライブしやすいかもしれないが音の組合せ・相性は厳しい。
ゴールドムンド、ハルクロは空間の表現力で相性良さそうだ。
逆にブライストン、ボルダー、クラッセあたりは良くなさそうだ。
いずれにせよ空間表現力が豊かな機器のほうが美点が発揮されて楽しいだろう。
G1もテロス1000と組み合わせれば今回聴いたG2のように低音が太めなのかもしれない。
G2はテロス2500との組み合わせの難しさが解消されているのか一度組み合わせて聴いてみたい。
高域のクロスオーバーが人間の耳が一番敏感な4kHzに近い3.5kHzなのが気になっていた。敏感というだけでなく、うるさく感じる帯域なのでちょっと心配になった。
試聴した感じではビビッドオーディオらしくきれいな中高域だった。
ただし、オペラ歌手の歌い方でオペラを大音量でかけると少し甲高く神経質でトゲっぽくなった。女声だけでなく男声も同様だった。
これはプロトタイプだからなのか、音楽ホールで極端にライブで長い残響の部屋だったからなのか、エージングが済んでいないからなのか、それともクロスオーバーが3.5kHzだからなのか今回はわからなかった。
G1の音を思い出そうとしたがどうだったか思い出せなかった。
G2はG1より良さそうだと思うところもあった。
G1もG2もエンクロージャーに底面を除き平面がなくすべて曲線で作られているとはいえ、投影面積が小さいせいかG1より良いと思える空間表現があった。
G1はノーチラスと比べハイエンドとローエンドが少し広がりワイドになり、耐入力も上がった。
Nautilusは平面のダイナミック型ミッドバスが癖のある音を出し男声も女声も鼻声になる。G1はそのあたりが解消されている。
しかし全部G1が勝っているかというと一点、スピーカーにごく近いところに定位する音の再現に差があった。バッフルが極小に作られているノーチラスに対して、曲面とはいえある程度の面積のG1 GIYAは、ほとんどスピーカーに触れるような位置にいる人の表現に差があった。
この辺りがG2ではかなり解消されているように感じた。
会場にはノーチラスもなかったので直接比較はしていない。
空間表現が鋭く豊かなので聴いているとゾクゾクしてくる。音色はハイテンションではなくきれいなのにスリリングに聴ける。
楽しい。
なお、比べているノーチラスはマランツの初期の純正(?)組み合わせのほうではなくゴールドムンドのノーチラス専用エレクトリック・デジタル・クロスオーバーを使用した時のものだ。
マランツの純正組み合わせは低音不足。低音がアップライトで音が白っぽいし
音色の深み・奥行き不足でニュアンスや音色が薄い。総合的に魅力不足。
音楽の上澄みを白湯で薄めたよう。音楽を楽しくしない。
ゴールドムンドのデジタルクロスオーバーシステムだと素晴らしい。脂っぽさも出るし。説得力抜群。ただし極端に高額。
さらにノーチラスは以前は500万円くらいだったのが今は1,000万円を超えている。
以下マランツのニュースリリース
2007年7月1日より新規受注分のNautilus(ノーチラス)の希望小売価格の改定を下記のように実施させて頂きます。
旧希望小売価格 : ¥4,800,000/ペア・デバイダー無・税別(¥5,040,000税込)
新希望小売価格 :¥11,000,000/ペア・デバイダー無・税別(¥11,550,000税込)
今はいくらになっているのか知らない。
『製品版が出たらぜひ聴いてください』と誘っていただいたのでこれ以上のことはプロトタイプではなく機会を持てば製品版を聴いてからだろう。