2008年8月6日水曜日

単体グラフィックス「HD 3450」を凌駕する衝撃「AMD 790GX」チップセット登場

  • Phenomのパワーを引き出す新チップセット AMD 790GX

http://ascii.jp/elem/000/000/157/157032/

2008年08月06日 13時01分更新 文●小西利明/トレンド編集部

 790GXチップセットは、2008年3月に発表された「AMD 780G」チップセット(関連記事)http://ascii.jp/elem/000/000/114/114736/
の上位に当たるグラフィックス統合型チップセットである。GPU内蔵ノースブリッジのAMD 790GXとサウスブリッジのAMD SB750から構成される。CPUとのインターコネクトバスはHyperTransport 3.0に対応し、対応CPUソケットはSocket AM2/AM2+。Phenom X4/X3、Athlon FX/X2、Athlon、SempronなどのCPUに対応している。790GX自体の製造プロセスは55nm。

AMDおよび競合のチップセットラインナップ。790GXはパフォーマンスセグメントの上位に位置づけられている

 内蔵するGPU機能は、DirectX 10(10.1ではない)に対応する「Radeon HD 3300 Graphics」(RV610)と呼ばれている。GPUコアは700MHzで駆動し、780Gの内蔵GPU「Radeon HD 3200 Graphics」よりも、33%ほど高速化されているという。

 780Gと同じく、HDビデオデコードアクセラレーション機能「UVD」を内蔵しており、Blu-rayディスクに使用されるH.264やVC-1のハードウェアデコードが可能である。映像出力としては、DVIやHDMI、DisplayPort、アナログRGB出力に対応する。

 また、内蔵GPUと外付けグラフィックスカードを協調動作させる「Hybrid CrossFire X」や、複数枚のRadeon搭載グラフィックスカードを並列動作させる「CrossFire X」にも対応している。

 AMDの資料によると、790GXとPhenom 9850(2.5GHz)を組み合わせた場合、MMORPG「World of Warcraft」が1280×1024ドット表示時で60フレーム/秒の表示が可能という。3Dグラフィックスベンチマーク「3DMark Vantage」(Entryモード時)で3000近いスコアを示し、インテルのG45 Expressチップセットの倍近い性能を発揮するとしている。

Phenom 9850と組み合わせれば、「World of Warcraft」をチップセット内蔵GPUでも高フレームレートで表示できる

 製品の発売はまもなくの予定。大手マザーボードメーカー各社からの製品出荷が予定されており、価格帯は150ドル(約1万6200円程度)前後と想定されている。

780Gベースのシステムと比較して、消費電力も低減されているとする資料



  • AMD、DX10対応ビデオ機能内蔵のハイエンドチップセット「AMD 790GX」

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0806/amd.htm

8月5日(現地時間)発表
 米AMDは5日(現地時間)、DirectX 10対応ビデオ機能を内蔵したハイエンド向けチップセット「AMD 790GX」を発表した。搭載マザーボードの価格は150ドル前後となる見込み。

 Radeon HD 3300(RV610)相当のビデオ機能を内蔵したチップセット。790シリーズであることが示している通り、統合型チップセットながら、TDP 140Wの最上位CPUやCrossFireXに対応するなど、ハイエンド構成も可能なチップセット。AMD 790FXとAMD 790Xの間に位置づけられる。

 ビデオ機能は、40基のSPを搭載し、コアクロックは700MHz、64/128bitのビデオメモリインターフェイスも搭載。単体型GPU同様、H.264/VC-1/MPEG-2のハードウェアデコード支援や高画質化を行なう動画エンジン「UVD」を内蔵する。

 ディスプレイ出力は、ミニD-Sub15ピン、DVI、HDMI、DisplayPortに対応。3D性能は、AMD 780Gより約3割高く、3DMark Vantageのスコア(Entry)は約3,000としている。

 製造プロセスはAMD 780Gと同じ55nmだが、ドライバ/BIOSの改良、電圧のスケーリング、PhenomのC1eステートの利用などにより、AMD 780Gと比較して、プラットフォーム全体で最大12Wの消費電力を削減できるという。

 ハイエンド向けと言うことで、オーバークロック面でのチューニングも施しており、CPU-チップセット間のクロックを微調整する「Advanced Clock Calibration」により、従来は3GHzが限界だった2.5GHz動作のPhenomを3.2GHz以上にオーバークロックできるという。

3DMark Vantageのスコア。左からチップセット単体、Radeon HD 3470との組み合わせ、Radeon HD 4870×2搭載
システム全体でAMD 780Gより消費電力を最大12W削減
2.5GHz動作のPhenomを3.2GHz超にオーバークロックできるという

 バス構成は、PCI Express 2.0 x16×2(両方で16レーン接続)、PCI Express 2.0 x1×6に対応。サウスブリッジは、USB 2.0×12、SATA 3Gbps×6などに対応するSB750。CPU-ノースブリッジ間の接続は5.2GT/secのHyperTransport 3で、ノースブリッジ-サウスブリッジ間はPCI Express x4で接続される。

□AMDのホームページ(英文)
http://www.amd.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.amd.com/us-en/Corporate/VirtualPressRoom/0,,51_104_543_15434~127446,00.html
□関連記事
【3月5日】AMD、DirectX 10対応ビデオ内蔵チップセット「AMD 780」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0305/amd.htm
【2007年11月19日】AMD、デスクトップ向けネイティブクアッドコア「Phenom」を正式発
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1119/amd.htm

(2008年8月6日)


HARDWARE-ニュース 2008/08/06 13:01 ニュース
  • AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 790GX」を発表。AMDの主力チップセットに

http://www.4gamer.net/games/040/G004039/20080805035/

編集部:佐々山薫郁

 2008年8月6日1:01PM,AMDはグラフィックス機能統合型チップセット「AMD 790GX」を発表した。DirectX 10(Direct3D 10)対応のグラフィックス機能統合型チップセット(以下,IGP)としては非常に高い3D性能で話題を集めた「AMD 780G」の上位モデルだ。IGPというと,一般にはエントリー市場向けチップセットとして語られることが多いが,AMDは新製品を「Intel P45 Express」対抗のミドルクラス向けチップセットと位置づけている。

 そんなAMD 790GXのポイントは,大きく分けて下記の3点だ。

1.コアクロック700MHzのグラフィックス機能「ATI Radeon HD 3300」搭載

Out-of-the-Boxなグラフィックス性能と"Vista性能"を,競合より100ドル近く安価に入手できるというのが,AMD 790GX(+Phenom X4)のメッセージ。AMD 780Gと比べて,3D性能は33%向上したとされる
 AMD 790GXのグラフィックス機能に与えられたブランドネームは「ATI Radeon HD 3300」。シェーダプロセッサ数40基,Render Back-Ends(≒ROP)4基という基本アーキテクチャや,UVD搭載,HDMI&DisplayPort対応といった外部インタフェース周りのサポートは,AMD 780Gのグラフィックス機能「ATI Radeon HD 3200」(開発コードネーム「RV610」)と同じながら,動作クロックは200MHz高められ,700MHzとなった。同時に,消費電力効率の最適化によって,マザーボード全体の消費電力はAMD 780Gと同等レベルを維持できているという。
 なお,AMDによるキャッチコピーは「Out-of-the-Box IGP」。意訳すれば「製品ボックスから取り出して,グラフィックスカードを差すことなく,そのまま使えるIGP」といったところだろうか。

2.ATI Hybrid CrossFireXおよびATI CrossFireX対応

 AMD 780Gでは,IGPとローエンドの単体グラフィックスカードによるATI Hybrid CrossFireX(ATI Hybrid Graphics)のサポートが話題を集めたが,これはAMD 790GXでも対応。さらに16レーンのPCI Express 2.0リンクを,x16×1もしくはx8×2として利用可能になっており,ミドルクラス市場で競合する「Intel P45 Express」と同じく,ATI CrossFireX(※3/4-wayはWindows Vista環境のみ)がサポートされる。

AMD 790GXマザーボード単体でも最新人気タイトルのプレイは可能。

3.新サウスブリッジ「SB750」搭載。オーバークロック耐性を向上させる「Advanced Clock Calibration」サポート

Advanced Clock Calibration Linkの概要

 新型サウスブリッジ「SB750」を搭載。旧ATI Technologies時代も含め,PCI Express世代のAMD製サウスブリッジは,ノースブリッジと4レーンのPCI Expressリンクでつながってきたが,SB750ではそれとは別に,CPUと直接つながる「Advanced Clock Calibration Link」を採用しているのが大きな特徴である。
 Advanced Clock Calibrationという機能について,AMDは「CPUのオーバークロック耐性が向上する」以上の説明は行っていないが,マザーボードベンダー関係者の話を総合するに,AMDは「ノースブリッジとサウスブリッジをそれぞれCPUと同期させることで,『AMD OverDrive』を利用したオーバークロック設定時に,サウスブリッジが高い動作クロックへ追従できるようになる」と説明している模様。これにより,オーバークロック設定時にもCPUとノースブリッジ,サウスブリッジが同じHyperTransportクロックで動作できるようになるため,全体としての耐性が向上する,というシナリオのようだ。

 なお,Advanced Clock Calibration以外の基本的なスペックは従来製品「SB700」から変わっていないが,RAID 5のサポートが加わったのは,相応にトピックといえるだろう。

 ATI Radeon HD 3300というグラフィックス機能の存在をどう捉えるか次第ではあるが,ゲーマー的には「ATI CrossFireX対応のAMD最新&主力チップセット」と理解しておいて問題なさそうだ。

 AMD 790GXマザーボードは,ASRock,ASUSTeK Computer,BIOSTAR MICROTECH,DFI,ECS,Foxconn(Hon Hai Precision Industry),GIGABYTE UNITED,J&W,Jetway,MSI,PC Partner,Sapphire Technologyから登場する見込み。いずれも国内で知られたブランドなので,遅かれ早かれ,店頭に並ぶものと思われる。



  • 「AMD 790GX」でAMDプラットフォームの頂上を目指す (1/2)

http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0808/06/news056.html

・最速PhenomとAMDの最新鋭チップセットを組み合わせた「最高のAMD」を体感する

 AMD 790GXは「AMD 780G」の上位モデル、「AMD 790FX」の下位モデルという立ち位置になる。チップセットにグラフィックスコアとして「Radeon HD 3300」が統合されているほか、外付けのグラフィクスカードのために、PCI Express x16(ただし、使用できるレーンは8本)を2基備えているので、RadeonシリーズでサポートされているマルチGPU技術の「CorssFireX」に対応する。

・統合型チップセットなのに本格3DゲームもOKだ

 AMD 790GXの特徴は、「AMD 790FXとAMD780Gのいいとこ取り」と表現できる。それは、スペックを比べてみれば分かるはずだ。

 AMD 790FXは最大でPCI Express x16の物理スロットが4基サポートできるため、4-GPUによるCorssFireXの構築が可能だ。
 これに対して、AMD 780GはPCI Express x16スロットは1本だけ利用できるが、Direct3D 10に対応したRadeon HD 3200をチップセットに統合しているおかげで、動画のハードウェアデコードに対応した「UVD2」を利用できるなど、特に外付けのグラフィックスカードを追加しなくてもHDコンテンツが再生できる。

 最初は内蔵GPUを利用していても、将来的にはCrossFireを構築できる最新のグラフィックスカードを追加したい、というようなユーザーにとっては、どちらのチップセットでも要求を満たすことができない。AMD 790FXはCrossFireを構築できるがGPUは内蔵していないし、AMD780GはGPUを内蔵するが、PCI Express x16スロットが1基だけなのでCrossFireは構成できない。

 AMD 790GXでは、AMD780Gの上位モデルとなる「Radeon HD 3300」が内蔵されており、PCI Express x16スロットも利用できるレーンはx8ながら2基サポートするようになった。これなら、最初は内蔵GPUを利用しながら、将来的にはRadeon HDシリーズのグラフィックスカードを2枚追加してCorssFireを構成したいユーザーでも問題ない。

・AMD 790FXとPhenom 9900に負けない実力を発揮

 なお、今回は掲載していないが、以前レビューした
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0712/15/news002.html
AMD 790FX+Phenom 9900 ES(2.6GHz)と比較しても、Phenom X4 9950 Black EditonとAMD 790GXの組み合わせはほとんど同じ結果を出している。そうした意味では、4つのPCI Express x16スロットを必要としないユーザーは、AMD 790GXを選択すれば十分といえるだろう。

 AMD 790GXは、AMD 780Gに統合されたグラフィックスコアの性能を向上させ、さらにAMD 790FXに匹敵する性能を可能にしたことが、ベンチマークテストの結果からも示された。まずは内蔵グラフィックスコアを利用し、将来はRadeon HD 4800シリーズによるCorssFire構成にステップアップしたいというユーザーの要求に応えるものとなっている。

 そして、AMDのクアッドコアであるPhenom X4シリーズは、ハイエンドのPhenom X4 9950 Black Editionでさえ3万円弱と低価格で実売されている(モデルによっては2万円を切るものもある)。エンコードや動画の再生など、マルチスレッドに対応したアプリケーションを利用する機会が多いユーザーであれば、コストメリットは非常に大きい。

 クアッドコアであるPhenom X4で低価格、ハイパフォーマンスのHDコンテンツプレーヤーPCを作りたいユーザーや、将来的にCrossFireの構築を可能にし、とりあえずは安価にマシンを作りたいユーザーにとって、有力な候補といえるだろう。



■多和田新也のニューアイテム診断室■
  • 3D性能向上とハイエンド向け機能を実装した「AMD 790GX」

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0806/tawada148.htm

 AMD純正オーバークロックツールである「AMD OverDrive」からは、GPUコアクロックに加えて、このSidePortの動作クロックを変化させることができるようになった(画面2)。

【画面1】GA-MA790GP-DS4HのBIOS設定画面。内蔵グラフィックの動作モードとして、UMAのみを使用するか、SidePortを併用するかの指定が行なえる
【画面2】AMD OverDriveから、内蔵グラフィックのコアクロック、SidePortの動作クロックを変更できる

 ノースブリッジに設けられるPCI Expressインターフェイスも、AMD 780Gとは仕様が少し異なる。合計レーン数自体はAMD 780Gと同じ22レーンとなるが、AMD 780GではサポートされていなかったPCI Express x8×2のコンフィグレーションを可能とした。これにより、2枚のビデオカードを利用したCrossFireXをサポートすることになるのだ。また、AMD 780Gと同様、ローエンドビデオカードと内蔵GPUを連携させるHybrid Graphicsもサポート。これにより、統合型チップセット→ローエンドビデオカードとのHybrid Graphics→性能の良い単体ビデオカード→CrossFireX、とグラフィック機能の選択は非常に幅広いものになった。NVIDIAのnForce 780a SLIなども内蔵グラフィック単体使用からSLIを活用した構成までを可能としており、従来はローエンド~ミドルレンジ環境専用製品ともいえた統合型チップセットのトレンドは大きく様変わりした印象を受ける。

 ちなみに、AMDのチップセットラインナップにおいて、最上位モデルの立場は引き続きAMD 790FXとなる。AMD 790FXは4本のPCI Express x16スロットを持てるという点でエンスージアストに対して強いアピールを持っている製品であり、プラットフォーム戦略上、この製品が最上位に据え置かれることは納得できる。

 ただし、AMD 790GXは内蔵グラフィック以外にも、AMD 790FXを超える機能を有している。それは、AMD 790FXのサウスブリッジが公式にはSB600という1世代前のものであるのに対して、AMD 790GXではSB750という最新チップが使用されることにある。

 SB750は、SB700とインターフェイスの種類や数に大きな違いはないものの、SATAポートがRAID 5をサポートしたのが大きな特徴となっている。AMDのチップセットは、この点でIntel、NVIDIAのチップセットで後れをとっていたことを否めないわけだが、SB750の登場で追いついたことになる。

【図3】より高い電圧で駆動させることでOC耐性を上げるほか、逆に低電圧動作も可能にする

 あくまでも推測にはなるのだが、こうした点を総合して考えてみると、サウスブリッジから信号を送ることでクロックと電圧を制御可能にしたもので、AMD OverDriveを利用して設定するというのが主体の機能に思われる。ソフトウェアを使うことで、従来よりもインテリジェンスな動作が組み込まれているのかも知れない。

 この機能をノースブリッジに組み込まなかったのは、AMD 790FXへの採用を意識してのことだろう。SB750はAMD 790FXとも組み合わせは可能だ。AMD 790FXはSB600やSB700もサポートするが、登場時期の問題が大きく、現実にはSB600を組み合わせ製品が市場に多く存在している。Advanced Clock Calibrationのようなエンスージアスト向け機能が追加されたことで、AMD 790FX搭載マザーのマイナーチェンジを含むモデルチェンジが進む可能性はありそうだ。

 次にHDD周りの性能であるが、SandraのFile Systems Benchmark(グラフ6)、PCMark05のHDD Test(グラフ7)、PCMark VantageのHDD Test(グラフ8)の結果を見てみたい。

 Sandraの結果ではAMD 790GXのランダムライト性能が際だって良好だ。PCMark05はわりとバラつきのあるスコアになっているが、ライト性能でAMD 780Gが一気に落ち込む場面が発生している。逆にAMD 780Gが優れた結果を見せたのがPCMark Vantageで、こちらはすべての結果においてAMD 790GXがAMD 780Gを下回る結果となった。

 これまた一貫性のある傾向が見出せない結果にはなっているが、少なくとも同じコントローラであるとは思えない明確な違いが出ている。SB700からSB750になってRAID 5対応となったわけだが、このストレージコントローラ周りはそれ以上に手が加えられていると想像される。

 続いて、両チップセットで実際のアプリケーションを動かした場合に、どの程度の性能差があるかを見るため、PCMark Vantage(グラフ9)、動画エンコードテスト(グラフ10)、3DMark Vantage CPU Test(グラフ11)、3DMark06 CPU Test(グラフ12)の結果をチェックしておきたい。

 全体の傾向として、内蔵グラフィック使用時にはAMD 790GXがAMD 780Gを上回る傾向となるのに対して、Radeon HD 3450(つまり外付けビデオカード)使用時にはAMD 780Gを使った方が良好という結果が見られる。
 若干、この環境はパフォーマンスを発揮しづらい傾向が見て取れる。BIOS、ドライバレベルの問題であれば、早急に対処してほしい。

 次に、これらの環境における消費電力である(グラフ13)。基本的には、AMD 790GXの消費電力が10W前後増している結果である。内蔵グラフィック使用時はアイドル時の電力がしっかり抑えられているように見受けられるが、外付けビデオカードを使うとその効果は失われており、内蔵グラフィックを無効にしても電力を多く消費する傾向にあることには留意しておくべきだろう。

●Radeon HD 3300とHybrid Graphicsの性能を見る

 まず、AMD 790GXは非常に素晴らしいスコアといって良いと思う。AMD 780Gからのスコアの伸びは非常に大きく、多くの場面で30%を超える性能向上を見せた。コアクロックは40%増しなので、こうした結果も納得できる。また、外付けビデオカードであるRadeon HD 3450を安定して上回るスコアを出せており、ローエンドビデオカードの存在意義が一層失われる感じも受ける。

 Hybrid Graphicsに関しても、内蔵グラフィックの性能向上があってか非常に優れた結果となった。Unreal Tournament 3の結果が分かりやすいが、こうしたクラスの製品が本来対象とするような、わりと軽量なゲームにおいて、AMD 780Gよりもワンランク上の解像度を許容できるようになったと見てよさそうである。

 最後にグラフィック使用時の消費電力の結果である(グラフ21)。AMD 790GXは性能も増したが、クロック増による消費電力アップも非常に大きい。また、AMD 780GのHybrid Graphicsは消費電力が増加しないことも大きな特徴であったが、AMD 790GXとの組み合わせでは大きく増加してしまっている。

 また、SidePortを有効にした場合、わずかではあるが、その分の消費電力増と思われる結果も見られる。そのわりに性能は伸びないわけで、ちょっとSidePortの存在には疑問が残る。中途半端な容量ではなく、UMAを完全に無効にしても安心して利用できる256MB程度の容量を搭載してしまった方が良さそうに思う。

●AMD 780Gとは違う価値を持つ製品

 以上の通り結果を見てきたが、チップセットの性能としては非常に優れている印象だ。機能面だけでなく、パフォーマンスも良好で、とくに3Dグラフィックスはローエンドビデオカードの存在価値を一気に失わせるだけのものがあると思う。

 そもそも、Radeon HD 4850のようなセミハイエンド級が2万円前後で購入できる現在、ミドルレンジビデオカードが1万台半ばをカバーすれば、ローエンドビデオカードのマーケットは非常に小さくなっている。1万円台前後のマーケットは統合型チップセットで十分だと思うからだ。従来のローエンドビデオカードであるRadeon HD 3450を軽く上回る性能を見せる統合型チップセットが登場したことはその流れを加速するだろう。

 また、AMD 780G搭載マザーのなかには、140W TDPのPhenom X4 9950を正式サポートしない製品もあるが、140W TDP製品計画後に発表された本製品の場合、そのハイエンド向け機能を活かす意味もあって、ほぼすべての製品がサポートするであろうことは想像に難くない。この点でも、統合型チップセットの上位モデルが登場したことは歓迎されることだ。

 ただ、AMD 790GXは、AMD 780Gとはまったく違ったユーザーが使うべき製品という印象も残る。Hybrid GraphicsやCrossFireXへの対応、Advanced Clock Calibrationといった機能の数々は、従来のようなコスト面を重視して統合型チップセットを選ぶという価値観とは、どうもマッチしないように思うからだ。また、消費電力が増してしまっている点をデメリットと捉える向きもあるだろう。省電力CPUの魅力が高まっているAMDプラットフォームだからなおさらである。

 こうした面から、AMD 790GXは一定以上の性能を求めるユーザーが選ぶ統合型チップセットという、これまでには存在しなかった新しいジャンルの製品だと感じている。逆にいえば、本製品の登場で影が薄くなる可能性もあったAMD 780Gも、ローコストや省電力を求めるユーザーには高い価値を持つ製品として存在意義が残ると思う。

 これで、前半でも少し触れたAMD 790FX+SB750の搭載マザーが登場することになれば、AMDプラットフォームのチップセットはハイエンドからローエンドまで魅力あるラインナップを揃えることになりそうだ。

□関連記事
【3月5日】【多和田】AMDのプラットフォーム戦略第2弾「AMD 780G」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0305/tawada133.htm
【2007年11月19日】【多和田】AMD初のPCI Express 2.0対応チップセット「AMD 790FX」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1119/tawada117.htm
(2008年8月6日)

[Text by 多和田新也]


HARDWARE-テストレポート 2008/08/06 13:01 テストレポート
  • 単体GPU「HD 3450」を凌駕する衝撃。「AMD 790GX」チップセットの実力検証

http://www.4gamer.net/games/040/G004039/20080806002/

ライター:宮崎真一

GA-MA790GP-DS4H
メーカー&問い合わせ先:GIGABYTE UNITED
予想実売価格:2万円前後(2008年8月6日現在)
ATIフォームファクタでCrossFireX対応
SidePort Memoryも標準搭載のGA-MA790GP-DS4H

 本稿ではまずGA-MA790GP-DS4Hをチェックしてみよう。
 本製品はATXフォームファクタを採用しており,PCI Express x16スロットを2本用意。AMD 790GXの仕様どおり,PCI Express 2.0 x16 ×1(※この場合2本めは無効),もしくはPCI Express 2.0 x8 ×2として利用可能で,2/3/4-way ATI CrossFireX(以下,CrossFireX)をサポートする。
 AMD 780Gマザーボードでも,Jetwayの「HA06」はCrossFireXをサポートしていたが,AMD 790GXは標準対応だ。他社製品でも,ATXフォームファクタを採用するAMD 790GXボードは,GA-MA790GP-DS4Hと同じような仕様になるものと思われる。

エルピーダメモリ製のDDR3チップ,J1116BASE-DJ-E(EDJ1116BASE)。1Gbit(64M×16)品である

 グラフィックスメモリにはメインメモリの一部を利用するUMA(Unified Memory Architecture)方式を採用するが,それとは別にAMD 790GXでは「SidePort Memory」(以下,SidePort)と呼ばれるグラフィックス用ローカルメモリ(LFB:Local Frame Buffer)を搭載可能。試用した個体では,エルピーダメモリ製のDDR3-1333チップで,容量128MBの「J1116BASE-DJ-E」を,SidePortとしてノースブリッジのすぐ近くに搭載していた。
 なお,UMAのグラフィックスメモリ容量はBIOSから64/128/256/512MBの設定を行えるようになっており,SidePortと合わせると最大640MBを割り当て可能だ。

なお,電源は4+1フェーズ仕様だった

SB750
 組み合わされるサウスブリッジは「SB750」。SB700の後継となる同ブリッジチップについては別記事を参照してほしいが,CPUオーバークロック時の安定性を引き上げるという

左:Serial ATAポートは6基用意
右:外部ディスプレイインタフェースはDVI-D,HDMI,D-Subの3系統。AMD 790GXはデュアルデジタル出力をサポートするが,GA-MA790GP-DS4HでDVI-DとHDMIは(少なくともテストしたBIOSでは)排他となる

現役世代のエントリーGPUを超えた!
AMD 790GXの3D描画性能はHD 3450以上

 テスト結果を見ていこう。グラフ1は「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)の結果である。LFB無効の790GXが,すべての解像度でわずかだが確実にHD 3450のスコアを上回っている点と,LFB有効でそのスコアがさらに1割ほど増している点に注目したい。
 また,グラフィックス機能統合型チップセットのスコアが,3DMark06のデフォルト設定となる1280×1024ドットでLFB有効時に2000を超えてきたのは,立派の一言。Hybrid Graphics有効時の800×600ドットで,スコアがほぼ5割増しとなっているのも,かなり優秀だ。

 続いてCrysisのスコアをグラフ2にまとめたが,3DMark06とほぼ同じ傾向を見せており,790GXのパフォーマンスは明らかにHD 3450以上。790GXと780Gを比べると,SidePortの効果は790GXのほうが強く出ている。

 さらにグラフ3はTPS「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下,ロスト プラネット)のベンチマークモード「PERFORMANCE TEST」から,実ゲームに近い傾向を見せる「Snow」の結果である。本タイトルではCrysisのように描画設定を下げたりせず,レギュレーション5.2そのままの設定でテストを行ったため,全体的にスコアは低めだが,グラフィックス描画負荷が極めて高い状態でも,790GXはHD 3450のスコアを確実に上回っている。

 RTS「Company of Heroes」(以下,CoH)の結果も,ここまでと同じ傾向だ(グラフ4)。790GXと780Gのスコア差は800×600ドットのLFB有効で33.7%と,AMDのアピールどおりになっている点も,なかなか興味深い。今回取り上げたタイトルのなかでは,CoHは描画負荷が低いほうだが,"軽い"タイトルでは,790GXの優位性がより発揮されると見るべきだろう。

 なお表3は,PC総合ベンチマークソフト「PCMark05 Build 1.2.0」の結果を一部抽出し,CrystalDiskMarkが出した結果の"裏"をとったものである。CrystalDiskMarkで790GXはランダムアクセス性能が遅く出ていたが,まさにランダムアクセス性能の求められる「Virus Scan」で,790GXのスコアは780Gに置いて行かれており,結果,「HDD Score」も低めに出ている。
 一方,「Memory Score」は790GXのほうが780Gよりもずいぶんと高い。この結果だけでは断言できないが,ひょっとすると,UMA周りのボトルネックが,790GXで改善しているのかもしれない。


動作クロックが上がるも消費電力は780Gと同等
Hybrid Graphics時の消費電力は要注目

790GXで,780G以上に省電力化が進んだと謳うAMD

 さて,AMDのプレゼンテーション資料では,790GXで消費電力効率が最適化されたと謳われている。そこで今回もいつものように,OSの起動後,30分間放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をそれぞれの実行時として,システム全体の消費電力を測定した。測定機材は,消費電力変化のログを取得できるワットチェッカー「Watts up? PRO」。結果をまとめたものがグラフ5になる。

AMD 790GXで省電力性がより高められているとはいえるだろう。

 また,HD 3450単体と790GX+HD 3450の値に注目してほしいが,ここではHybrid Graphicsを利用したほうが,HD 3450カード単体利用時よりも消費電力が低い。これはHybrid Graphicsにより負荷が分散され,HD 3450の消費電力が低減したためだと思われるが,「消費電力効率を重視してHybrid Graphics」という選択肢が浮上してきたのは興味深いところだ。

3D性能は確実に向上し,さらに魅力的な選択肢に
Intel製CPUと組み合わせられないのが残念

 ATI Radeon HD 3450は,エントリーモデルとはいえ,現行世代の単体GPUだ。それを超えたパフォーマンスを叩き出すAMD 790GXが,コストを最も重視するタイプの自作派PCゲーマーにとって,極めて魅力的なグラフィックス性能を持ったチップセットであることに,疑いの余地はない。グラフィックス機能のブランド名はATI Radeon HD 3300だが,"ATI Radeon HD 3500"あたりでもよかったのではなかろうか,と思えるほどである。

 描画設定を「中」で揃えたCrysisのスコアや,高い設定を行ったロスト プラネットのスコアを見れば分かるように,描画負荷の高いゲームを,リッチなグラフィックスオプションでプレイするには無理がある。しかし,Company of Heroesクラスで「描画設定を少し下げれば快適にプレイできる」レベルに到達しているのはポイントが高い。プレイするPCゲームは負荷の比較的低いオンラインRPGなどが中心,というのであれば,有力な選択肢となるはずだ。3D性能に不満が出てきたら,後から単体グラフィックスカードを購入するなり,CrossFireXを組むなりすればいい。
 Hybrid Graphicsに関しては,「わざわざグラフィックスカードを買い足すなら,ミドルクラス以上のGPUを搭載したものにすべき」という点でAMD 780Gと変わらないが,消費電力効率を第一に考えながら性能向上を目指す場合に限り,選択肢となり得よう。

 それにしても惜しむらくは,790GXがIntel製CPUと組み合わせられないことだ。「Core 2 Duo E7200/2.53GHz」あたりと組み合わせられればと思うに,「ATI Radeon Xpress」の新製品が登場し得ないのは残念でならない。

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