アスリートの勝利と敗北の身体的表現は万国共通のもの
http://health.nikkei.co.jp/hsn/hl.cfm?i=20080821hk001hkアスリートを対象とした研究により、金メダリストの誇らしげな姿勢や、敗北した選手の落ち込む姿勢は、後天的に学習したものではなく、生まれながらのものであることが示され、米国科学アカデミー発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」オンライン版に8月11日掲載された(印刷版は8月19日号に掲載)。
カナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学による今回の研究では、2004年のアテネオリンピックおよびパラリンピックに出場した世界各国の柔道選手について、視覚正常、目が不自由、先天的に目が不自由な選手を観察した結果、成功や失敗の状況に対していずれも同じ行動を取ることがわかった。「先天的に目の不自由な人は、他人を見て自信や屈辱を示す行動を学ぶことができないため、これはヒトが生まれつきもっている性質である可能性が高い」と、同大学のJessica Tracy氏は述べている。
各試合の最中および直後の選手の写真を検討すると、勝った選手は視覚や文化の条件にかかわらず、腕を上げる、上を見上げる、胸を張るという傾向があった。また、敗者の行動も世界的に共通する部分が大きく、肩を落とす、胸を縮めるなどの行動がみられた。
視覚の正常な選手にはある程度文化による差がみられ、北米や西欧のような個人主義的で自己表現に価値を認める文化で育った人は、羞恥(しゅうち)心を隠そうとする傾向が強かった。一方、先天的に目が不自由な選手には文化による差がみられなかったことから、視覚正常者にみられるこの差は文化の違いによるものと考えられると研究グループは述べている。Tracy氏は、この知見は個人の社会的地位を決める上で自尊心と羞恥心が強く働いてきたという進化上での説明を裏付けるものだとしている。
[2008年8月11日/HealthDay News]