【代理店取引】独占禁止法の法律相談 2008年8月21日22:05
Q、
並行輸入品を取り扱わないことを条件に輸入総代理店として自社が輸入している製品を販売することは、独占禁止法上、問題でしょうか?
A、
並行輸入と拘束条件付取引
場合によっては、独占禁止法に違反し、排除措置命令の対象になる場合もあり得る!
代理店取引に関わる問題
問題点とリスク
『A製品の輸入総代理店として、日本国内においてA製品を販売しているところ、小売業者Bが並行輸入品の取り扱いもはじめたのを知り、Bに対するA製品の販売を打ち切った。』
『G製品の輸入総代理店として、日本国内においてG製品を販売しているところ、小売業者LがG製品の購入を申し入れてきた。』
上記のような行為に見覚えのあるかたは要注意です。
上記の行為は、場合によっては、不公正な取引方法に該当するとして、公正取引委員会から排除措置命令の対象になる可能性があります。
排除措置命令の対象になると、『独占禁止法に違反した違法行為に従事した企業』というレッテルが貼られることになりますし、排除措置命令が確定すると、民事損害賠償訴訟では、行為の違法性が推定されて敗訴する危険性が高まります。
さらにやっかいなのは、排除措置命令が発令された場合に、当該命令に違反してしまった場合には、刑事罰が適用されることです。刑事罰の重さは、個人については2年以下の懲役又は300万円の罰金、法人については3億円以下の罰金(両罰規定)です。
並行輸入が自由になされれば、販売総代理店が販売する製品が売れなくなるかもしれないという危惧を抱くことには理由がないとはいえません。しかし、代理店の利益を守ろうとするあまり、独占禁止法違反となり、『独占禁止法に違反した企業』というレッテルが貼られてしまったり、場合により刑事罰が課されるようなことになれば本末転倒です。
独占禁止法に違反するような事態はすべからくこれを避ける必要があります。
問題点の解決方法
問題点の解決方法としては、第1に、並行輸入品の輸入妨害に繋がるような拘束条件を一切付さない、あるいは条件を飲まない小売業者に対しても製品を販売するということが考えられます。自社の利益率は減少するかもしれませんが、独占禁止法に違反しないという観点からは、この方法が最も確実といえます。
第2に仔細な市場分析に基づき、拘束条件を付したり、条件を飲まない小売業者との取引を拒否しても、市場に影響が発生せず、価格維持という効果が発生しないことが確実な場合以外は、輸入妨害に繋がりかねない行為はしないという方法が考えられます。但し、市場分析は、必ずしも容易ではない上、市場確定の方法如何では、容易に競争阻害的効果の大きさも変わってくるので、第2の方法による場合は、くれぐれも、慎重に市場の外縁を確定し、その効果を分析する必要があります。
いずれにしても、並行輸入品を阻止しようとするあまり、足元をすくわれ、『違法企業』というレッテルが付いてしまっては一流企業への道は、遠くなるばかりです。
このような事態はすべからくしてこれを避けるべきです。