2010年2月25日木曜日

強力な血糖コントロールは死亡リスクを高める

強力な血糖コントロールは死亡リスクを高める(2010.2.25掲載)

http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=2337&Itemid=39

非常に強力な血糖コントロールは2型糖尿病患者の早期死亡リスクを高め、そのリスクはインスリン使用患者ではさらに高いことが示された。研究著者である英カーディフ大学医学部のCraig J Currie博士らは、血糖値の高閾値に加え、低閾値も含めるよう糖尿病ガイドラインの改訂を提案している。

長くにわたって、糖尿病患者の血糖値についての標語は常に「低く」であった。しかし、英医学誌「Lancet」オンライン版に1月27日掲載(印刷版は2月6日号に掲載)の今回の報告は、血糖値低下の不利益を指摘した最初のものではない。過去2つの研究で、過度の血糖値低下は利益がないばかりか、2型糖尿病患者の死につながることが示されている。

今回、Currie博士らは、糖尿病治療薬メトホルミン(日本での商品名:メルビン、グリコランなど)およびスルホニル尿素(SU)薬を使用していた2型糖尿病患者約2万8,000人、および約2万人のインスリン使用患者について、後ろ向き研究を行った。その結果、死亡率が最低だったのはグリコヘモグロビン(HbA1c)中央値が7.5%の群で、血糖値が最低(HbA1c中央値6.4%)の群は、7.5%群よりも死亡リスクが52%高く、血糖値が最高(HbA1c中央値10.5%)の群では、7.5%群より死亡リスクが79%高かった。

また、インスリン使用群での死亡リスクが高かったが、「これはインスリン使用患者ではより病状が重いことで説明できる可能性もある」と米ニューヨーク州立大学ダウンステートメディカルセンター教授のMary Ann Banerji氏は述べている。インスリン使用患者が高齢であることを指摘する意見もある。

この問題はまだ議論の途上で、薬剤、インスリン、生活習慣の改善など、どういう方法にせよ糖尿病患者は血糖値を下げる努力を決してやめてはいけないと説く専門家もある。ただし、血糖値が低くなりすぎないよう注意が必要となる。米コロラド大学(デンバー)のDaniel Bessesen博士は「絶対に避けたいのは低血糖で、もし運転中に低血糖が生じた場合には事故を引き起こす可能性がある」と述べている。今回の研究では、実際に低血糖に至った例はほとんどなかった。

米国糖尿病協会(ADA)のRichard Bergenstal博士は「HbA1c 目標値は個別に設定することが必要で、誰もが7.5%を目標にという話ではない。ADAでは、安全に下げられるなら7%付近を目標としているが、7%が達成できず低血糖で7.5%にしなくてはならないならばそうすべきである」と述べている。(HealthDay News 1月26日)

http://www.healthday.com/Article.asp?AID=635375