認知症?…上手な受診法
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=18191かかりつけ医に相談 / 「健康診断」勧める
「なかなか受診したがらないときには、勧め方を工夫してみましょう」と話す杉山恒之さん(東京都多摩市の新天本病院で)=西村洋一撮影
もの忘れがひどくなり、場所や時間がわからなくなることも――。親や配偶者にこうした認知症を思わせる症状が出た時、家族はどう対応したらよいのだろうか。まずは医師に相談し、早期治療につなげることが大切。上手な受診のコツを知っておきたい。
昨年度、「認知症の人と家族の会」東京都支部には738人から電話相談が寄せられた。「介護方法など」(670件)を尋ねる電話が大多数を占めたが、2番目に多かったのが「受診」(110件)に関すること(重複あり)。「受診を巡って悩む家族は少なくない」と同支部副代表の大野教子さんは指摘する。
まず〈どこの病院を受診したらいいかわからない〉という相談が多い。認知症の専門医は、精神科や神経内科、脳神経外科、老年科などにいる。「もの忘れ外来」の看板を掲げた病院もある。事前に電話確認してから受診したい。頭部の画像検査や面接などで認知症かどうかを診断してもらって、早期に治療を始めれば進行を遅らせることもできる。
ところが、〈受診させたいが、本人がどうしても嫌がる。どうしたらいいのか〉と悩む家族も少なくない。症状に気付かない本人が「健康なのになぜ病院に行くのか」と不信感を募らせるケースもあるという。大野さんは「強引に受診させるのは、本人を傷つけることになる。まずは家族が心配している気持ちをよく伝えて」と話す。
新天本病院(東京・多摩市)もの忘れ外来担当医の杉山恒之さんは、こうした場合には「健康診断に行こう、と勧めてみては」と提案する。「家族が検査をするので付き添ってほしい」と本人に頼んで一緒に病院に行く方法もある。また、信頼するかかりつけ医から「受診してみてはどうか」とひとこと言ってもらうと、素直に病院に出かけることもある。家族だけでまず相談する方法も。
受診の際、家族は「いつごろから、どんな症状があるのか。どんなことに困っているか」を書いたメモを医師に渡すとよい。「大事なことを伝え忘れる心配はないし、本人の前で症状の説明をしなくても済みます」と杉山さん。
なお、認知症と診断された場合本人にどう話すのか、告知についての希望をあらかじめ医師に伝え、相談しておくことも大切だ。
専門医だけでなく、高齢者が日頃から通院する地域のかかりつけ医で認知症の相談がしっかりできるように、厚労省は2006年度から「かかりつけ医認知症対応力向上研修」を行っている。認知症診断の知識・技術、患者や家族への対応法、ケアマネジャーとの連携などについて学ぶ。昨年度までに全国の医師約2万1000人が受講した。
地域の医師会によっては、研修を受けた、こうしたかかりつけ医をホームページで公開しているところもある。杉山さんは「受診先については、専門医にこだわらず、地元の地域包括支援センターなどにまず相談してみましょう」とアドバイスする。
(2009年12月11日 読売新聞)