2009年12月13日日曜日

【軽度脳損傷】遅すぎるWHO基準で初調査、国内で確認

【WHO基準日本で認めず】軽度脳損傷、自賠責請求棄却 2009年12月13日日曜日
サイエンス

軽度脳損傷:国内で162人を確認 WHO基準で初調査

http://mainichi.jp/select/science/news/20091213k0000m040101000c.html

 交通事故や転落などで脳に特異な損傷を負う軽度外傷性脳損傷(MTBI)と診断された人が少なくとも、20都道府県で162人(3~76歳)いることが分かった。湖南病院(茨城県下妻市)の石橋徹医師らが世界保健機関(WHO)の基準に照らして国内で初めて調べた。MTBI自体が国内で認知されていないため救済措置がなく、労災や自賠責保険の認定基準も適用されない。

 石橋医師(整形外科)は05年春から約8000人を神経系の眼科、耳鼻科などの医師とともに診断した結果、162人が(1)負傷直後の意識障害の有無(2)その程度を点数化した指標(GCS)--で判断するMTBIのWHO基準を満たした。該当者は、磁気共鳴画像化装置(MRI)などで脳内の損傷が映りにくい特徴がある。

 原因別では、交通事故の125人(77%)が最も多く、高所転落11人▽落下物10人▽転倒9人▽スポーツ外傷4人▽暴力3人。症状別では、記憶・注意力などが低下する高次脳機能障害85人▽脳神経まひに由来するとみられる身体的障害(嗅覚(きゅうかく)54人、視覚68人、味覚66人、聴覚・平衡感覚68人、嚥下(えんげ)68人)▽筋力低下などの身体まひ138人▽排尿排便障害63人=以上重複あり。

 米国には患者を支援する外傷性脳損傷(TBI)法がある。米疾病対策センター(CDC)の報告(03年)によると、年150万人がTBIと診断され、うち75%がMTBIとされる。高次脳機能障害に詳しい大阪府高槻市の山口研一郎医師(脳神経外科)によると、国内のTBI患者は推定で約30万人いる。【宍戸護】
 ◇軽度外傷性脳損傷(MTBI)

 頭部に物理的な力が加わり起きた急性の脳損傷を外傷性脳損傷(TBI)と呼ぶ。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されるが、国内では軽度の概念がない。欧米では7~9割が軽度とされ、そのうちの1割が慢性化するとされる。原因は、脳の複数の神経線維が傷ついたびまん性軸索損傷と考えられている。米国では、イラクなどの戦場で爆弾攻撃を受けて重傷を負った帰還兵の52%がTBIと診断された調査結果がある。
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ことば:軽度外傷性脳損傷(MTBI)
http://mainichi.jp/word/news/20091213ddm001040065000c.html

毎日新聞 2009年12月13日 2時30分(最終更新 12月13日 17時14分)