大げさでも何でもなく何から何までどのメーカーと比べても、比べるのが無理というくらい圧倒的な差だった。
しかしそのころの日本では全く無視された製品だった。
WATT(発音:ワット。Wilson Audio Tiny Tot ウィルソン・オーディオ・タイニー・トット)は今と違いセットされたウーファー部は存在せず、しかも強烈なツイーターの猛烈でアグレッシブな表現、恐ろしくハイ上がり/あり得ないほどtweeterのレベルが高く、人に受け入れられにくい製品だった。
WATTはウィルソン・オーディオ・タイニー・トットの略称で『ウィルソンオーディオのちびっ子』というかわいらしいネーミングの割にとんでもなく厳しく、アンプやプレーヤーなどの接続機器、所有者のセッティング能力やかけられる金額・時間を暴くスピーカーだった。接続機器の音の悪さを拡大して見せつけるスピーカーだった。
純正で用意されたコーヒーテーブル型の46センチウーファーのサブウーファー、WHOWは本当にテーブルサイズのうえにものすごく値段が高かった。
サブウーファーはわからないが青山にあった『らっぱ堂』くらいしか当時置いてなかったと思う。
クオリティはものすごいものの、前述したとおりの性格のスピーカーだったため聴いたことがある人も受け入れにくい製品だったと思う。
話はそれるがらっぱ堂は当時は同じくらい珍しいコンデンサー型のマーティンローガン社のスピーカーも積極的に大プッシュしていた。他にも似たような状況のアンプメーカー・SPECTRALスペクトラルも扱っていた。(スペクトラルは個人的にいいと思ったことはない。)両社はまた日本で存在感の薄い状態になっている。
クオリティは高いが日本で受け入れられないメーカーを浸透させようとしていたが、そのせいなのか力尽きて倒産してしまった。
そんな感じで登場からかなりの期間、売れないが孤高の存在と言えるほど群を抜いていたウィルソンオーディオ社。
ただ最近はどうかな?と思うものが続いていた。
ネットワークの時間軸にフォーカスして改良を加えるようになってから疑問を感じるようになっていた。
他のメーカー、特に初期はエキセントリックな帯域特性に感じられたアバロンがニュートラルになっていくにつれ、全体的な性能が追い抜かれ、最近はさらに差が広がってきていた。空間表現力とか周波数特性の広さとか帯域バランスとか、「ちょっと最近足踏みしているのではないか?それに足踏みが長すぎる」と感じていた。
特に一番嫌なのがツイーターだ。
これについて自分は英B&W社のことが思い出されてしょうがない。
B&Wは多くの人が『あのアルミ鍋ひっぱたいたような音のツイーター』『何とかならないの?』『あのツイーターの共振音が我慢できない』と言ってもかたくなに『アルミ製のツイーターは理想』『最も理想的な物性』と主張していた。『他の素材もテストしているがダメ。良くない。物理特性が良いものがあればB&Wは絶対そちらを使う。アルミ(の物理特性)が理想』と言いつつ、『単純に私はアルミの音が好きなのです。だからアルミを使うのです』と物理特性だけで選んだと言った舌の根も乾かないうちに“単純に私はアルミの音が好きだから使う”と設計者の感情だけでアルミのツイーターを使っていることを告白していた。
イギリスのスピーカーでアルミツイーターを使っているところは多くあったが、B&Wみたいに安っぽい共振音がうるさいのは無かった。特に高音が耳障りといわれる日本のスピーカーでもあそこまでのは滅多になかった。
B&Wはダイアモンド製ツイーターを搭載し、やっと癖が無くなった。今度、そのDシリーズも下位機種までダイアモンドツイーターを搭載したDiamondシリーズに変わるそうだ。エンクロージャーがアルミと木材(?と思われる)をサンドイッチした素材から作られたものを見たことがあるが実際の新製品はどうなっているのだろうか?
ゴールドムンドのTELOS 5000のように見た試作機と全く違うことも多いので楽しみではある。
さて、話を戻すとウィルソンはアルミではなくチタンツイーターに魅入られているのが問題だ。
癖が少なければ文句はないが、あのシャキーンとした鋭い癖のある音が好きなのは困る。
昔と違って高性能でいいスピーカーが増えた。
以前と違って孤高のクオリティという状態ではない。それなのにいまどきあんな癖の強いチタンツイーターを至宝のようにありがたがっているのはよく分からない。高齢になり高域が聞えなくなっているのか、理解できない。
私の経験でいえば良い順から、イオン型ツイーター(コロナ型ともプラズマ型ともいろいろ製作者により呼称が変わる)、B4C、純マグネシウム、ダイアモンドツイーターといったものが素晴らしかった。
イオン型は電源が必要なことや、それ以上に安定的に使えるようにするのが大変で採用しないだろうし、B4Cは三菱ダイヤトーンに聞いたことがあるが他社には供給しないということだから無理だ。リボン型はリボン鳴きの共振音がとっても難しく、またウィルソンの音と合わないと思う。コンデンサーツイーターは難しい。スーパーツイーター的な使い方なら面積が小さくても大丈夫だから指向性も広く、小さい面積でも能率が一般的に使えるレベルになりそうだがコンデンサーの音は千差万別すぎて難しい。あと、人から言われそうなムラタの圧電セラミックはディレイがかかってそれが何とかならない限り問題外だ。私は全く良いと思っていない。
現実的には純マグネシウムかダイアモンド製ツイーターだと思うが、ウィルソン本人が『チタンの音が好き』といっているんだから仕方無い。
かつてのB&Wのように抜け出すとしても時間がかかるだろう。
ネットワークの群遅延特性や時間軸よりチタンツイーターのクセから抜け出すほうが先だろう。
2009年12月21日
2010年から
Wilson Audioの輸入販売業務、大場商事からアクシスに移管
http://www.phileweb.com/news/audio/200912/21/9624.htmlファイル・ウェブ編集部
大場商事(株)とアクシス(株)は、これまで大場商事が行ってきた米Wilson Audio Specialties社製品の輸入販売業務を、2010年1月1日よりアクシスに移管すると発表した。
2010年以降のWilson Audio製品の販売及びアフターサービスは、アクシスが担当することになる。
【問い合わせ先】
アクシス(株)
TEL/03-5410-0071
大場商事(株)
オーディオ事業部
TEL/03-3479-5181
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