救急外来の受診、「軽症者に特別料金」見送り
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20100127ATFS2702F27012010.html中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)は27日に開いた総会で、症状が軽いのに救急外来を受診する患者から特別料金を徴収する新制度の4月導入を見送ることを決めた。厚生労働省は救急病院に勤める医師の負担を軽減するために導入したい意向だったが、中医協で「軽症か重症か患者には分からない」などと反対意見が出たためだ。
厚労省は中医協に虫刺されなどの軽症患者が全国221カ所にある救命救急センターの救急外来を訪れた場合に、保険診療の自己負担分とは別に特別料金を徴収できるようにする案を提案した。「指にトゲが刺さった」などの理由で気軽に救急病院で受診する「コンビニ受診」が広がり、勤務医の負担が重くなっていると判断したためだ。
だが、中医協では「逆にお金を払えば(軽症でも)救命救急センターに行っていいことになりかねない」と慎重論が出て、委員の間で意見がまとまらなかった。厚労省は今後、患者への注意喚起や広報活動で対応する。(00:50)
軽症の救急患者から特別料金、10年度は見送り
http://www.asahi.com/national/update/0127/TKY201001270429.html2010年1月28日0時21分
症状が軽く必要性が低いのに救急外来を受診する患者から特別料金を徴収できる仕組みについて、中央社会保険医療協議会(中医協=厚生労働相の諮問機関)は27日、新年度の診療報酬改定での導入見送りを決めた。委員間で合意が得られず、断念した。ただ、救急医療の適正な利用を求めていく点では一致し、当面は啓発活動を充実させることで対応する。
軽症患者が、自分の都合で夜間や休日に受診するケースがあり、救急医療現場の負担増加につながっていると指摘されている。中医協は、医師らの負担軽減策の一環として特別料金の徴収を検討。対象を重度の患者を受け入れる救急救命センター(全国で221施設)に限定したうえで、診療前に患者側に周知することや診療の優先順位の基準を各医療機関で策定する――などを条件に徴収できる仕組みが検討されていた。徴収対象の典型例として「虫さされがかゆい」「海外旅行なので、いつもの薬をたくさんほしい」が示されていた。
この日の中医協では、患者ら支払い側委員が、「患者自身が(軽症か)判断できないことが多い」「逆に、お金を払えば(救急に)行っても良いとなりかねない」など導入に反対。患者に適正利用を働きかける取り組みをしたうえで、検討すべきだとの意見が出た。
これに対し、医師ら診療側委員は「本当に救急医療が必要な人が受けられないことがある」など導入の必要性を訴えたが、新年度からの導入は時期尚早と結論づけられた。
ただ、現在も一定の条件を満たして救急外来で特別料金を徴収している場合は、今後も継続できる。
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救急・外科に重点配分 厚労省が診療報酬改定の骨子案(1/14)
病院勤務医もタイムカード 中医協、特別料金は見送り
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010012701000789.html中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)は27日、過重な労働が問題となっている病院勤務医の負担軽減策について、タイムカードで勤務時間を把握するなど労働環境整備の要件をまとめ、2010年度診療報酬改定から導入することで合意した。
また、救急外来受診の軽症患者に特別料金を課す案については、今回改定では見送りを決めた。
勤務医の労働環境整備の要件は、一部の報酬加算を受け取るための前提。改善に努めた病院に手厚く配分する狙いだ。
要件は(1)勤務時間を客観的指標で把握(2)勤務状況の改善提言を行う責任者を配置(3)負担軽減計画の策定に当たる委員会を設置(4)同計画を厚生局に提出(5)目標の達成状況を年1回報告―の5点。報酬加算には全要件を満たさなければならない。
一方、夜間など時間外でも気軽に来院する「コンビニ受診」の抑制を目的とした、一部の軽症患者からの特別料金徴収は「患者側に軽症受診を控えるよう呼び掛けるのが先だ」と支払い側委員が反対した。
2010/01/27 19:26 【共同通信】
10年ぶり引き上げで中医協 診療報酬 配分めぐり攻防
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2010012802000060.html2010年1月28日
医療崩壊の流れを食い止めようと、十年ぶりの引き上げが決まった二〇一〇年度の診療報酬。厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)で現在、具体的な報酬配分を検討している。改定案の答申は二月中旬に迫っているが、病院と診療所の再診料統一などでは、議論が暗礁に乗り上げている。(佐橋大、境田未緒)
「再診料は最低でも七十一点(七百十円)だ」。今月十五日の中医協総会。委員の一人、安達秀樹・京都府医師会副会長は、病院の再診料を上げ、診療所を下げて統一するよう求めた健康保険組合側の委員に反ばくした。
病院や診療所の初診料は一律だが、再診料は病院(二百床未満)が六百円、診療所は七百十円。再診料で差が生じたのは一九八五年から。厚生労働省は「病院は入院患者の受け入れ、診療所は外来患者の診察と、それぞれの機能に力を入れてほしいという観点から差をつけてきた」と説明する。ただ、近年は同一サービス同一料金の考え方や、病院重視の流れもあり、中医協は改定の骨子案で、再診料統一を打ち出した。
問題は、どこで一本化するか。健保など医療費を支払う側の委員や厚労省は、診療所の再診料を下げ、病院を上げて一本化する考え。開業医が主体の日本医師会(日医)などは、診療所レベルへの引き上げを求める。
日医によると、診療所の収入に占める再診料の割合は8・5%と高く、引き下げれば経営が成り立たなくなる診療所も出るという。民主党内にも日医に同調する動きがあり、混迷を深めている。
◇
傷の処置や検査をせず問診だけの場合、再診料に上乗せされている外来管理加算(五百二十円)も焦点の一つ。目に見える検査などと違って患者には理解しにくい料金で〇八年、「懇切丁寧な説明」を要件として、問診が五分超でないと加算を認めない「五分ルール」が導入された。
時間だけで機械的に診察の価値を決めるルールに医療関係者は反発。「(医療界全体で)年間八百億円の減収になった」との主張もあり今回、ルール撤廃が決まった。撤廃だけでは算定回数が増えて財源を圧迫する可能性があり、新たな要件や加算額の見直しが必要とみられるが、議論は進まない。
このほか勤務医の負担軽減策で、救命救急センターを受診した軽症患者から特別料金を徴収する制度も検討課題だが、日医などは時期尚早としている。ぎりぎりまで、限られた財源をめぐる配分の攻防が続きそうだ。
◆無駄解消へ患者も協力を
中医協の議論は、昨年十二月に社会保障審議会の医療部会・医療保険部会がまとめた「診療報酬改定の基本方針」に沿って進められている。医療部会長として方針をまとめた斎藤英彦・名古屋セントラル病院長に改定の考え方などを聞いた。
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基本方針は「救急、産科、小児、外科などの医療の再建」「病院勤務医の負担の軽減」を重点課題とした。
ただ、医療費全体の底上げは必要。日本の医療費の対国内総生産(GDP)比は国際的に見て低い。一方で自己負担額は高い。厳しい経済環境が続く中、底上げ分は税金でカバーすることも必要では。外科医の減少などがあり、特に手術点数を上げなければいけない。
ちょっとした風邪で大病院に行けば、重症患者に手が回らなくなることもある。同じ病気であちこちの病院にかかれば同じ検査を繰り返し、医療費がかさむ。現場の疲弊を防ぎ、医療費の無駄遣いをなくすためにも患者さんの協力は欠かせない。
今後は国民がどのレベルの医療を望み、そのためにどれほど金を使っていいのか合意を得ていく必要もある。
◇診療報酬改定骨子案の主な内容
充実度評価の高い救命救急センターの加算引き上げ
ハイリスク分娩(ぶんべん)管理加算の増額と対象拡大
新生児集中治療室(NICU)管理料の報酬引き上げ
手術料全体の評価の引き上げ
医師事務作業補助者を配置した場合の加算
救急病院を受診した軽症患者からの特別料金徴収の検討
病院と診療所の再診料統一に向けて内容を検討
外来管理加算の5分ルールの廃止と新たな点数や要件の検討
薬局での後発医薬品の調剤について規制を緩和
<診療報酬> 患者や公的保険から病院や診療所に支払われる手術や検査、投薬などの医療サービスの公定価格で2年に1度改定される。内容ごとに点数化され1点10円。小泉内閣以来の社会保障費抑制策で、過去4回引き下げが続いていた。