冤罪、再審事件の録音テープ 有罪誘導へ"加工"跡も
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/local/news/20100122/271976(1月22日 05:00)
21日の足利事件再審公判で菅家利和さん(63)の取り調べ録音テープが再生されたが、これまでにも冤罪や再審開始が決まった各地の重大事件で捜査当局の録音テープの存在が明らかになっている。各事件とも極刑が予想される殺人事件で、捜査が難航した共通項を持つ。
捜査当局側は重大事件をめぐる供述の任意性や信用性を担保する目的で録音したとみられるが、否認部分はなく「自白」のみを録音したり、都合よくテープを改ざんした形跡があった例などもあり、捜査当局側が有罪証拠となるよう恣意的に録音していた実態を浮き彫りにしている。
「捜査段階で茨城県警の刑事が2回、取り調べを録音した。しかしそれは、もう調書になった嘘の『自白』の内容を刑事に言われるままそのまま話した場面なんです」。2009年12月に再審開始が確定した1967年の「布川事件」の元被告桜井昌司さん(62)は強調した。
約40回に及んだ一審水戸地裁土浦支部の公判では共犯とされた杉山卓男さん(63)とともに一貫して無罪を主張。法廷では録音テープが再生され取り調べられたが、同支部は逆にテープから「自白」の信用性を認定し無期懲役判決を下した。
桜井さんは「テープ2本のうち1本はようやく第2次再審請求で検察側が提出したが、供述した内容を都合よく改ざんした形跡が見つかった。取り調べ過程をすべて録音・録画する全面可視化が急務だ」と訴える。
1954年に山口県で起きた「仁保事件」で検察側は、「自白」の任意性を立証するため計33本の取り調べ録音テープを裁判に提出。しかし容疑者とされた男性は、録音されていない日に拷問を受けて「自白」に追い込まれ、その後の取り調べを録音された。
1974年に兵庫県で発生した「甲山事件」の冤罪被害者山田悦子さんの取り調べ録音テープを録った元検事の原伸太郎弁護士(広島弁護士会)は「自白して後に任意性が争われた際の証拠となるよう隠し録りした。もし任意性や信用性を立証できない録音なら、その存在は明らかにしないものだった」と打ち明けている。
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