2010年1月15日金曜日

終身保険は解約しないと損! "保険なし"でも何とかなる理由

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終身保険は解約しないと損! "保険なし"でも何とかなる理由

http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20100108/1030735/

2010年01月15日
 景気低迷、ボーナスカット……。収入増を見込めない状態では、出費を抑えるしかない。毎月支払う固定費なども含めて家計の"仕分け"が必須。そこで大きなウエートを占めてくるのが保険の見直しだ。

 生命保険や医療保険の見直しは、自分には関係ない。結婚や出産といった数少ないライフイベントのときに検討すればいい──。そう思っている人も、ぜひ目を通してほしい。保険商品を何度か乗り換え、特約が山ほど付いている人。あるいは保険ショップなどで入念に見直しをしたつもりで満足している人。どちらも実は見直しが必要な可能性が高いからだ。あなたは知らず知らずのうちに"損"をしているかもしれない。例えば生命保険の場合、見直せば1年で10万円以上の保険料を浮かせられるケースもある。


規制緩和の影響で、さまざまな保険会社の商品を扱う「乗り合い型保険ショップ」が急増(撮影協力、ライフプラザホールディングス)(画像クリックで拡大)


 見直しは、「加入中の保険の保障額が本当に必要かどうか」を見定めるところから始まる。何かあったときに手にする保険金が足りないのは困るが、必要以上の額が保障される保険に入っていることは、貴重な家計費から無駄な保険料を割いていることと同義。実際、多額の保険料をつぎ込み、必要以上に保障を手厚くしている人がほとんどなのだ。

 具体的な見直しで忘れてはいけないのが、「トータルで万が一に備える」という発想で臨むこと。公的保障や勤務先の福利厚生、また、貯蓄も"保険"になる。それらをもってしてもカバーできない将来の金銭的リスクのみ、必要最低限の保険で賄うのが正解。保険はあくまで最後の切り札であることを肝に命じたい。


保険で備えるべきは、公的保障や福利厚生などでカバーしきれない、最後の残りの部分だけ


公的保障だけでも年150万円の死亡保障。住宅ローンはゼロに
 例えば、大半の人が恩恵を受けられる公的保障は、死亡保障と医療保障のどちらの場合でも"活躍"する。死亡保障を例に取ると、40歳で夫が死亡した場合、妻は月額13万円程度、年額に換算すると約150万円を受け取れる(子供1人、夫は年収500万円の会社員、妻は専業主婦。以下同)。一方、医療保障でも公的保障の貢献度は高い。1カ月の治療費が100万円かかったとしても、本人3割負担の健康保険に加えて、高額療養費制度を活用することで毎月の自己負担は計9万円程度で済む。貯蓄がある程度あれば、決して払えない額ではない。

【死亡保障】
公的保障だけで月額十数万円?

遺族基礎年金

 被保険者が死亡したとき、その遺族に支払われるもの。18歳までの子供がいる家庭のみ給付対象となり、子供の人数によって額は変わる。例えば、子供が1人いる妻の場合、月額8万5000円(年額102万円)が給付される。また、子供が2人いる場合は、月額10万4000円程度(年額125万円程度)になる。ただし、被保険者の保険料納付済み期間と免除期間が、加入期間の3分の2以上であることが給付の条件(※)。

中高齢寡婦加算

 厚生年金保険に加入している会社員の夫が死亡したとき、妻が40歳以上65歳未満の場合に限り、月額5万円程度(年額60万円程度)が遺族厚生年金に上乗せされる。給付を受けられる期間は、遺族である妻が40歳から64歳までの間だが、18歳までの子供がいる場合に給付される遺族基礎年金の受給期間中は、対象外になる。共済組合にも同様の制度があり、厚生年金保険の場合と同じ条件で年金を受け取ることができる。

遺族厚生年金

 企業で働いている被保険者の遺族に支給されるもので、平均給与の額によってその額は変わる。年収500万円の夫が死亡した場合に受けられる給付額は、月額4万円程度。年間では約48万円になる。夫が死亡した時点で妻が30歳以上の場合は一生給付を受け取れるが、子供のいない30歳未満の妻の場合、5年間のみの受給となる。遺族基礎年金と同様、保険料納付済み期間(保険料の免除期間を含む)が、加入期間の3分の2以上であることが給付の条件になる(※)。

※ 死亡日に65歳未満であれば、死亡月を含む月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうち、保険料の滞納がない場合、受給できる

■40歳の夫が死亡した場合、当面の給付額は年間150万円程度

注)代理店トータス・ウィンズの研修ソフト「トータくん」の遺族年金シミュレーションを利用して編集部で試算、四捨五入したものを掲載。年収500万円の男性会社員が、同じ年齢の妻と30歳で結婚、すぐに第1子が誕生したと想定(死亡年齢が30歳男性の場合は25歳)。妻は専業主婦とした

【死亡保障】
万一のとき、住宅ローンはゼロになる
◯死亡見舞金
◯団信付きの住宅ローンなど

 過不足ない死亡保障額を考えるうえで忘れてはならないのが、勤務先の福利厚生や貯蓄。勤続年数や社内での資格などで額は変わるが、福利厚生として死亡退職金や弔慰金などを得られる場合がある。例えば、死亡見舞金で数百万円が出ることも。また、住宅ローンを契約している人なら、団体信用生命保険(団信)に加入しているはず。契約者が死亡した場合、ローン残額は保険金で清算される。死亡すればその人の出費が減ることも考慮するべきだ。

【医療保障】
どんな重病でも、医療費負担は月々10万円以下
◯高額療養費制度
◯傷病手当金など

 公的保障や福利厚生に着目すれば、医療保険で賄う保障額を大幅に減らせる。特に高額療養費制度は要チェック。健康保険加入者は医療費の3割を負担するのが原則だが、医療費が一定額を超えた場合、その一部が戻ってくるのだ。月収53万円未満の会社員の場合、1カ月に100万円の医療費がかかっても、実際の出費は約9万円で済む。残すは差額ベッド代程度で、貯蓄があれば保険は必須ではない。また、病気やけがの治療で連続4日以上勤務先を休むと、傷病手当も受け取れる。

選ぶべきは「掛け捨て型」の保険
 これらを駆使しても、万が一のときに必要な保障額にはまだ足りない。そんなときに、ようやく生命保険や医療保険の出番となる。見直しは過不足のない保障を備える保険商品のなかから、毎月の保険料ができるだけ安いものを選ぶことに尽きる。

 なお、現在の超低金利下で貯蓄性まで保険に頼るのは賢くない。真っ先に避けるべきは、多くの人が加入している終身型の生命保険や、大手生命保険各社の主力商品であるアカウント型保険だ。

 選ぶべきは掛け捨て型。貯蓄性の高い保険に"無駄な"保険料を払うよりは、「自由に使える貯蓄に回すべき」
(ファイナンシャルプランナーの内藤眞弓氏)だろう。

 日経トレンディ2月号ではこの考え方に基づき、「できるだけ安い」保険は何なのかを徹底的に吟味した。主要な保険会社の生命保険、医療保険すべてについて、その割安度を比較し、ベストな商品はどれかを考察している。


今回の試算でも使った、トータス・ウィンズの代理店向け研修ソフト「トータくん」。24社の保険データを収録し、条件を入力すれば、保険料の安い順などで商品をリストアップできる。このソフトを使う加盟店は約100社で、今後も増える見込み(画像クリックで拡大)

(文/森岡 大地=日経トレンディ)

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日経トレンディ 2月号

発売日:1月4日(月)
定 価:550円(税込み)
発 行:日経BP社