アルツハイマー病にワクチン療法? マウスの記憶力回復
http://www.asahi.com/health/news/SEB201001230005.html2010年1月23日13時46分
アルツハイマー病によって起こる記憶障害を改善するワクチンを、佐賀女子短大や米カリフォルニア大などの研究グループが開発した。アルツハイマー病のマウスの脳内に
増えたホモシステイン酸を減らすことで、記憶能力が回復できたといい、新しい治療法につながる可能性があるという。
アルツハイマー病は脳にたまったベータアミロイドというたんぱく質が主因と考えられているが、長谷川亨・佐賀女子短大教授(公衆衛生学)らは、ベータアミロイドの蓄積を促し、細胞の破壊にも直接関係していると見られるホモシステイン酸に着目。貝類から抽出した特殊なたんぱく質とホモシステイン酸を合成したワクチンを作り、アルツハイマー病のマウスに投与して記憶力の変化を見た。
水を張った円形プールでマウスを繰り返し泳がせ、島を見つけるまでにかかる時間を4日間調べたところ、ワクチン注射をしなかった15匹のマウスはいつも1分以上かかったが、投与した15匹のマウスは4日目には約20秒まで短縮した。アルツハイマー病ではないマウスに近い学習能力が見られたという。
さらに、いずれのマウスもアルツハイマー病によって脳の記憶をつかさどる海馬の大きさが15~20%ほど縮小していたが、ワクチン注射をしたマウスでは大きさが元に戻っていたことも確認された。
ワクチンによって免疫細胞がホモシステイン酸を「異物」として攻撃した結果、ホモシステイン酸が減少したためとみられる。
論文は20日、米科学誌プロスワンに掲載された。長谷川教授は「人間にもワクチンが有効となることを期待している」と話している。(伊豆丸展代)
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順天堂大学の田平武教授(認知症診断予防治療学)の話 アルツハイマー病の原因はまだ特定されておらず、アミロイド仮説が主流だが、今後、人間でもホモシステイン酸の関与が確認できれば、新たな治療法ができる可能性が高まる。ただし、ホモシステイン酸を除去した場合の人体への影響を確認する必要はある。
キーワード:たんぱく質 アミロイド アルツハイマー病 ワクチン 科学誌
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